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ボクだけがデスゲーム!?  作者: ba
第八章 神様の迷宮
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第176話 スライムパニック。

 60層目。そこは今までと少し赴きが違っていた。

 具体的には階段を下りた先、60層に入る手前に扉があったのだ。


 今までの階層は出口の扉はボスモンスターを倒すまで閉まったままだったが、入り口となる扉は存在しなかった。


 その扉の存在が「ここからは違うぞ」と言っているようで、全員に少し緊張が走る。

 目線のみで頷き合った僕達はクロノさんの手でゆっくりと扉を開き、警戒しながら中へと踏み行った。


 中はコレまでの階層とあまり変わりないドーム状の空間だった。広さは野球場位だろうか?

 全体が薄く明るいのも変わらない。


 ただ1つ違ったのは、そこにモンスターが居なかった事だ。

 いや、一体だけ居た。が、それがモンスターなのかがわからなかった。


 ちょうどドームの中央付近に立つ人影。


 それは一言で言うと『真っ白』だった。

 真っ白なローブに、つばのない真っ白なとんがり帽子。帽子が大きくて顔まではわからないけど髪も真っ白で、色の付いた装飾品とかは1つも付けてないように見える。

 薄暗いドームの中央にぽっかり空いた『空白』。


 つまりあの時燃える洋館で見た『白の使徒』がそこに立っていた。


 『白の使徒』を初めて見るクロノさん達は当然警戒しながらゆっくりとドームに入り近づいて行く。モンスターかどうか判別がつかないとはいえ、この場に居る以上敵の可能性が高いんだから当然だろう。


 でも僕は逆の意味で混乱していた。


 元々僕がこのダンジョンに来たのは『白の使徒』に呼ばれたからだ。てっきり最終層をクリアしたら逢えるのだと勝手に思いこんでいた。

 でも確かに『神のダンジョンに来い』としか言われてないんだから、60層で逢っても何ら不思議じゃない……んだろうか?


 そして逢えたという事は、お話出来るのかもしれない。

 下手にクロノさんが突撃して戦闘になり、なし崩しに会話のチャンスを失うのは惜しい。クロノさんが飛びかかれる位置に入る直前に口を開こうとしたその時、『白の使徒』は両手を高々と挙げた。




「ようこそ! 勇者の皆様! 60層到達おめでとうございますっ! これより先の階層の説明をお聞きになりますか?」


 両手を挙げたまま、関西弁のイントネーションで語る『白の使徒』。

 顔は見えないし表情はわからないけど、突然聞こえてきた関西弁の女性の声にちょっとイメージが崩れた。


 横を見ると皆も何だか微妙な表情をしていて、空気が弛緩してしまっていた。


「そ、そうですね、では説明お願いします」


 最初に持ち直したのはやっぱりグラスさんで、眼鏡を直しながら『白の使徒』に答えた。


「はいな! ここ60層からは更に過酷な戦いとなります! 10層毎に更にウチ等『白の使徒』に喚び出された最強のボスモンスター軍団と戦わなければあきません! 更に一度戦闘が始まったら入り口の扉も閉まった密閉空間となりますっ! 危険一杯逃げ場なしっ!

