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ボクだけがデスゲーム!?  作者: ba
第八章 神様の迷宮
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第182話 蘇生。

 7体の魔神のうち2体を倒した僕達は、やはり7対12で拮抗していた戦いだっただけに、その後の戦闘を有利に進める事が出来た。


 まずマヤが抑えてくれていた、暴食の魔神(ベルゼヴヴ)に対して僕が『聖光(ホーリーライト)』を撃ち込んだ。

 勿論、暴食の魔神(ベルゼヴヴ)は魔法アーツを吸収する能力を持っているから『聖光(ホーリーライト)』も吸収される恐れはあったけど、もし吸収反射されたとしても僕達にとってはただの眩しい光だから他の大魔法に比べれば被害も少ない。


 結果、暴食の魔神(ベルゼヴヴ)は『聖光(ホーリーライト)』を回避した。つまり吸収出来ない事がわかった。

 そこからグラスさんの指示の元、僕は『聖光(ホーリーライト)』を打ち続ける。


 暴食の魔神(ベルゼヴヴ)は『聖光(ホーリーライト)』を回避出来なければ大ダメージ、回避出来ても体勢を崩した暴食の魔神(ベルゼヴヴ)はマヤやアンクルさんの攻撃を受けて大ダメージ。

 グラスさんの指示はただ撃ち込むのではなく、常に暴食の魔神(ベルゼヴヴ)の体勢を崩し、こちらを有利にする方向へと出されていた。結果追い込まれた暴食の魔神(ベルゼヴヴ)は最後『聖光(ホーリーライト)』で胸を焼かれて倒された。


 あとはこれまでの戦いで魔法吸収が出来ない魔神達なので、僕が『聖光(ホーリーライト)』を、グラスさんホノカちゃんが大爆(エクスプロージョン)系の大魔法を撃ち込んで、クロノさん達が戦っていた強欲の魔神(マモン)憤怒の魔神(シャイターン)傲慢の魔神(ルシファル)、を撃破出来た。


 拮抗状態から人数的に有利になったとはいえ、全部グラスさんのお陰である。

 僕だけじゃ『聖光(ホーリーライト)』をこんな上手に使えなかったと思う。

 グラスさんの詰め将棋のような指示で魔神達は逃げ場を無くし、こちらの被害が無い状態で勝利する事が出来た。

 と言ってもグラスさん自身は、


「ユウさんの聖光(ホーリーライト)のお陰で助かりました。あぁ、あと同じ聖光(ホーリーライト)でもソレを連発出来るユウさんだからこそ、というのもありますね」

 と笑っていたけど。


「まぁとりあえず……あとはアイツだな」

 そうして戦いが一段落した所で、一番奥に横になったままの最後の1体を見つめてクロノさんが言った。


 そう、倒した魔神は6体、もう1体残っているのだ。


 怠惰の魔神(ヴェルフェゴル)。戦闘開始時からずっと一番奥で横になったままだった魔神。一度も動いていないから強さは未知数。でも見た目が熊なんだから多分パワーファイターな気がする。

 こちらは遠距離が揃っているんだから大丈夫だとは思うけど、一撃の強さがあるのなら油断は出来ない。


 そう思って見ていると、怠惰の魔神(ヴェルフェゴル)の方でも僕達が見ている事に気付いたようだった。


『おや? もう皆やられちゃったのか? …………めんどうくさいなぁ……』


 本当に仕方ないという感じで立ち上がる怠惰の魔神(ヴェルフェゴル)

『でもやらないと査定に響くからなぁ……』

 大きな欠伸をしながら僕達を見る怠惰の魔神(ヴェルフェゴル)が呟いた。ってモンスターに査定ってあるの!?


『あぁ……めんどうくさい……まぁ、でもこれも仕事だし、お互い恨みっこなしって事で』


 そう言った時、突然怠惰の魔神(ヴェルフェゴル)の姿が消えた。


「っ! ユウっ!!」

 マヤの声と同時に僕に大きな影がかかる。

 振り向くと怠惰の魔神(ヴェルフェゴル)が立っていた。瞬間移動なのか、超速移動なのかわからないけど、一瞬で熊の巨体が僕の背後に移動し、その巨大なツメを僕に振り下ろしていた。


 間に合わないっ!

