表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ボクだけがデスゲーム!?  作者: ba
第八章 神様の迷宮
170/211

第165話 僕のお願い。

 回りの貴族の人達や王様が僕の言葉を待って凝視している。正直少し怖いけど……でも、多分今お願いしないときっと後悔する。

 僕は息を整えて王様を見つめた。


「こ、この国の、王位継承権を、じょ、女性の子供にも与えて、欲しいです。お願いします」


 言い切った瞬間、さっきまでとは明らかに違う雰囲気で回りがどよめいた。

 直後に空気が爆発する。


「この国の王位継承に口出しをするだとっ!?」

「流民の身で何を言っているのかっ!」

「如何に先の事件解決の立役者と言えど言って良い事と悪い事があるっ!」


 聞こえてくる諸々の非難の声。

 僕自身そう思う部分が多々あるから、怖くてそっちを見る事が出来ない。

 でも、どうしても言っておきたかった。我慢できなかった。


 ……んだけど……これもしかしたらこのまま不敬罪とかで殺されたりしないだろうか?

 ちょっと怖くなってきた。


 貴族達の非難の声と指示があればいつでも飛びかかる準備をしてる気がする衛兵達、それに対して殺気を増している気がする後方のマヤに対して怖くなってる部分も少しある気がする。


 と、そこで国王様が手を上げて貴族達を制した。それで一応謁見の間は再び静かになる。

「ユウよ、其方は何故そのような願いを?」


 僕を射殺すように真っ直ぐ見つめる国王様はそう尋ねてきた。

 足が震えそうになるけど、ぐっと我慢して見つめ返す。


「こ、今回の事件で、色んな人に助けて貰いました。その中には女性も一杯いました。その中で、この国の王位継承は男子のみと、聞きました。この国の要職にも女性はいらっしゃるのに、です。

 だ、だから、もし僕の願いが叶うのなら、この国にお姫様が、産まれた時、彼女にも王位継承権を、希望を与えて欲しい、んです」


 シルフィードさんがどういう気持ちで男装するに至ったか、今どう思っているのか、僕にはわからない。

 でも、どちらでも良い決まりだったなら、選ぶ事が出来るなら、その方が良いと思う。


 暫し見つめ合う僕と王様。と、不意に王様の目の奥が笑ったように見えた。

「その報償もお主に益がないように感じるがのぅ」

「ぼ、僕にはそれで十分なので」

「そうか…………よかろう」


 しばし瞑目した国王様は、そう一声発した。今のってイエスって事だよね!?


「へ、陛下っ!」

 慌てたように貴族の人の1人が声を上げる。


「この者は別に誰を国王にしろと言っている訳ではない。単に王族の女性に王位継承権を与えよというだけだ。王子が後から産まれた場合等については細かく決めれば良い。今ワシが居り、次の王は……何十年先かわからんがシルフィードなのだ。混乱もなかろう。

 ユウよ、お主の願い、フラム・テランの名において聞き入れた」


 周りの貴族の人達にも聞こえるようにはっきりと宣言する国王様。

 僕はその声にほっと息を吐き出した。




 謁見が終わり、そのまま帰宅……とはならず、僕達はお城の一室で休憩していた。

 と、言っても休憩してるのはマヤだけで、僕は床に正座していた。


 勿論さっきの事でマヤに怒られたのだ。一歩間違ったらあのまま牢屋行きだった、その時どうするつもりだったのだ、と。

 言い訳のしようもないからこうして反省するしかなかった。


 でもさすが王城だけあって物凄くふわふわの絨毯であまり足が痛くないのがせめてもの救いだ。

 ホームのリビングもこんな絨毯にすれば正座が楽になるかもしれない。……そうなったらマヤはわざわざ正座用の敷き板とか持ってきそうだ。やめておこう。


 そんな事を思っていると扉が開いた。

「やぁ、待たせてしまって申し訳ない。せっかくだからユウ達とちゃんと話がしたくて……」


 入ってきたのはシルフィードさんとアニーさんだった。

 喋りながら入ってきたシルフィードさんは絨毯の上に正座している僕と紅茶を飲んでいるマヤを見て、不思議そうな顔をした。


「ユウは何をしてるんだい? そんな所に座って。椅子に座れば良いのに」

 そう言うシルフィードさんに、僕はマヤを見る。

「さっき無茶をした罰に正座させてたのよ。もういいわよ、ユウ。あんまり反省してないようだし、ホームに帰ってから改めて、ね」


 お許しが出た……と思ったけど、後から追加される位なら今の方が良かったっ!

