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ボクだけがデスゲーム!?  作者: ba
第一章 始まりの王国
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第14話 成長の証。

「必殺!! ユウスペシャル!!」

 向かってくるゼリースライムの核に愛刀鬼斬丸(おにぎりまる)が突き刺さり、震えたかと思うと光の粒になり消える。その際一部の光が僕に向かって流れて来る。


・スライムゼラチン1個獲得。


 ドロップアイテムがあったらしい。視界の隅にアナウンスが表示される。


 朝、西にある林に採取に行くコテツさんと別れてマヤと2人で来た南平原、戦い続けてもうお昼過ぎ――

 ゼリースライム62匹目にして僕はとうとうコツを掴んだよ!!


 僕みたいな非力なアバターで――非力なのはアバターであって僕自身じゃない、リアルの僕はもうちょっと力はあるハズだ。うん、此処は重要な事だ――非力なアバターで戦おうと思ったら叩きつけるだけじゃダメだったんだ。

 コテツさんやマヤなら普通に殴りつけるだけでゼリースライムは夏の砂浜のスイカのようになるかもしれないけど、僕は僕にあった戦い方が必要だったんだ!


 そう! それはカウンター!!


 相手の力を利用し、その力を倍返しする! 男の子なら一度は憧れる攻撃法の1つ!!

 たった二日でその極意に目覚めた僕の才能……恐ろしい。


「そろそろ待機スキルに目覚めたりした?」

 己の才能に身震いしていた僕を見て、側に座って眺めていたマヤが言った。

「待機スキル? 目覚め? 何それ?」

 自分のステータスに書かれている通常スキルは3つ、固有スキルは7つ、確かに1個空きはあるけど…『待機スキル』なんて項目は見あたらない。

「わからない、って事はまだ目覚めてないんだ」

 一人納得しているマヤ。そもそも待機スキルって何の事なんだろう?


「スキルに熟練度があるって話はしたわよね」

「うん、聞いた。だから僕はこうしてゼリースライムを鬼斬丸で討伐してるんだよね」

 そう言ってぶるんと鬼斬丸を振り回す。

「そう、でもそれって別に持っているスキルだけじゃなくて、持ってないスキルにも関係してる事なの」

 持ってないスキルにも? ってどういう事だろう?

「持ってないスキルの熟練度も上がってる…とか?」

「そ、ユウにしてはよく出来ました」

 そう言って僕の頭を撫でるマヤ。どうして皆僕の頭を撫でようとするんだろう、高校生男子の頭は撫でて良いものじゃない! 鬼斬丸で反撃だっ!!

 と、寸での所で躱される。くそう…これがレベル差か。


「もう……それで、これも有志の検証だから推測だけど……ユウが思った通り、実は大抵のスキルは無級で持っている、ってのが大凡の見解なの」

「つまり僕も剣術(無級)とかを持ってるって事?」

「そ、勿論剣術以外もね。そしてそれが初級以上になった時点で『待機スキル』として表示されるようになって、表示された物を取得したり、取得済みのスキルとの入れ替えをしたりする事が出来るようになるの。」


 そんな便利機能があったのか。確かにアバター作成時からスキル変更出来ないと哀しいしなぁ……。

 ん? という事は僕の前衛戦士への夢は断たれていない!? 今からでも出来る戦神官(バトルプリースト)への道が!?


「それで、待機スキルに表示されてるスキルは出来るだけ早く取得や入替をしないと数日とかで又消えちゃうから、急いだ方が良いんだけど……」

「なるほど、確かにそうだね。僕の場合スキルスロットが1個空いてるんだし、表示されたらすぐ取るべきだよね!!」

「うん、でも……半日も武器を振り回してたらもう表示されてもおかしくないはずなのよね……」


 改めて見てもやはり『待機スキル』という項目すら見あたらない。


「ユウってば、武器の扱いや体術の才能が無いのかも?」

「そ、それは言っちゃダメな事じゃないかな?!」


 本当にそうだったらと泣けてくるけど、きっとたまたまに違いない。がんばればすぐに初級くらい表示されるさ……がんばれ僕……。




 ともかく明確な目標が出来た事は良い事だ。

 出来る限り鬼斬丸を振るってスライムを倒し、レベル上げをしながら剣術か杖術かわからないけど初級の獲得を目指す!