 そう思った瞬間、パリンといつものように割れる『防護印(プロテクション)』。

 だけどいつものように体勢を崩す所か、そこで怠惰の魔神(ヴェルフェゴル)の攻撃が止まる事すらせず、そのまま僕に向かってくる。僕がぎゅっと目を閉じるとドンっという衝撃が僕を襲った。







 そう、ドンと押し出されたのだ。


 衝撃に目を開くと、僕を突き飛ばしたリリンさんはそのまま怠惰の魔神(ヴェルフェゴル)のツメに引き裂かれ、血が溢れるのが見えた。一目みて致命傷だとわかる。

「よかった……」

 なのにリリンさんは突き飛ばされた僕がマヤに抱き留められるのを見て、微笑んでいた。

 そしてそのまま自分の血の溢れる地面に倒れる。


『む、今回大活躍だった司祭(プリースト)を狙ったのに失敗したか……まぁいいか。1人倒せば十分だろう』


 足下の惨劇も、右手に付いた多量のリリンさんの血にも何ら気にする様子もなくのほほんと呟く怠惰の魔神(ヴェルフェゴル)


「うおぉぉぉぉっっっ!!!」


 クロノさんが叫びながら怠惰の魔神(ヴェルフェゴル)に大剣を振るう。次の瞬間、ほぼ全員が怠惰の魔神(ヴェルフェゴル)に向かって攻撃を仕掛けていた。


 それに対して本当に『もう十分』なのか戦う気が無かったように避ける事もなかった怠惰の魔神(ヴェルフェゴル)は全身にアーツを受けて吹き飛ばされる。


「あぁ、めんどうくさい」

 怠惰の魔神(ヴェルフェゴル)はそう言って力尽きた。そのまま他の魔神と同じように黒い炎に全身を焼かれて消えていく。



 でもそんな事より、

「リリンさんっ!」

 僕は慌てて地に伏したままのリリンさんに駆け寄った。


 でもリリンさんは動かない。パーティウィンドウのHP表示も0。そして身体が淡く輝き、光になろうとしていた。


「死なせませんっ!!」


 急いで聖水を取り出し、呪文を唱える。その時間がもどかしいけど、焦って間違えて失敗でもしたら本末転倒だ。

 永遠のような数十秒が過ぎて、やっと魔法陣が完成し、僕の身体も同じように輝いて光の柱が出来る。その状態で僕は魔法を発動した。


蘇生(リザレクション)っ!」


 発動と同時に今まで淡く輝いていたリリンさんが僕と同じように一気に輝きを増した。

 それは僕の光がリリンさんに流れているようで、同時にごっそりと身体の中の生命エネルギーのような何かが抜け出る感覚が全身を襲う。気を抜いたら気絶しそうになるけど、今気を失ってもし『蘇生(リザレクション)』が失敗したらと思うと気力を振り絞った。


 暫くして、光が収まった時、リリンさんの身体には傷1つ無くなり、ぱちりと目を開いて自分で起き上がった。

「ユウ様! ありがとうございますっ! お陰で助かりましたっ! さすがユウ様ですっ!」


 さっきまで血の気の無かった顔が生気に溢れ、そのままぴょんと立ち上がるリリンさんと、パーティウィンドウの彼女のHPが満タンであるのを見て僕は安心してどっと力がぬけて倒れそうになった。

