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ボクだけがデスゲーム!?  作者: ba
第六章 ボクの居る場所
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第110話 炎魔石。

「なんだユウ、『炎魔石』も知らねぇのか?」

 シドさんが呆れたように呟いた。


 し、知らないモノは知らないんだから仕方ないじゃないかっ!

 もう『セカンドアース』に来て随分経つ気がするけど、聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥って言うし、知らない事をちゃんと知らないって言う勇気が大事なんだよっ!?


 そう思いつつ、ちらっとララさんとタニアちゃんを見る。


「あ、うん。勿論知ってるけど……」

「はい、その……知ってます、ごめんなさい」


 僕の視線に気付いた2人が答え……更にタニアちゃんに謝られてしまった……。


 た、タニアちゃんまで知ってるって事は常識中の常識だったんだろうか……これはもしかして聞いた事自体が一生の恥状態だった!?


「まぁ……アレだ、お前もさすがに『魔石』は知ってるだろ?」


 ちょっとショックに打ち拉がれていると、シドさんが可哀想な子を見る目でそう問いかけてきた。

 そんな目で見つめられるような事だという事に更にショックがっ!?


「えっと、うん。モンスターを倒すと時々ドロップするヤツ……だよね?」

「おう、わかってるじゃねーか」

「……あ、って事は『魔石』の炎版? が『炎魔石』?」

「そうそう、さすがユウちゃん。よく分かってるわね~」


 ぱちぱちと手を叩くララさんとタニアちゃん。


 確かに僕は『炎魔石』を知らなかったけど、でも推理力なら負けてないっ! そう、そうだよ!

 世の中知識も大事だけど揃った情報から判断出来る事も大事なのさっ!

 一を聞いて十を知るのが大事なのだっ!


「あれ? でも『魔石』ってあんまりお金にならない、ってコテツさんが言ってたような……」

 どっちかっていうとハズレドロップだったと思うんだけど……違ったっけ?


「あぁ、その認識で間違ってねぇよ。通常モンスターの『魔石』は小せぇし属性も籠もってないから大した役に立たねぇ」

 首を傾げる僕にシドさんが嘆息まじりに答える。


「逆にそれなりの大きさのある『魔石』や、属性の籠もった『魔石』は価値があるのよ」

「! それで『炎魔石』なのかっ!」


 合点がいって大きな声を出してしまった僕に「正解」とララさんとタニアちゃんが又拍手してくれた。

 ふっふっふ、僕は褒められて伸びるタイプなのだ。


「でも……『魔石』って大きかったり属性があると何か役に立つの?」


「色々役に立つぜ? 今話してる『炎魔石』ならオーブンやコンロ、ストーブなんかに使えるし、『氷魔石』なら製氷機や保冷に使える。『光魔石』は照明、『風魔石』は空調、『保存庫』なんかは属性のない大きな『魔石』を直接使ってるしな」


 シドさんが指折り説明する内容に目が点になった。


 普通に今まで使っていた身の回りの大抵の物に使われていたらしい。

 確かにファンタジー世界なのにスイッチ1つで火が付いたり、お湯が出たり、照明が付いたりしてたけど……まさか全部『魔石』だったなんて思いもしなかった。

 さすがに電気が通ってるとは思ってなかったけど。電線もコンセントもなかったし。


「他にも冒険者なら装備に魔石を使うケースも多いわね。属性を付与したり特殊能力を付けたり、単純に性能を引き上げるのにも『魔石』は便利よ」

「へぇー、『魔石』ってすごいんだね」


 ララさんが僕達『冒険者』にとっても重要な物だと教えてくれた。

 そんなに凄い物だと、むしろ魔石のない生活って考えられないのかもしれない。


「まぁでも、属性が付いてない小さい魔石は価値がないし、属性付きで、しかも大きさも……ってなるとどんどん価値があがっちゃうんだけどね」


 ララさんが苦笑しつつそう付け加える。

 確かにそんな便利で凄い物ならお高くても仕方ない。


「そっか、それで『業務用オーブン』にはそれなりの大きさの『炎魔石』が必要なんだね」

「おう、家庭用なら小さいヤツで済むからそれなりに安くなるんだけどなぁ……」

 頭を掻きながらシドさんが頷く。


「わかりましたっ! じゃあ採ってきますねっ! えっと、その『炎魔石』ってどこで採れます?」


 お金がないなら身体で稼ぐのが基本だ。僕は立ち上がり、勢い勇んでシドさんに目的地を尋ねる。

 無ければ採ってくればいい! 何せ僕は冒険者なんだからっ!!


