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ボクだけがデスゲーム!?  作者: ba
第六章 ボクの居る場所
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第113話 いざ火口ダンジョンへ。

 翌朝、まだ朝日も顔を出さず辺りも暗い時間帯に僕はこっそり起きだした。


 『銀の翼』の皆もまだ眠っている今のうちにと階下に降りて辺りを伺う。


「んんぁ」


 薄暗いリビングに漏れる女性の声に一瞬僕の動きが止まり緊張に震えるけど、暗さになれてきた目が原因を発見した。

 又ルルイエさんはリビングのソファーで寝てしまっていたようだ。


 よくホノカちゃんに怒られてるのに一向に自室で休むようにならないのはどうしてなんだろう?

 ソファーよりベッドの方がぐっすり眠れるのに……って、ログアウト中の身体ならどっちでも同じなのかな?

 でもマヤとかベッドの方がログインした時の身体が楽って言ってたしなぁ……。

 人それぞれかのかもしれない。


 ともかく、他に人が居ないのを確認してからキッチンに向かう。

 昨日のうちに保存庫に準備してあった朝食や昼食の分はちゃんと残っていた。


 今日持って行く分はあらかじめ自分のアイテムウィンドウに入れてあるし問題ない。


 あとはこのまま誰にもバレずに出発出来れば作戦成功だ。


 そう、今日のダンジョン探索は皆に内緒にしてあるのだ。

 特にマヤとか怒ったり一緒に付いてきたりしそうだし。男同士で遊びに行くのに女の子が、それも保護者ポジションで付いてくるとか勘弁してほしい。

 確かにちょっと危ないかもしれないけど……だからってずっと部屋に閉じこもってて何かが変わる訳でもないし、出来る事はちゃんとしたい。


 一応何かあった時の為にサラサラさんにだけは伝えてあるけど、クロノさんやアンクルさんと一緒だという事で何とか許可が貰えた。

 サラサラさんも『火口ダンジョン』が『銀の翼』の構成と相性が悪い事は分かってたっぽい。


 ルルイエさんを起こさないように裏口からこっそりと外に出ると朝露なのか濡れた空気が心地良い。


「ブルゥ?」


 と、僕に気付いたのか厩舎からヴァイスが顔を覗かせた。


「あ、ごめん。起こしちゃった?」

「ブルゥゥ」

 そう言ってすり寄ってくるヴァイスの首筋を撫でてあげる。 


「ごめんね、これから出かけなきゃいけなくて……今日はヴァイスを連れて行ってあげられないから、大人しくしててね?」

「ブルウゥ……」


 寂しそうな声をあげるヴァイス。うぅ……罪悪感が……。

 僕としてもせっかくの狩りだしヴァイスに乗って行ったりしたかったけど……さすがにテルさんと初めての一緒の狩りで目の前でソレをするのはちょっと申し訳ない。


「また今度一緒に遊びに行くから……ね?」


 僕がそう言うと小さく頷いて、でも本当に寂しそうにヴァイスは厩舎に戻っていった。何度も僕の方を振り返りながら……。

 うぅ……こ、これは辛い……しかしここは我慢だ。


 ヴァイスが消えて行った厩舎に僕自身後ろ髪を引かれながらも、なんとか裏口から脱出に成功した。


 あとは待ち合わせをしてる西門にダッシュだっ!

 少し夜が明けて来て明るくなってきた王都の路地を僕は駆け出した。




 普通なら『冒険者ギルド』か中央広場で待ち合わせるのが一般的なんだけどグラスさんの提案で昨日のうちにパーティを結成して、『冒険者ギルド』へのクエスト受注周りの作業をしてくれるという事でお願いしちゃったから、僕達は西門に集まる事になっていた。


 さすがに時間が早いのか開けているお店も露店も無く、人も殆ど居ない通りを西へ西へと歩いていく。

 待ち合わせの時間にはまだ十分だけど、久々に男同士で遊びに行くんだから正直気が逸る。

 シルフィードさんと遊んだ時も久々だったけど今度は『狩り』だ。


 男友達と一緒に冒険をするのだから、昨日からワクワクが止まらなかった。

 眠れなくてついついお弁当を作り過ぎちゃったかもしれない位だった。


 そんな風に駆け足で進む僕の目に西門が見えて来た時、その前に既に幾つかの人影があるのも見えた。

 慌てて速度を上げると、その人影はアンクルさんとクロノさんとグラスさんだった。


「おお、ユウ様、おはようございます。そんな走られると危ないですぞ」

 僕を見つけたアンクルさんが手を振って声をかけてくれた。


「お、おはようございますっ! あの、僕遅れちゃいましたっ!?」

 皆の前にやっと到着した僕は挨拶とともに頭を下げる。


「ユウさん、おはようございます。まだ時間は大丈夫ですよ」

 そう言って微笑むグラスさん。よかった、時間を間違えたかと思っちゃった。


「その、ユウちゃん、おはよう」

「クロノさんもおはようございます」

 今日のクロノさんはいつもの兜を被っていて表情まではわからないけど、口調は楽しげだった。


「ユウ様、やはり護衛として『白薔薇騎士団』を何名か連れて来た方がより確実性が増すと思いますが……」

「昨日も言ったけど、そんないいですよ。無理も無茶もしないですからっ! だから今日はこのメンバーで楽しみましょうっ」

 昨日散々話し合ったのに又同じ事を言うアンクルさん。アンクルさんも本当に心配性だと思う。


「……っ! わかりましたっ。この不肖アンクル、必ずやありとあらゆる事象からユウ様をお守り致しますっ!」

「おいおい、俺等も居るのを忘れんなよな。俺達だってユウちゃんを守るぜ?」

 何やら感涙してるアンクルさんに呆れたような声でクロノさんが呟いた。


「はいっ! 頼りにしてますっ」


 そう言ってクロノさんに微笑みかけると、ついっと顔を背けられてしまった。

 な、なんで……?