「よかった……」


「っ! ユウ様っ!」


 慌てて僕を抱きかかえるリリンさん。女の子に抱えられるとか正直ちょっと格好悪い。

 困った。これじゃどっちが死にそうだったのかわかったものじゃない。


「申し訳ありませんっ、私の為にユウ様がっ! あぁ、どうしましょうっ! 私なんかを助ける為にユウ様がっ、ユウ様がぁっ!!」

「、だ、大丈夫、です。ちょっとびっくりしただけだから」


 だから、そんな揺らさないで、逆に気持ち悪くなっちゃう。


「も、申し訳ありませんっ! で、ではどうしましょう? 撫でたり抱きしめたりした方が良いでしょうか?」

 リリンさんも動転しているのか高校生男子には刺激の強い提案を始めた。

 それはそれで嬉しい申し出だけど衆人環視の中女の子に撫でられたり抱きしめられたりするのは恥ずかしい。2人きりでされるのもソレはソレで恥ずかしいけど。


「調子に乗るようならもう一回シンデミル?」

 そんな事をしていたら、横にいたマヤがすらりと長剣を抜いてリリンさんに突きつけた。


「貴女には聞いておりません。私はユウ様と、私の命を助けて下さったユウ様とお話しているだけです」

「それが『調・子・に・乗っ・て・る』って言うのよ」


 互いに殺気立ち始めるマヤとリリンさん。

「ちょ、やめて、なんでけんか腰になってるのっ!? 僕は大丈夫だからっ! ちょっと力が抜けただけだしっ」


 このままじゃ本当にPVP(プレイヤーバトル)が始まりそうで、慌ててリリンさんから飛び上がり、元気さをアピールしながら仲裁に入った。

 まだ何か言いたげなマヤと、何故か少し残念そうなリリンさんだったけど、一応2人とも落ち着いてくれた。……喧嘩にならなくて本当に良かった。


 実際初めて使ってみた『蘇生(リザレクション)』で倒れそうになったのは『生命力が抜ける』みたいな状態に戸惑ったからで、最初から分かっていれば多分我慢出来たと思う。

 説明には『ダメージの反動』とあったから痛みのような物があるのかと思ったら、身体の中の何かが抜けていく感覚だったのだ。


 自分のHPを見ると大凡3割位しか減っていない。

 これはむしろ痛くないから使いやすいかもしれない。


「む、無茶はしない」

 そう思っていたら、マヤのチョップが脳天に落ちた。

 人の思考を読まないで欲しいっ! あと、

「痛いよっ!? 別に無茶する気はないよっ!?」


 慌てて自分に『治癒(ヒール)』をかけて、痛みを散らすついでに減っていたHPを回復させる。

 やはり『治癒(ヒール)』と交互に使えばノーリスクで使用出来るのは強みだろう。詠唱が長いから戦闘中に使うのはタイミングが難しいけど。

 と思ってたら又チョップが落ちた。そんなポカポカ叩かれて禿げたらどうするんだっ!


「まぁ皆無事で何よりです。あと20層、『白の使徒』の用意するボスモンスターも恐らく2層ですしがんばりましょう」


 そんな僕達を見ていたグラスさんがそう言うと、各々頷いて立ち上がった。

 グラスさんの言う事も最もだ。本当にあともう少しでゴールなんだから、僕も頑張らなきゃ。


 

 

 その後、81層からはこれまでと変わらず通常層は危なげなく進んだ。

 クロノさん達がアーツを使いまくってくれる事とグラスさんの指揮のお陰なんだけど……休憩も殆ど取ってないのにそんなAPを使って大丈夫なんだろうか?

 疲れているのか水を飲む頻度は高いけど、AP回復アイテムはもう殆ど無くなってるのに。


 正直頻繁に聖水の毒味をするせいでお腹が少しタポタポして辛いんだけど、後衛で基本見てるだけの僕だからそうなんであって、クロノさん達頑張ってる前に「もうちょっと水分補給を少なめに」なんてお願いできないし、ちょっと辛い。


 でもその甲斐あって僕達は誰1人欠ける事なく、また『蘇生(リザレクション)』を再使用する事もなく、無事90層へと到達した。


 『蘇生(リザレクション)』は使わないに越した事はないけど、相手が又悪魔系なモンスターなら僕だって大活躍出来る筈と腕が鳴る。


 そう思いつつこれまで同様クロノさんが扉を開き、皆で中に入る。そこに居るのはもう見慣れた『白の使徒』さん。

 『白の使徒』さんの方もも僕達の入室を確認して、頷いて消えた。


「あれ?」


 『白の使徒』さんが消えたのにモンスターが居ない?


 きょろきょろと辺りを見回しながら首を傾げていると、ドームの中央、空中の一点が突然輝き目映い光がドーム全体を照らし始めた。

 目も眩むような輝きの球体がゆっくりと地面に向かって移動しながら、全方向に無駄に煌びやかな光を放つ。


 そしてゆっくり動くその光球が地面に降り立った時、一際大きな閃光と共にその球が割れて、中から純白の大きな羽根を纏った女性が現れた。



・レベル99熾天使(セラフィム)とエンカウントしました。



 この世の物とも思えない荘厳な光景と同時に流れるメッセージ。


 そのどう見ても聖属性な感じの名前と姿のモンスター? に、僕の聖系のアーツが役に立てる事は少なそうな気がした。







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