表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ボクだけがデスゲーム!?  作者: ba
第六章 ボクの居る場所
126/211

第121話 ホームで朝食を。

 アンクルさんやクロノさん達と別れた後、その足で『生産者ギルド』へ『炎魔石』を持って行ってシドさんにお願いして、ホームに帰るとマヤが物凄く怒っていた。

 何故か『火口ダンジョン』に行っていた事がバレたらしい。


 結果物凄く怒られてしまった。……怒ってる時の女の子ってどう弁解しても話を聞いて貰えないし結局謝るしかないんだよね……。うん、わかってた。

 最終的に「今度ダンジョンに行く時は何処であろうが必ず一緒に行く」と約束する事になった。


 元々何度もアンクルさんやクロノさんに無理をお願いする訳もいかないし、行くつもりはなかったんだけど……。


 そんなこんなで翌日。業務用オーブンが完成していた。


 寝て起きたらもうキッチンの奥に最新式業務用オーブンが鎮座している姿は正直びっくりした。

 厩舎を造る時も一晩で完成していた。その時サラサラさんが、


「ホームの物は発注した物が完成すると自動転送されて来るのよ~」


 って言っていたけど、何度見ても正直慣れない。

 ……物凄く早い通販みたいに考えれば良いんだろうか?

 ブラウニーとかが走り回って作ってるとかなら面白いかもしれないけど……頼んだのは間違いなく筋肉オバケな『生産者ギルド』のギルドマスターであるシドさんだ。

 あの人みたいな小人だと正直怖い。


 と、そんな事より今はこのオーブンがすごいっ!

 余熱も要らないし焼き時間も物凄く短縮されて、入れてすぐふわふわにパンが焼き上がるのだっ!

 更に『炎魔石』を使ってるからなのか基本的にこっちで温度調整しなくても料理に合わせてベストな温度で仕上げてくれるみたい。

 魔法のオーブンと言っても過言ではないっ!


 ララさんが、業務用オーブンの必要性を説いていた理由がよくわかる。

 この性能は『火口ダンジョン』まで行って苦労しただけの甲斐が本当にあった。


 あんまり簡単にパンが焼けるから僕は嬉しくて鼻歌まじりにどんどんパンを作り続けた。




 そして朝食の時間。

 イギリスパン、フランスパン、ロールパン、カンパーニュ、クロワッサン、ブリオッシュ、ベーグル……ちょっと作りすぎたかもしれない。


 今日は珍しく朝食の時間に全員が揃っていて、そういう意味では多めに作った事自体は悪くないんだけど……、パンばかりこんなに種類があるのはダメだったろうか……?