 なんだやる事は何も変わってないじゃないか、スライム討伐のコツも掴んだしこれは行ける!!


 実際コツを掴んだお陰か討伐のペースも進み、すぐ近くに出現(リポップ)するゼリースライムが見つからなくなってくる。

 そうすると徐々に見えるゼリースライムの位置へと移動していく事になって、南門からどんどん離れていたようだ。あれだけ大きかった城塞の壁が小さく見える。

 自分の周りもよく見たら平原というよりごつごつとした岩が目立ち始めている。


 そうか、南門付近に僕以外の人があんまり居なかったのは皆移動しながら討伐を行って散らばっている…って事なのかな?

 つまりここまで来れるようになった位僕も強くなっているという事か。


 と、周りの景色を見ていると不思議な人影が見えた。

 明らかに僕より小さい。実に遺憾な事だけど僕のアバターはかなり小さい。そしてこのゲームは年齢制限もあるはず。その僕より小さいプレイヤーって……

「ねぇ、マヤ。アレって……」

 僕が指さすと暇そうにしていたマヤがそっちを見て

「あぁ、多分プレイヤーじゃなくてNPCノンプレイヤーキャラクターでしょ。この辺はNPCが採取クエストに来てたりするそうだし。」

「へぇ……そんな事もあるんだ。」


 でも子供の頃から仕事してるって偉いなぁ……ファンタジー世界って大変なんだろうな。

 がんばれ子供! と見ていると、その側にゼリースライムがリポップする所まで見えた。


「っ!!」


 あの子が危ない! と思うより先に身体が動いていた。

 ゼリースライムはプレイヤーにとって確かに雑魚モンスターなんだろうけど、それでも最初僕は殺されかけた。一度張り付かれたら子供の腕力で引きはがせる気がしない。

 周りに他に人影もないし、僕が助けなきゃ!!


 その子もその時ゼリースライムに気付いたようで、抱えていた籠を落とし、身を竦ませたように見えた。


「間に合えっ!!」

 全速力で走りながらゼリースライムに必殺の一撃をたたき込――


 その僕の横を物凄い速度で何かが通り過ぎ、ゼリースライムの核に突き刺さった。

 刺さった物をよく見るとソレは矢で、飛んできた方を見るとマヤが弓を構えていた。


 核を貫かれて即死し、光となって消えるゼリースライム。

 えっと……この振り上げた手、どうしよう……。


「あ、えと…君、大丈夫?」 

 どうしようもないので誤魔化すようにその子に話しかけた。

 僕に反応してその子はビクンと身体を震わせた。そのままびっくりしたように僕の顔を凝視して又固まっている。

 あれ? 聞こえなかったのかな……それともそんなに怖かったのかな?