「あ、えっと……あの、あとはテルさん?」

 なんとか話題を変えようと辺りを見回しながらグラスさんに尋ねた。


「ええ、まだ約束の時間まで10分程ありますが……彼が来れば集合ですね」


 時間を確認しながら呟くグラスさん。

 結局テルさんが姿を現したのはぴったり10分後だった。


「ンだよ。全員居んのかよ……だれか休んでりゃそのままフケれたのによぉ」

 ぶちぶちと文句を言いながらゆっくり歩いてくるテルさん。


「おはようございますっ! テルさん、今日は宜しくお願いしますっ」

 テルさんがやってくるのが待ちきれなくて手を振って頭を下げる。

「お、おう」

 それに頭を掻きながら応えてくれるテルさん。

「もう少し早めに来れれば満点ですかな」

「うっせーよ。そもそもこんな早えー時間なのがワリーんだよ。それに俺だって時間に間に合ってるだろーが」

 大あくびをしながらテルさんがアンクルさんに噛みつく。


「そうですね、せっかく時間通りに集まったんですし、早速出発しましょう」


 そう言って手を叩くグラスさんの提案に乗って僕達は西門をくぐり抜けた。




 西門を出てすぐ街沿いに街道を北側へ進路を向ける。


「え? 西に行くんじゃないの?」

 皆に付いていきながら首を傾げる僕。西門集合というからてっきり火口ダンジョンって西にあると思っていたんだけど……。


「西に山なんかねーだろーが。『火口ダンジョン』っつー位なんだから普通は火口があんのは山だろ。行き先は山だ、山」


 そう言って指さすのは北側の遠くに見える巨大な山。

 西から出てそのまま山に向かうらしい。


「? ならどうして西口集合に?」

「街の北口は王城に繋がってますからね。流民の私達が王城の中を横切れませんから」


 そう言って笑うグラスさん。

 そういえば行った事なかったけど北ってお城があるんだっけ。


 と歩いているうちにそのお城が見えてくる。

 街と同じ位大きな西洋風のお城が、登ってきた朝日に照らされて輝いている。あそこにこの国の王様とかお姫様とか居るのかなぁ……一冒険者には縁のない話だけどイベントがあるなら見てみたいものだ。

 出来る事なら暮らしてみたいとかも思うけど……でも堅苦しかったりするのかな? テーブルマナーとか知らないし恥ずかしい事になるかもしれない。

 って僕には関係ない話だけど。


「ンだ? ユウもやっぱああいうお城暮らしとかにキョーミあんの?」

 輝くお城を眺めて妄想して、つい足がとまっていた僕にテルさんが半笑いで声をかけてきた。

 慌てて歩いて皆に合流する。


「そりゃ興味はあるよ。海外旅行とかもした事ないし、あんなすごいお城での暮らしって憧れるでしょ?」

「美味そうなモン食ってそうな辺りは気になるな」

 クロノさんが兜の口元を拭う様な仕草をしながらそう言った。兜で分からなかったけど涎を拭こうとしたのかな?


「私は騎士達がどのように暮らしているかに興味がありますな」

 そう言ったのはアンクルさん。

 やっぱりアンクルさんはお城の豪華な暮らしより、それを守る騎士の仕事の方が良いんだ。

 真面目というか不思議というか。


「俺はヤだねぇ。貴族だ何だってのは偉そうで反吐が出る」

 テルさんが吐き捨てるように言う。

「まぁ今の我々には縁のない場所でしょうが……もっとレベルが上がったりイベントをこなしていけば、いつか彼処でも何かあるかも知れませんし、それを楽しみにしてましょう」


 王城の横を通り抜ける頃にグラスさんがそう締めくくり、僕達の視線は前へと移った。


 暫く平原の中に作られた道を歩いていくと少しづつなだらかな斜面となり始め、山へと近づいる事を僕達に知らせてくれる。

 北側は殆ど来た事なかったけど、西の荒野と同じように草木も疎らで、踏みならされた道の部分以外には石や岩、それも僕の身長より多きなモノもごろごろしていた。


 振り返るといつの間にか街と王城が遠くに見えて、随分歩いたんだと実感する。

 ここまでは順風満帆でモンスターも一撃で倒せていたから障害的なモノもなかったけど、明らかにフィールドの雰囲気が変わってきて少し心を引き締める。


「さて、高地エリアに足を踏み込んで早々ですが……運が良いのか悪いのか、モンスターの集団が居るようですね」


 そう言って指さすグラスさん。

 その指の先に数十頭の巨大な影が見える。


・レベル35岩石鬼人(ロックオーガ)21体とエンカウントしました。


 メッセージウィンドウに流れる文字に正直ちょっと僕の表情は引きつった。

 35レベルってオークキングより上だよね!? それが21体って!?

 通常エンカウントだよねコレ!?







どうでもいい設定話/

北側は上級MAPです。


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