「ユウ、コレ何てパンだ?」

「あ、えっと、カンパーニュかな」

 切り分けても結構な大きさのカンパーニュにかぶりついているコテツさんの問いに慌てて返事をする。

「へぇ、いつものと違ってこっちのが好きかな」

 そう言って更にカンパーニュに手を伸ばすコテツさん。


「ウチはベーグルかなー。このモッチモチな食感が好きなんよね~」

 とベーグルをほぼ独り占めしているルルイエさん。

「ルルずるい、私にも」

「ノワっちはブリオッシュ食べてるやん」

「ベーグルも食べる」


 そう言ってノワールさんが素早い動きでルルイエさんのベーグルを奪い、その直後ルルイエさんがノワールさんが食べようとしたベーグルを奪い返す。


「ま、まだあるから、そんな取り合いしないでっ」

 僕は多すぎると思って残してあったベーグルを持ってきてノワールさんに渡して事なきを得た。

「ユウ、ありがとう」

 満足げにベーグルを囓るノワールさん。


 奪い合う程気に入ってくれたのは嬉しいけど、ケンカはダメだ。

 が、今度はルルイエさんがブリオッシュを狙って再びノワールさんと奪い合いになっていた。


「朝食はもっと落ち着いて食べたいわ」

「ふふふ、でも楽しい食事も好きよ~」


 フランスパンを食べているマヤとイギリスパンを食べているサラサラさんはそう言ってただ僕達を眺めながら食事を続けていた。

 2人の争いに口を出す気はないらしい。


「ちょっとユウっ! どうしてこんなに一杯パンがあるのに、あんパンとかクリームパンとかメロンパンがないのよっ!?」


 誰も止めないし仕方なく僕が……と思ったら僕がホノカちゃんに呼び止められてしまった。

「朝食から甘いパンって……嫌じゃない?」


 あんパンもクリームパンもメロンパンも大好きだけど、正直朝ご飯として食べるのに少し抵抗がある。

 サラダやハムエッグに合わない気がするのだ。


「嫌じゃないわよっ!」


 が、即答するホノカちゃん。

 この辺は人それぞれだし僕の主張を無理強いする事じゃないと思う。だから、


「えっと、一応ジャムと……あと蜂蜜とあんこと生クリームを用意してあるから、好きなのを付けて食べて……じゃダメ?」

 本当はおやつ用に準備していた物を取り出してお伺いを立ててみる。


「あるなら最初から出しなさいよねっ!」

 そう言うホノカちゃんは満足げに全部をたっぷりとロールパンにかけて食べていた。


 機嫌が治った事に安心して、ホノカちゃんが口元にべったりジャムやクリームを付けてる姿を見ながら僕はイギリスパンのトーストにバターを塗ってそれを一囓りした。




「さて、今日は皆に相談があるんだけど……」


 朝食が一段落して、ノワールさんとホノカちゃん以外はコーヒーや紅茶を飲んで食後の余韻を楽しんでいると、サラサラさんがそう切り出した。


 相談……という事はもしかして今日は皆予め呼ばれて集まってたんだろうか?

 朝食の時間から全員揃っているのは珍しいとは思っていたけど……。

 皆を集めて改めって相談する事って何だろう? 転職も一段落したし次のクラン狩りの相談とかだろうか?


「ユウ君が『銀の翼(ウチ)』に来て随分経つじゃない? この前はあんな事があったんだし、そろそろユウ君を正式に『銀の翼(ウチ)』のクランメンバーにしたいんだけど……どうかな?」