 そんでも勇者様方は更なる探索を望まれますかっ!?」


 なんだろう、言っている事は更に戦闘が厳しくなるって事なんだけど……微妙な関西弁で言われるとなんだかゆるく聞こえてしまう。

 声は微妙に違うけどルルイエさんを思い出してしまう。


 それでも警告である事には変わりないし、一応皆を見た。


「はっ! まだ何のお宝もゲットしてないのに帰れるかよっ!」

 最初に言ったのはテルさんだった。

「せっかく戦闘も面白くなってきた所だしなぁ」

 ニヤリと笑うコテツさん。と頷くノワールさんと苦笑するサラサラさん。

「そこに冒険(ダンジョン)があるなら、突き進むのが『悠久』だぜっ!」

 クロノさんが叫び、シャーリーさんが頷く。


「ユウが行くなら勿論行くわよ」

「そうよね、ユウ1人じゃ不安だし」

「我々もユウ様の盾としてご一緒させていただきます」

 マヤ、ホノカちゃん、アンクルさん達もそう言った。


「とまぁ、こんな感じですね。ユウさんのお答えは?」

 確認するようにグラスさんが僕を見た。皆の視線も僕に集まる。

 僕は小さく息を吸った。


「えっと……僕は『白の使徒』さんに呼ばれて来たんですけど……それって此処の事でしょうか?」

 と、最初に思った質問を投げかけた。

「ん? 『神のダンジョン』いう事やったらそうやけど、『白の使徒に会う』いう事ならちゃうね。最終層を突破した先やね」

 上げていた手をぱたぱたと振りながら『白の使徒』さんは答えてくれた。


「それなら、僕は最終層の先に行きたいです」

「死ぬ事になっても?」

「それはっ……」

「死なせねーよっ!」


 答えに詰まった僕の頭をクロノさんがガシガシ撫でながら叫んだ。

「それに、俺等が死んだらユウが蘇生(リザレクション)してくれんだろ?」

「あ、は、はいっ! 絶対っ!」

「なら安心だっ!」


 ニカっと笑うクロノさん。他の皆も笑顔で僕を見つめてくれていた。

 マヤだけは少し殺気の籠もった目でクロノさんを見ていたけど。


「ほんなら説明と質問は以上やね。それでは60層。その名も『泡地獄』! お楽しみあれっ!!」


 そう言うと同時にコマ落ちのように突然消える『白の使徒』さん。

 あまりに一瞬で消えて、映像の再生を止めたように影も形も残っていない。


 と同時にウィンドウにメッセージが流れ始めた。


・レベル10ファイアゼリースライム100体とエンカウントしました。


「なんだよ、あれだけ脅しておいてスライムかよ」

 テルさんがメッセージを見て笑う。


・レベル10アイスゼリースライム100体とエンカウントしました。

・レベル10ウィンドゼリースライム100体とエンカウントしました。

・レベル10アースゼリースライム100体とエンカウントしました。

・レベル10サンダーゼリースライム100体とエンカウントしました。

・レベル10ポイズンゼリースライム100体とエンカウントしました。

・レベル10ボムゼリースライム100体とエンカウントしました。

・レベル10アシッドゼリースライム100体とエンカウントしました。

・レベル10マジックゼリースライム100体とエンカウントしました。

・レベル10ホーリーゼリースライム100体とエンカウントしました。

・レベル10ゾンビゼリースライム100体とエンカウントしました。

・レベル10スリープゼリースライム100体とエンカウントしました。

・レベル10コンフィゼリースライム100体とエンカウントしました。

・レベル10シースルーゼリースライム100体とエンカウントしました。

・レベル10クッションゼリースライム100体とエンカウントしました。

 etcetc……


 更にログが流れていく。


「おかしいぞ、これだけの数が居て何処にも姿が……」

 クロノさんがメッセージログと目の前の光景を見比べて首を傾げた。


「っ! 上っっ!」


 その時、ノワールさんが珍しく大きな声を上げて皆を警告した。

 その声に従って上を見る。


 と、雨のようにゼリースライムが振り注いできていた。




 それは『白の使徒』さんの言う通り、まさに『過酷』な戦いになった。

 勿論レベル10とはいえゼリースライム。一体ならクロノさん達ならそれこそ一瞬でたたき壊されて終了だ。僕だって今なら『高位(ハイ)祝福(ブレス)』と『高位(ハイ)加速(アジリティアップ)』さえあれば倒す自信はある。


 でも奴等は陣形を組み、連携して僕達を襲ってきたのだ。

 逆に僕達は最初に頭上からの大量爆撃で陣形を崩され分断されてしまった。


 物理攻撃には『物理無効』のクッションゼリースライムが、魔法攻撃には各属性ゼリースライムが迎え撃ちながら状態異常ゼリースライムが僕達の動きを阻害しようと狙ってくる。

 更に倒したゼリースライムもはじけ飛んで足場がどんどんヌメヌメ悪くなるし、はじけ飛んだ時に酸や毒、煙をまき散らす奴も居てどんどん視界が悪くなる。


 かといって大魔法で一掃するには最初に分断された時に各々と近づきすぎていて仲間まで巻き添えにするリスクが高くなっていた。

 掠った程度ならまだしもホノカちゃんの『大爆火球ファイアエクスプロージョン』の直撃を『霊護印(エレメンタルガード)』で防げるか正直自信はない。

 恐らくこの連携のとれたゼリースライム軍団もそうなる様に全体を動かしているように感じられる。


 それにそんな状態とはいえ、負ける雰囲気は一切無いのも博打な大魔法を使わない理由だった。

 正直凄く面倒だけど、クロノさん達は大振りになるアーツさえ使わずに少しづつゼリースライムは倒していっているし、逆にこちらは殆どダメージを受けていない。

 僕もしっかりリリンさんとアンクルさんが守ってくれたからゼリースライムに襲われる事も無かった。


 結果、僕達は時間をかけて各個撃破をして行き、やっとゼリースライムの爆発等も減ってきて見晴らしが良くなってきた。

 正直全身所々ゼリースライムのべとべとが飛び散っていて、あまり気分の良い物じゃない。


「っ! しまったっ! そういう事ですかっ!」


 最後の一体をクロノさんが倒した時、グラスさんが初めて焦ったような声を上げた。

 皆何があったのかとクロノさんを見る。


「何故このタイミングでゼリースライムなんかをとは思っていましが、あの『使徒』の狙いは私達の脱落ではなく、補給物資の破壊ですっ!」


 クロノさんの叫びに皆慌てて自分の装備を確認する。


「っ! や、やられたっ!」

「こっちもだっ! ちくしょうっ! あのスライム共ぉっ!」

 クロノさんとテルさんが叫んだ。


「私も……パン……腐ってる……」

「こっちも毒だらけね」

 ノワールさんが涙目で、マヤもやれやれという感じで鞄の中身を取り出した。


 他の皆も同じだった。僕の鞄の中のパンもぐっしょりと濡れてカビがたっぷり沸いている。

 服や装備といった物は破れた訳じゃないし綺麗に拭けば問題ないが、食料品は全て腐ったり毒状態になっていた。


「……状態異常回復(キュアステータス)じゃ無理だよなぁ」

 紫色のパンを長めながらコテツさんが僕を見た。

状態異常回復(キュアステータス)は人の状態異常を直すだけだから……食べ物は無理だと思う」


 勿論食べて状態異常になった所を『状態異常回復(キュアステータス)』で直す事は出来ると思うけど……もうすっかりカビて別アイテムになり、AP回復効果が無くなってるこのパンをそこまでして食べる意味はあまりない気がする。


「つまりここからはAP回復アイテム無しって事か……」

 呻くように呟くテルさん。


 あの『白の使徒』さんが言っていた通り、『神のダンジョン』は60層を超えて本格的に僕達に牙を剥いてきたようだった。







キングゼリースライムになると倒す数が減って楽になるので合体はしませんでした。

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