「えと、もう大丈夫だからね、怖いモンスターは僕達が倒したから」

 僕は何もしてないけど。

 でも落ち着かせる為に出来るだけ優しい声で。

 しかし動かない。どうしようこれ……。


 改めて見ると僕より少し小さい位か、ふんわりしたショートヘアにぴんと立った柴犬っぽい耳が見える。スカートだから女の子だろう。

 尻尾がみえるけど動いてないから固まったままなんだろうなぁ……。


「ねぇユウ、どうしたの? 大丈夫だった?」

 そこでマヤも僕たちの所までやってきた。弓はもう仕舞ったようだ。そういえばマヤって弓術も持ってたっけ。僕にも遠距離攻撃アーツがあればなぁ……。

 あ、そうか、防護印(プロテクション)をこの子にかけながら走り込めば安全に助けられたのかも? でも考える余裕無かったからなぁ……反省だ。


「あ、ありがとうございます! 助けてくれて! 助かりました!」

 マヤの登場でやっと再起動したのかその子が慌てて頭を下げ始めた。尻尾もすごい勢いで動いてる。

 よかった、あんまり動かないから何かマズい事したのかと思った。


「気にしなくて良いよ。君が無事でよかった。あ、僕の名前はユウ、彼女がマヤ。」

 僕の声に答えてマヤがにっこり微笑む。

「は、はい、私はタニアです! 薬草採取に夢中になって、気付くのが遅れて、本当に助かりました! えと……冒険者の方……ですか?」

「うん。僕はまだ駆け出しだけどね。……でもタニアちゃん、ここはもう随分城塞から離れてるし気をつけなきゃダメだよ?」

 僕もマヤを真似てにっこりと微笑む。

「は、はひ! も、もう少しで数も揃うから、そひたら戻りらす! ありがとうございましゅたっ!!」


 僕の方を見て真っ赤にした彼女は、慌てたように籠を持って何度も頭を下げて、城塞とは反対方向、西の向かって走って行ってしまった。

 大丈夫なのかなぁ……まぁ大丈夫か。あの速度で走れるんならゼリースライムに追いつかれる事もないだろうし。




「ところでユウ、気付いてる?」

 タニアちゃんが見えなくなるのを眺めていたら不意にマヤが僕を見て言った。

 気付くって何だろう?

 と、意識すると視界にログが表示されていた。



・『ユウ』はレベルアップした。Lv2になった。



「っ!? いつのまに!?」

 何度見返しても間違いなく『レベルアップ』の表示が。

「さっきゼリースライムを射貫いた時のパーティ分配経験値で、ね」


 あの時かぁぁぁぁっっ!!

 緊急事態だから仕方なかったとはいえレベルアップの最後の一撃を持って行かれるとか、何というかショックが……。

 そしてテヘペロしてるマヤに悪気はないのかもしれないが無駄に腹が立つ!!


 落ち着けユウ、過ぎた事は仕方ない。

 何はともあれレベルアップしたんだ。今はそれは喜ぼう!

 これまでの事よりこれからの事だ!

「ついにステータスが上がる時! 筋力を上げて戦闘力アップだ!!」

「え?」

 びっくりした声を上げるマヤ。

 え? そんなに僕が筋力上げるのって変?


「えっと、ユウ、知らなかった?」

「何を?」

「セカンドアースってレベルアップ時のステータスは自動割り振りだよ?」

「!? す、す、すてーたすっ!!」

 慌ててステータス画面を表示した。



――――――――――――――――――――――――――――――

  ユウ 人族/男 16歳 侍祭(アコライト)Lv2

  HP26/AP78

  筋力:1(0)

  体力:1(0)

  速力:1(0)

  器用:1(0)

  知力:3(+5)

  魔力:4(+10)↑


  <通常スキル>

  ・神聖魔法(初級) ・調理(初級) ・歌唱(中級)↑

  <固有スキル>

  ・美女神の祝福(びめがみのしゅくふく) ・愛天使の微笑(あいてんしのほほえみ) ・妖精女王の囁きようせいじょおうのささやき ・精霊后の芳香せいれいごうのほうこう

  ・聖獣姫の柔肌せいじゅうきのやわはだ ・魔皇女の雫(まこうじょのしずく)

  <装備>

  ・Lv2木の棒

  ・Lv5純白のローブ

――――――――――――――――――――――――――――――



 …………何故魔力+1!? 一日中木の棒を振り回して戦ったのに!?

 そして何故待機スキルが発生せずに『歌唱』が中級になってるの!?

 こんなのおかしいよね!? 間違いじゃないかなっ!?


「やっぱりユウは期待を裏切らないわね」

 僕のステータスをパーティウィンドウから覗き見ながらマヤが嬉しそうに呟いた。



 マヤの言うスキル熟練度システムって本当に存在してるんだろうか……?



どうでもいい話だけど今回の内容について。


『ユウスペシャル』は勿論アーツではなくただの突きです。

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