 突然僕の名前を呼ばれて危うくカップを落としそうになった。

 サラサラさんの言う『相談内容』が僕の事だったなんて。


 『この前のあんな事』は多分クラン会議の事だろう。


 あの時は本当に皆に迷惑かけちゃったし。その時にサラサラさんは僕をクランメンバーにするって言っていた。

 でも『銀の翼』はメンバー全員の合意によって方針を決めるクランだから、改めて皆に問うているんだろう。


 正直僕もこのまま『銀の翼』に居たいと思う。皆の事は大好きだし、このホームの居心地も良い。けど、それで皆に迷惑をかけてしまうというのなら我慢も出来る。

 こうして業務用オーブンを手に入れたし、『冒険者ギルド』にちゃんとパンを卸していけば1人でも何とかなる……気がするし。

 でも、それでも出来る事なら……。


 そう思って皆の顔を伺うと、コテツさんと目があった。


「ユウ、そんな捨てられた子犬みてーな目で見るなよ」

「ど、どんな目!?」

 そう言って笑うコテツさん。僕は自分の顔をペタペタ触るが、自分がどんな顔をしてたのかわからない。


「前ん時も言ったけど、アタシはユウの加入に賛成だよ」

「私もよ。そもそも連れてきたのは私だし」

 コテツさんに続いてマヤも手を挙げた。


「ウチもええよ~。っていうか今更ユウっちが居なくなるなんて考えられへんやん?」

「私も、大賛成」


 ルルイエさんとノワールさんが手を挙げてくれた。

 その気持ちが嬉しくて、胸と目頭が熱くなってくる。


 そして残ったホノカちゃんに皆の視線が集まった。


「わ、私は……そ、その……」

 注目され、顔を真っ赤にしながら口を開こうとするホノカちゃん。ちらちらと僕を見たり違う方を見たりしている。


「そうよね、ホノカは『銀の翼』に男が入るのは絶対ダメよね」

 ホノカちゃんが何かを言う前にサラサラさんがため息混じりに呟いた。


「そ、そうよっ! おおおお、男がなんて、だ、ダメに決まってるじゃないっ!」

「そうよね、その気持ちは変わらないわよね」

「そそそそ、そうよ、絶対だわっ!」

「でもユウ君は女の子みたいよ~?」

「お、女の子みたいと、女の子は全然違うわよっ!?」

「そうね~、ユウ君もオオカミかもしれないしね~」

「そ、そこまでは、その……」


 さらりとサラサラさんに酷い事を言われた気がして、予想通りなホノカちゃんの言葉よりそっちの方にちょっと傷ついた。


 凹んでいるとホノカちゃんが何か『しまった』って顔をして僕を凝視している事に気付く。

 なんだろう……と見つめ返すと、何故か怒ったような顔をしてサラサラさんの方を向いてしまった。


 うーん……やっぱり僕ってそんな『女の子みたい』なんだろうか?

 『司祭(プリースト)』だからローブを着てたけどもっと男の子っぽい格好をした方が良いかもしれない。

 髪もばっさり切れば少しは……でも髪を切ろうとしたらマヤが物凄く怒ってたし、あのマヤを説得する勇気は僕にはないし……どうすれば男っぽくなるのかなぁ……。


 悩んでいると、ルルイエさんがポンと手を叩く。


「ならいっそユウっちがもっとしっかり女装すればええんちゃうかな!」

「「何が良いの(よっ)!?」」


 僕とホノカちゃんのツッコミが綺麗に重なった。

 僕は男らしくありたいのにこれ以上女装とか嫌だよ!? どうせ化粧とかリボンとか髪飾りとか、面白半分にオモチャにされるんだしっ! 子供の頃はよくあったけどそういうのは二度と御免だっ!

 僕は男らしくなりたいんだっ!!


 ……あ、でも男らしくなるとホノカちゃんに嫌われる……のかな?


 そう思ってちらりとホノカちゃんを見ると、偶然か目があった。

 また何か言い足そうに口をもがもがしながら僕を睨み付けて、また視線を逸らす。


 ……今の時点で十分怒らせるような事したのかもしれない……。


 そうか、この話し合いって「僕は男です」ってホノカちゃんにアピールしてる場になってるんだから、

改めて男性である僕に嫌悪してるのかもしれない。

 仲良く……とまではいかなくてもせめて仲悪くはないと思いたかったから、かなり凹む。けど……仕方ないのかもしれない。


「このままじゃ前回と一緒だし、こういうのはどうかしら?」

 話し合いが僕をどう女装させるかという方向に物凄い勢いで逸れていく中、サラサラさんがホノカちゃんと僕を見ながら提案を口にした。


「今日一日、ユウ君とホノカちゃん一緒に行動して、ホノカちゃんはユウ君の良い所、悪い所をしっかり見極めて、その上で今晩改めてどうするか話し合いをしましょう」


 にんまりと笑うサラサラさん。

 つまり今日一日僕はホノカちゃんのチェックを受ける……って事かな?

 ちらりとホノカちゃんを見る、と又目が合った。


「いいわっ! その勝負、受けて立つわっ!!」

「勝負なのっ!?」


 僕を睨んで宣言するホノカちゃんに僕は反射的に驚きの声を上げる。


「当たり前よっ! 世の中全てが勝負なのよっ!」

「そ、そうなの?」

 胸を張るホノカちゃんに首を傾げる僕。

「じゃあそういう事で。ユウ君、今日一日お願いね~」


 サラサラさんにお願いされてホノカちゃんと2人ホームを送り出されてしまった。

 よくわからないけど今日一日僕はホノカちゃんとの『勝負』をする事になった。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