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ボクだけがデスゲーム!?  作者: ba
第八章 神様の迷宮
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第171話 男の最強装備。

 今日はクロノさんと『神のダンジョン』攻略に向けてのお買い物だ。

 お小遣いも昨日のうちにダメ元でソニアさんにお願いしたら『冒険者ギルド』から100万(アース)も借りる事が出来た。

 絶対無理だと思っていたのに、物凄くすんなり行ってびっくりした。


 と言っても内訳の半分は今まで納品してた分の未払い分を早めて貰っただけで、もう半分は今後納品分の前借りをさせて貰った。

 『純白のローブ』が50万(アース)だったから、これだけあれば多分防具は大丈夫……だと思う。


 一応昨日のうちにコテツさんに確認したらやっぱり僕が装備出来る物で『純白のローブ』以上の物はないという事だった。

 その時一緒に話を聞いていたマヤが何故かクロノさんとお買い物に行く事に激しく反対したり、「やっぱり1人で行かせるんじゃなかった」とかよく分からない事を叫んでいたけど、最終的になんとかサラサラさんが宥めてくれて助かった。流石クランマスターだ。


 男友達同士で遊びに行くのに幼馴染みとはいえ女の子同伴とか高校生男子としてはちょっと恥ずかしい。……せめて彼女とかならまだ言い訳がつくのに。いや、それはそれで嫌かな。


 そんな感じでお財布もばっちり用意して待ち合わせ場所の中央広場に着いたのは約束の時間より少し早かった。当然ながらまだクロノさんは来ていなかった。

 ちょっとそわそわしながらクロノさんを待つ。


 正直昨日からかなり楽しみだったのだ。

 男友達と遊びに行くのはやっぱり気楽だし楽しい。『セカンドアース』での数少ない男友達であるクロノさんとは初めてだし、装備を見てくれる約束だし、期待が高まらずにはいられない。