 けど、今このまま正座してても、シルフィードさんと話しにくいし、大人しく椅子に座る。


「成る程、てっきりユウがそういう趣味なのかと思ったよ」

「どんな趣味っ!? そんな趣味ないよっ!?」

 納得するシルフィードさんに慌てて言っておく。でないと知らない間に僕は正座が好きな人間にされてしまう。正直やらなくていいなら一生やりたくない座り方だ。


 足は痺れるし痛いし見てる人は何故か皆ニマニマしてるし幾ら昔の武士の座り方だと言っても現代日本の高校生男子が我慢出来る物じゃない。


「まぁ……無茶というのは私も同意見だな。ユウ、さっきの謁見の間でのアレ(・・)は1つ間違えば死刑にされてもおかしくないんだよ? 流民といえど王国法で裁かれれば復活できないだろ?」


 そう言うシルフィードさんはいつもの優しい表情ではなく、厳しい目で僕を見ていた。

「……ごめんなさい」

「勿論、私の為にしてくれた事はわかっている。が、私の為にユウが危険な目に遭って私が喜ぶ訳ないだろう?」

 ため息をつくシルフィードさんに、更に申し訳なくなる。


 確かに僕なんかがあんな事言わなくても、シルフィードさんなら自分で法律を変えて女性でも王位継承出来るように持って行ったかもしれない。

 あの王様だって僕なんかのお願いを聞いてくれたんだから、シルフィードさん達が動けば難しくない気がする。

 むしろ僕がさっき言っちゃったから問題がややこしくなる可能性だって十分にあった。そう思うと……邪魔をしただけになったかもしれない。


「…………ごめんなさい」

 その時、涙を浮かべて頭を垂れる僕の頭にぽんと手が乗った。


 見上げるといつの間にか隣に来ていたシルフィードさんの手が僕の頭に乗り、僕を撫でている。

「それでも、ユウが私の為にがんばってくれた事が嬉しかった。ありがとう」


 そう言って微笑むシルフィードさん。

 その顔に自然と僕の顔にも笑みが浮かんだ。


「はいはい、そういうシーンはクラン『銀の翼』では禁止となっておりまーす」

 手を叩きながら空気を破壊したのはマヤだった。

 そんな禁止事項聞いた事ないよっ!?


 と、思ったけど確かに高校生男子としては女の子に頭を撫でられたままというのも格好が付かないし、撫でられるのはここまでとなった。

 せめて僕が撫でる側だったらなぁ。 


「それで、何の用よ?」

 紅茶を飲みながら尋ねるマヤ。ソレって僕の台詞なような……。

「さっきも言った通り、せっかくユウが来てくれたんだからお茶でも一緒にと思ってね」

 そう言って笑うシルフィードさん。


「あ、そだ。僕クッキー焼いてきたんで、良かったらどうぞ」

「本当かい!? ユウの手作りお菓子、楽しみだなぁ」

 本当に嬉しそうに笑うシルフィードさんに僕も嬉しくなってアイテムウィンドウからクッキーをテーブルに取り出す。


「これは可愛いね。……んん~っっ! 美味しいっ!」

 噛みしめるように食べるシルフィードさん。

 本当に美味しそうに食べてくれていて、作った方も嬉しい。

「ほら、アニーも食べるかい?」

「よ、宜しいのですかっ!?」


 隣に控えていたアニーさんが驚いたように僕を見る。その瞬間、アニーさんにある筈のない尻尾が物凄く揺れているのが何故か見えた。

「え、えっと、はい。よかったら、どうぞ?」


 僕が答えるや否やアニーさんは一枚手にとって口に入れた。

「っっっーーーーーっ!!」


 そのまま何も言わず、何故か全身震えてくねくね身もだえるアニーさん。

 味見もしたし、マヤやシルフィードさんは普通に美味しいって言ってくれたから失敗って事はないけど……それはどういうリアクションなんだろう……。


「ど、どう……かな?」

「美味しいですっ!!」

 僕の質問に食い気味に答えるアニーさん。良かった、美味しかったんだ。


「マージャにも食べさせてあげたいから少し分けて貰っても良いかな?」

「あ、はい。じゃあこっちをどうぞ」

 シルフィードさんに聞かれて、僕はアイテムウィンドウからもう一つのラッピングしてあったクッキーの入った袋を手渡した。

 流石にこれからクロノさんの所にってのも時間も遅いし、こっちのクッキーもあげてしまって構わないだろう。

「ありがとう。マージャきっと喜ぶよ」

「はいっ!」


 だったら嬉しいな。マージャさんにも一杯お世話になったし。今日もマージャさん直伝の『礼儀作法』スキルのお陰の部分も大きかった。

 じゃなきゃ僕なんて王様の前で硬直して動けなかったかもしれない。


 そう思っていると再びドアがノックされた。

 誰だろう? と皆の注目が集まる。


 メイドさんが扉を開き、ノックをした人物が中に入って来る。


「やぁ、来ちゃった」


 そう言って笑う長身の男性に室内の全員が固まった。


 年齢40代程で白髪交じりの金髪と長い髭を蓄えた男性は、あの豪華なマントも頭上の冠もなく、気さくな足取りで入ってきた。


 そう、その姿はどう見てもこの国の国王、フレム・テランその人だった。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