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ボクだけがデスゲーム!?  作者: ba
第一章 始まりの王国
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第1話 眠れる森のボク。

 頬を撫でる風とチラチラした光で寝ていられなくなって起きる事にした。


「って、ここ何処……?」


 上体を起こし、寝惚け眼で辺りを見回す。

 土の地面、青々と生い茂る木々、その向こうから差し込む光、泉か何かがあるっぽい。

 そこに僕は寝ていたようだ。何時こんな場所に来たのか?

 よく見ると服装も変わってた。何だコレ? 白い厚手のローブのような。こんな服を買った記憶もない。

 更にさっきから動く度に僕の視界に入る邪魔な物が思考を邪魔する。

「なんだこの銀色の……って僕の髪?!」


 足元まであるかという長い銀髪、引っ張っても取れないからウィグじゃないはず。というか僕の髪はもっと短いしそもそも黒髪だったはず。

 ただでさえ女の子に間違えられるのに長い髪なんて論外。まぁ高校生男子が長髪というのも少ないけど。


 何が起こってるのかわからないまま、水面を反射してるっぽい光が目に入った。

 僕はそちらへ歩いて行き、おそるおそる水面をのぞき込む。


 僕が居た。


 当たり前だ、僕なんだから。でも何だろう? 元々女顔とは言われてたけど自分にとっては男の顔だと認識してたのに、水面に映る姿は自分から見ても女の子だった。

 真っ白な肌に青い瞳、桃色の頬と小さな唇、長い銀髪が風に揺れている。ローブのサイズが少し合っていないのか大きめなのも一層可愛さをアップさせている。

 そんな美少女といって良い女の子の顔が不安げに水面を覗き込んで居た。


 恐ろしい予想が頭を駆けめぐり、あわてて胸や下をまさぐってみた。




 ちゃんと男の子だった。


「よかった……最悪の事態は免れたっぽい」


 さて、とは言っても何ら解決していない謎だらけの状況、論理的に導き出される答えは……


「まだ夢を見てるのかな?」


 しかし僕はいつ寝たんだろう? そんなに疲れてた記憶もないんだけどなぁ……

 昨日はどうしたっけ? 確か急いで家に帰って説明書もそこそこにVRマシンを起動してアバター作成を……


 ん? VRマシンを? 起動して?


「もしかして……此処って『セカンドアース』?」


 最近のゲームってこんなにリアルなの? 見える景色は勿論、光も、風も、匂いも、触れる感触も現実にしか感じられないんだけど……。いやセカンドアースがリアリティを売りにしてるのはCMで見たけれども。

 というかアバター作成した記憶すらないよ? どういう事!? どう見ても重戦車じゃないよね?

 とりあえず確認の為に半信半疑ながら僕は記憶にある説明書をたよりに呟く。


「す、すてーたす」


 ポンと目の前に現れる僕のアバターデータ。

 やはりここはセカンドアースのゲーム内という事で良いらしい。が……



――――――――――――――――――――――――――――――

  ユウ 人族/男 16歳 侍祭(アコライト)Lv1

  HP(ヒットポイント)16/AP(アーツポイント)64

  筋力:1(0)

  体力:1(0)

  速力:1(0)

  器用:1(0)

  知力:3(+5)

  魔力:3(+10)

 

  <通常スキル>

  ・神聖魔法(初級) ・調理(初級) ・歌唱(初級)

  <固有スキル>

  ・美女神の祝福(びめがみのしゅくふく) ・愛天使の微笑(あいてんしのほほえみ) ・妖精女王の囁きようせいじょおうのささやき ・精霊后の芳香せいれいごうのほうこう

  ・聖獣姫の柔肌せいじゅうきのやわはだ ・魔皇女の雫(まこうじょのしずく)

  <装備>

  ・初心者ローブ

――――――――――――――――――――――――――――――



 侍祭(アコライト)って! 筋力体力速力1って!?

