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ボクだけがデスゲーム!?  作者: ba
最終章 誰が為の世界。
197/211

第191話 世界の成り立ち。

「生きている……ですか?」


 なんだろう? 考えた事も無かった。心臓が動いてるって事だろうか? あ、でも脳死というのもあるんだっけ?

 改めて聞かれると分からない。


「えっと……ご飯を食べたり、笑ったり?」

 考え抜いた挙げ句よく分からない答えになってしまった。

 僕の答えを聞いて池田さんが吹き出す。


「……もうちょっとマシな答えはないの?」

 マヤが呆れたように言った。

「そ、そんな事言ったって、突然あんな事言われてもわかるわけないじゃないかっ! マヤだって困るだろっ!」

 赤面しながら抗議する。誰だって突然あんな事聞かれたら答えられない筈だ。

「簡単よ、魂があるかないかでしょ」

「魂って何さっ!」

「そんなの知る訳ないじゃない」

 ずるい……それじゃ答えになってないじゃないか……。


 更にマヤを問い詰めようと思ってふと見ると必死に笑いを堪えている池田さんと目があった。


「まぁ、そうだよね。『生きている』とは何か? なんて答えのある物じゃない。でも件の天才はソレを解き明かそうとしたんだ。マヤ君の言う通り『魂』があると考え、その『魂』のデータ化を行おうとしたんだ」

「魂のデータ化?」


 鸚鵡返しの僕に池田さんが頷く。

「死に行く者の『魂』をデータとして残して、それを『セカンドアース』という箱庭に再現すればそれは『異世界』への『転生』と言えるのではないか? そう考えたんだよ」


 確かに……僕の魂?がデータとして再現されてゲーム内に生まれたら、それは『転生』なのかもしれない。勿論ゲームの中の事だけかもしれないけど、それでも本当にあるかどうかわからない死後の世界よりは確実な物だと言えなくもない。


 池田さんの言葉は続く。

「まぁ奇人と天才はなんとやら、だね。それでもその天才はソレを作り上げてしまった。勿論だからと言って勝手に他人の『魂』のデータを再現なんて許されないが、寝たきりで二度とベッドから起き上がれないと言われていた患者達、その患者にもう一度野を駆ける身体をVRマシンで与えていた天才に多くの患者が協力を申し出てくれた。

 契約書を作成し、全てを承知の上で『セカンドアースでのデータ再現』に了承する遺書を貰った人数がおよそ10万人。彼等は『セカンドアース』の住人……NPCノンプレイヤーキャラクターとして記憶を失って生まれ変わった」


「それって……NPCノンプレイヤーキャラクターは皆、地球の人って事!?」

 僕はその内容に驚き声を上げて立ち上がった。


 そりゃ確かに物凄くリアルで人間みたいだとは思っていた……というか意識しないとNPCノンプレイヤーキャラクターだとは思えなかったし、区別とかしてた訳じゃないけど、でもソニアさんやタニアちゃん、シルフィードさんやアニーさん、商店街の皆さんが元は地球人で、しかも一度亡くなった人だなんて……。


「それもまぁ解釈次第だよ。あくまで『セカンドアース』は電脳世界であり、全てのキャラクターはプレイヤーも含めてデータだ。何を以て『世界』と言うのか、『生きている』というのか、それは誰にも分からない事だ。

 地球上の僕達だってただのタンパク質の塊だとも言えるし、何処かの神様が作った人形かもしれない」


「つまりその天才は神になった訳ね。傲慢な話だわ」

 ぽつりとマヤが呟く。

「世界を、人を作り出す行為だからまさにその通りだろう。それでも天才はやり遂げ、多くの人が『転生』を望んだんだ」


 実際僕が『セカンドアース』で出逢った皆は幸せそうに笑っていた。

 それが傲慢でも、ゲームでも、それで良いのか悪いのかを僕は言えない気がする。




「……で、ソレがユウに何の関係があるのよ?」

 でもマヤはそんな事気にならないようで続きを促した。

 池田さんは頷き、指を二本立てながら口を開いた。


「ユウ君の現状を説明するのに必要だったんだ。何故ユウ君がログアウト出来ないか? それはその天才が作ったプログラムに2つの条件が加わる事で発生する事が分かっている。

 1つはユウ君の『魂』が『セカンドアース』との親和性がとても高い事。『セカンドアース』は『魂』のデータを読み取ってプレイする世界なんだ。だからその親和性が高い程により能力が高まり、『セカンドアース』を『リアル』に感じるようになっていく。

 わかりやすく言えばよりNPCノンプレイヤーキャラクターに近づいていくんだ。」


NPCノンプレイヤーキャラクターに……ですか?」

 正直そんな自覚がないから意味が分からず首を傾げた。

「そうだな……ユウ君は少しおかしいと感じた事はないかい? 速力1しかない君がモンスター相手に近接戦闘を回避出来た事。器用が1+5しかない君が、攻撃を的確に当てられた事」