「……ゆ、ユウちゃ……ユウ、おまたせ」


 今日の事をぼーっと考えていると、突然後ろから声が聞こえた。

「クロノさんっ!」

 嬉しくて笑顔で振り返ると、いつもの鎧姿ではないラフな格好のクロノさんが立っていた。

「お、おう。待たせた……か?」

「そんな事ないよっ! 僕も今来た所っ! クロノさんは今日はあの鎧じゃないんだねっ!」

「そ、そうだな。グラスが脱いでいけって五月蠅くてよ。ユウ……は、いつものだな」

 何故かそわそわと視線を彷徨わせながら答えるクロノさん。


「うん、コレしかないし。だから今日は良い装備期待してるねっ!」

 にっこりお願いするとクロノさんはびくっと一瞬固まった。

「お、おう。任せろっ!…………ぜ、絶対男らしい装備を見繕ってやるからっ!」

 と、何故かクロノさんが物凄く力を込めて叫んだ。


 さすがクロノさん、僕の趣味をよく分かっている! これはかなり格好いい前衛系装備が見つかるかもと更に期待が高まった。


「そ、それじゃ、い、行こう、ぜ?」

「うんっ!」

 笑顔で頷き、僕はクロノさんと並んで歩き始めた。




 クロノさんが連れてきてくれたのはプレイヤーの露店ではなく、大通りの北地区にある大きな建物だった。

 露店は掘り出し物が多いが、こうした『NPCノンプレイヤーキャラクター』のお店の方が安定供給されているらしい。

 防具があるのは2階という事で階段を上っていくと、最初に目に入ってきたのは純銀に輝く騎士の鎧だった。

 なめらかな曲線が美しい全身鎧で、一目で心を奪われる。


「く、クロノさん! これっ! コレにしようっ!!」


 早速クロノさんにお願いする。

「これって……司祭(プリースト)のユウにゃ重くないか?」

 困ったような楽しそうな顔でクロノさんが僕と鎧を交互に見る。


 言われてみるとそうかもしれないけど……でも、そうですかとあっさり諦める事も出来ない。

「せ、せめて試着してみたいっ! 店員さんっ! 試着出来ますかっ?!」

「……あ、はい、可能ですよ。試着なさいますか?」

「はいっ!」


 近くに居た女性の店員さんに尋ねるとこちらも苦笑した顔で頷いてくれた。

 試着出来ると確認して早速装備を選ぶ。


「うっ……くぅい…………」


 ずしんと全身にかかる重量で身体が前に後ろにふらついて、足が動かなくなった。

「ほら、やっぱ無理だろ」

「む、無理……じゃにゃい……よ……?」

 なんとか顔を上げてクロノさんを見て、親指を立てようとしたら、そのまま後ろに倒れ込んでしまった。

 慌てた女性店員さんに支えられて、クロノさんに手を掴まれてなんとか転倒せずに済んだ。


「無理すんな。動けない防具付けても仕方ないだろ」

「うぐぅ……」


 悔しいけどクロノさんの言う通りだ。足手まといにならない為の新装備で足手まといになったら本末転倒だ。

 仕方なく再び着替えて鎧を展示台に戻す。


「まぁ鎧は無理だとして……ユウちゃ……ユウの筋力はいくつだっけ?」

「う……」


 正直言いたくない。けど、それを言わずに装備を選ぶ事は出来ないから仕方ない。

「その……ぼそぼそ」

「何?」

「……ち」

「聞こえないって」

「いちだよっ! 筋力1っ!」


 何度も聞き返されて最終的に真っ赤になって叫ぶハメになった。こんな事なら最初からちゃんと言えれば……言えないからこうなったんだった。


「1って…………まじ?」

「ウソ着いてどうすんだよぉ」

 涙目でクロノさんを睨む。

「いや、まぁ……しかしなんでそんな……あぁ『固有スキル』か」


 僕のあり得ない数値に若干引き気味のクロノさんは自分で答えに辿り着いたようで1人納得している。

 実際『固有スキル』でも僕ほど極端な人は少ないだろうし、信じられないのは仕方ないだろう。

 僕だって未だに信じたくない。


「まぁそういう事なら……店員さん、筋力1で装備可能なお勧め装備をお願いします」

「はい、畏まりました」


 さっきの女性店員さんが笑顔で答えて奥の方へ消え、すぐに幾つかの布製の服を持ってきてくれた。

 んだけど……。


・Lv5純朴のワンピース

・Lv3烈火のフレアスカート

・Lv8プリンセスドレス

・Lv12バニースーツ

・Lv12バルカンTOセーラー服

・Lv20神秘のビスチェ

 ETCETC……


 テーブルに並べられて行く度に僕の顔から血の気と表情が抜けていった。

「如何でしょうっ!」

 満面の笑みの女性店員さん。女性店員さんには悪いけど、僕は我慢出来なかった。

「明らかにラインナップがおかしいよね? ビスチェに至っては下着だよっ!? なんでコレが防具のオススメに出てくるの!?」

「え、ええっと……お気に召しませんでしたでしょうか?」


 困ったように首を傾げる女性店員さん。

「ああ、すみません。男性用装備でお願いします」

 涙目の僕を見てクロノさんが助け船を出してくれた。


 クロノさんの言葉に女性店員さんは僕とクロノさんを何度も交互に見て、何やら呟いてから、

「了解致しました」


 と、言って再び奥へと消えて行った。

「クロノさん、ありがとう」

「いや、説明し忘れた俺のミスだ」

 フォローしてくれたクロノさんに御礼を言うと、逆にクロノさんに謝られてしまった。

 説明が必要と言われてちょっと凹む。


 いや、そうならない為に男らしい装備を買いに来たんだから、今日だけの我慢だっ!

 ここで格好いい装備を得る事で生まれ変わるんだっ!


 心機一転前向きに考えていると、さっきより時間はかかったけど、女性店員さんは何着かのアイテムを持って戻ってきてくれた。

 それはタキシードであったり、デニムであったりで、一応試着してみたりもして、着心地は悪くはないんだけど……。


「これだと……『純白のローブ』の方が防御力高いね」

「そ、そうだな……いや、それより……」


 さすがにクロノさんの表情も少し引きつって何やら小声で呟いていた。

 持ってきた貰った装備は『防具』というより『服』でしかなく、数値を見るに圧倒的に『純白のローブ』の方が良さそうだったのだから仕方ないのかもしれない。

 

「他に……もっと男らしく見える装備って無いですか?」

「そうですね……筋力1ですと……」

 尋ねるも、女性店員さんも首を捻るばかりで答えが返ってこない。


 品揃えの良さそうなこのお店でもダメなのか……。

 そう思って落ち込んでいると、女性店員さんが突然明るい顔で顔を上げた。

「アレならっ! 少々お待ち下さいっ!」


 そのまま走り去る女性店員さんの力強い走りに最後の希望が見える。

 すぐ様戻ってきた女性店員さんが広げた衣装は確かに男性用だった。


 『Lv15 ゴシック・プリンスセット』と名付けられたその装備を手に取り、早速試着してみる。


 白のブラウスに黒のジャケット、少し裾の広がった黒の半ズボンに長めの靴下、その上からケープを羽織った姿は流石に戦士には見えないだろうが、貴族の少年といった感じでコレなら男らしいといえば男らしい。


 装備したまま鏡の前で少し動いてみるとズボンとシャツだから動きやすく、素肌を出している部分が少ないから怪我もしにくく、それで居て防御力数値的にも『純白のローブ』より少し高い。


 そして何よりコレなら僕を女の子と見間違える人も居なくなる筈だっ!

 名前が『プリンスセット』なのが少し恥ずかしいが、それ位なら我慢出来る。


「どうかなっ? クロノさんっ!!」


 その姿で得意満面にクロノさんに尋ねた。

「あ、ああ…………いい、んじゃないか?」

 くるりと回転して見せる僕にクロノさんも何故か若干顔を赤らめながらも頷いてくれた。

「良くお似合いですよ」

 女性店員さんも笑顔で後押ししてくれたしもうコレしかない。


「それじゃあ、コレお願いしますっ!」


 笑顔のままで女性店員さんにお願いする。

 こうして僕は55万(アース)を支払って強さと、男らしさに磨きをかける事が出来た。







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