 これじゃ重戦車じゃなくて柔戦車だよ……こんな所までリアルそのままでなくて良いのに。

 その上ただでさえ酷い能力値なのに何で戦闘スキルが無くて調理や歌唱なんて取ってるんだ?

 このアバターを作った奴は誰だっ!! 僕に何の恨みがあってこんな酷い有様に……。

 ただ僕はカッコイイ戦士になって皆を守ったり巨大な敵を倒したりしたかっただけなのに。そんな些細な夢も叶えられないのか……。うぅ目頭が熱くなる。いやコレは汗だ、断じてアレじゃない。


「って……なんだこの固有スキルの数? 普通多くても1、2個って書いてあったような……?」


 ローブの袖で目をごしごししながら、流し読みしただけの朧気な記憶をたぐり寄せる。

 たしかセカンドアースの所持スキル数は10個、様々な『通常スキル』を組み合わせて特化型や汎用型のアバターを生み出すのがこのゲームの売りだったはず。

 能力値の知力と魔力にボーナスが付いてるのは職業の効果かな。

 そして『固有スキル』。これはアバター作成時、種族と職業を選んだ時点でランダムで手に入るレアスキル。

 通常0個、運が良くて1個、2個持ってたら運を使い果たすとか言われてたような……。

 勿論ランダムとはいえゲームで特定のプレイヤーを優遇する、という訳ではないので、固定スキルを持ったアバターはその分能力値が低く設定されるらしい。

 更に固有スキルは外す事が出来ない為、スキルの入れ替えに大きな制限を受けるから一長一短でもあるそうだけど……。


「あぁそうか、6個も固有スキルがあるからあの壊滅的な能力値なのか」


 ぽんと手を叩き、やっと自分の酷い能力値に納得する。

 そりゃこれだけ固有スキルがあったら能力値がほぼ0でも仕方ない。逆にこれだけ固有スキルがあるんだからそれを活かしてこっから頑張れば良いんだ! そうだ! がんばれ僕!!


「その為にも固有スキルの能力を理解しないとね」


 指をタップして個別説明を開く



――――――――――――――――――――――――――――――

・美女神の祝福  :究極の美の容姿。見た者は好印象を抱かずにはいられない。

・愛天使の微笑  :魔眼の一種。笑顔を見た相手は虜となる。

・妖精女王の囁き :神秘の美声。その声は魂を奮わせる。

・精霊后の芳香  :極上の香り。近くに居る者に状況に応じて安らぎや高揚を与える。

・聖獣姫の柔肌  :至高の美肌。触れた者全てはその快楽に酔いしれる。

・魔皇女の雫   :最高の食材。身体から分泌される全ての液体は至福の美味となる。

――――――――――――――――――――――――――――――



「この外見はこいつ等のせいかぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 誰もいない森の中に僕のツッコミが響いて消えた。

 そういえば確かに声も普段の僕より少し高めな感じがしていた。自分の声だからよくわからないけど。


 しかしコレでどう戦えと……戦士(ファイター)斥候(スカウト)なんかは勿論、魔法師(マジシャン)や今の僕の職業侍祭(アコライト)ですら活用のしようがない。しかも『固有スキルは外せない』。

 何だか色々詰んだ気がする……。


 泉の前でステータスを眺めながらうんうん唸っていたけど、やはりどうしようもない。

 固有スキル自体は凄く勿体ない、勿体ない、勿体ないけど……。


「アバター削除して作り直すしかないよなぁ……」


 元々僕がやりたかったのは前衛重戦車だし、どうしてこうなったのかもわからないけどやりたい事をやるのがMMOでありセカンドアースなんだから、最初に妥協しちゃダメだ!

 そうさ、固有スキルが無くなればそれだけステータスもアップする。そうしたら今度こそ夢の重戦車! 皆を守る前衛戦士になれるんだ!! こんにちわ! 僕のヒーロー!

 そうと決めるたら早速アバターを作り直す為にログアウトしなきゃ

 ステータスと同じ要領でシステムウィンドウを開いて……



 そしてそこにあるはずの『ログアウト』の文字がない事に僕はやっと気付いた。


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