「え、そ、それはアンクルさんに教わってタイミングとカウンターで……」


 池田さんは苦笑して首を振った。

「通常は無理なんだ。意識に身体が付いていけない。でもより深く『セカンドアース』に繋がっている君はディレイ無しに動く事でソレを可能としていた」


 知らなかった……アンクルさんには筋がいいって褒められてたけど、コレって僕だけの事だったんだ……。

 僕って天才とか思ってたけど、まさかそんな理由だったなんて。


「もう一つは?」

 ちょっとショックを受けていると、マヤが池田さんに尋ねる。


「もう一つはユウ君の意志だね。強い意志がログアウト不能状態を作る」

 池田さんが残っていた指を折りながらそう言った。


「いや、僕そんな事望んでないよっ!?」

 池田さんの答えを慌てて否定する。そんな事ある訳ない。

「無意識だったんだろうと思うけど、ログアウト出来ないとおかしいんだ」


 そう言って空中を操作する池田さん。

 すると今度はディスプレイが浮かび上がった。そこに映し出されたのは……

「僕っ!?」


 そこには確かにVRマシンを装着してベッドに寝ている僕が居た。

 勿論現実の僕だから髪も黒いし短いけど、確かに僕だ。


「これはリアルタイムの映像だけど、ユウ君は死んで『魂』のデータだけが『セカンドアース』に来た訳でも、『魂』のデータと本体が乖離した訳でもない。確かに『肉体』と常にリンクして動作している事は確認してある。

 それである以上ユウ君が望めばログアウト出来る事は間違いない」


「ええっと……それって僕のせいでログアウト出来なかった……って事?」

「ユウ君のせいという程じゃないけど……これまでの経過観察からユウ君が現実逃避をしていたようには見えないし、こっちの見解としては恐らくユウ君が当時『物凄くセカンドアースに行く事を強く願い』そして『今の生活に満足している』んじゃないかと……」


 それは…………正直思い当たる事が色々ある。


 初日に僕は物凄く楽しみにしていたし、少しでも早く『セカンドアース』をプレイしたくてたまらなかった。ログイン後も『銀の翼』で生活するようになって生活が落ち着いて、何だかんだで結構満喫してた気がするし……だ、だってログアウト不能とはいえ初めてのゲームだったし、楽しかったし……


「ログアウト出来なくなる位ゲームを楽しみにしてたって……確かにあの日のユウはアレだったけど……」

 マヤが心底呆れたように僕を見る。

「し、仕方ないだろっ! 初めてのVRマシンのゲームだったんだから楽しみに位するさっ! そ、それにアレって何だよっ!?」

「言っていいの?」

「言わなくていいよっ!」


 これ以上池田さんやテレスさんの前である事ない事言われたら困る。

 ただでさえ『ゲームが楽しみでログアウト出来なくなった子』扱いっぽいのにっ!


「でもまぁ、今日の会談のお陰でもうすぐログアウト出来るようになると思うよ」

 そんな僕に池田さんが苦笑しながら口を挟む。

「え? ログアウト出来るんですか?」


「勿論。元々君が望めばログアウト出来た。そのままでも長い目で見ればいつかはログアウト出来たんだろうけど、今日の会談のお陰でユウ君は『セカンドアース』の裏側と事実を知れた。

 その知識と確信があればあとはユウ君次第で直にログアウト出来るようになる筈だ」


 力強い言葉で語る池田さん。そう言われるとそんな気がしてくる。


「ちょっと待って。今の理屈だと別に待たなくても『肉体』側から接続を切れば良いだけなんじゃないの? プログラムより『肉体』の方が優位なんでしょ?」


 マヤが池田さんに問う。確かにそんな気もする。

「勿論可能だ。けど本人がログアウトしたくないと強く思っている場合、強制切断に悪影響が出る可能性が0ではない。可能性が0.1%でもあれば、その方法は最後の手段にする事にしたんだ」


 池田さんの答えにマヤは顎に手を当てて暫し考えるもすぐに口を開いた。

「それは……やっぱり変よ。ユウの状態は強制切断にリスクがある。だからわざわざ万全の救護体制まで作ってユウを入院させた。でもそこまでして『セカンドアース』をネットゲームとして一般流通させる理由がないわ。医療用の箱庭として運営していれば十分じゃない。

 貴方はまだ大事な事を隠してるんじゃない?」


 マヤの問いに池田さんは苦笑する。

「マヤ君は本当に察しが良いね。でも隠している訳じゃなくて、今から話そうと思ってたんだ。ここからの話はまさにその点についてで、『セカンドアース』自体の事でも、ユウ君の現状についてでもなく、一方的なこちらの都合の話だからどう言ったら良いか少し悩んでね」


 そう言って池田さんは冷めたお茶を一口啜った。







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