「だ、ダメよユウちゃん!?」

「無茶はダメだぜっ!?」


 何故か即否決されてしまった……。


「『炎魔石』が取れやすいのは『火口ダンジョン』だが、あそこは熟練の冒険者も1人じゃ行かねぇ所だ。まして大きな『魔石』を得ようって思ったらボスモンスタークラスを狙う必要がある。1人で行けるような場所じゃねぇ。やめとけ」

「そうよ? ダンジョンにソロで行くなんて自殺行為よ? せめてちゃんと仲間と相談して、準備をしっかりしてから行くべきよ?」

「そもそも火口は居るだけで暑くて倒れそうな場所だ。ユウじゃただ立ってるだけでも辛いだろ」

「それに火属性に強いモンスターが多いから火系の攻撃アーツが効きづらいのも辛いしね」


 その後も交互に危険性を訴えられ、何故かお説教みたいな感じになっていく。

 い、いや、さすがに僕も1人で行けるだなんて思ってないデスヨ?


 と、言い出す機会も与えられず、ダンジョンの危険性を延々聞き続ける事になった。




「でも……どうしようかなぁ……」


 『生産者ギルド』から出て、お昼だからと帰るタニアちゃんとララさんと別れ、1人で適当なカフェテラスで昼食のオムライスを口に運びながら独りごちる。

 少しお昼を回っていたからかお客さんも少なく、広いテーブルに1人で占拠してのんびりオムライスを堪能しながら思索にふける事が出来た。


 正直自分でも1人でダンジョンに行けるなんて、ましてボスモンスターを倒せるなんて思っていない。


 でも、サラサラさんに『自分でなんとかするから』って言っておいて即『ダンジョンに行くのを手伝って』って言いづらい……。

 デートで彼女に『全部僕のおごりだから』って言った後に即『お金を貸して』って言うような物だ。

 そんなの男として絶対に避けなければいけない。僕の沽券に関わる重大事だ。


 ……デートも彼女が出来た事もないけど……。


「だからって『火口ダンジョン』に1人って絶対無理だよなぁ……」


 口にくわえたスプーンを揺らしながら、それでも何とか出来ないか考えてみる。


 って、そもそも結局『火口ダンジョン』の位置すら教えてくれなかったし、もしかしたらソニアさんに聞いても教えて貰えないかもしれない。ソニアさんも結構心配性だし。

 やっぱり無理かなぁ……。


「おや、ユウさんも『火口ダンジョン』に興味があるんですか?」

「ユウ様? こんな場所で奇遇ですな」

「げっ!!」


 不意に後ろからかけられた2つの声に慌てて振り向いた。


 通りの右側に漆黒の鎧姿のクロノさんとグラスさんが、中央に純白の鎧姿のアンクルさんが、左側にテルさんが何やら引いた表情で、それぞれ立っていた。


「アンクルさん! クロノさん! グラスさん! テルさんっ! こんにちわっ!」

 今日は色々知り合いに逢う日だなぁと思いつつ、偶然の出会いてやっぱり少し嬉しいし笑顔で挨拶をする。


「ごきげんよう、ユウ様。昨晩は遅くまでPVP(プレイヤーバトル)参加者に治癒(ヒール)をされてましたが、お疲れではありませんか?」

「あ、うん。大丈夫っ! 全然平気だよっ! ちょっと寝坊しちゃったけど……」

 アンクルさんを安心させる為にも両手を振って元気さをアピールする。


 実際『広域(エリア)』と『高位(ハイ)』のお陰でAP消費も少なく済んで思ったより使わなかったし、翌日に残るような事も何もない。


「ユウさんは……昼食中ですか。こうして出逢ったのも何かの縁、私達もご一緒させて頂いても良いですか?」

 僕の食べかけのオムライスを見て、グラスさんが手を叩いて言った。


「あ、うん! 勿論っ! どうぞどうぞっ!」

 慌てて席をずらして場所を空ける。

 元々広いテーブルを1人で使ってて申し訳なかったのだ。


「ユウ様と食事をご一緒出来るとは、光栄です」

「ほら、クロノ君も食べますよね、さっきお腹空いたって言ってたじゃないですか」

「あ、ああ」


 笑顔で席に着くアンクルさんとグラスさん、そして少し送れてクロノさんが席に着く。


「な、なんで俺がお前等と仲良くテーブル囲まなくちゃならねぇんだよっ!?」

 残ったテルさんが僕達を見て吐き捨てるようにそう言った。


「いや、無理強いはしていませんよ。ただ折角のご縁ですし食事でもと思っただけで、お嫌でしたらお帰り下さって結構です」


 ナプキンを取り出しながらグラスさんがテルさんに答えた。

 確かにそうだよね、もうお昼も少し過ぎてるしテルさんはもう昼食食べ終わってる可能性も高い。


「そ、そか、お腹いっぱいだったりもするよね。無理に誘ったみたいになって、ごめんなさいっ!」


 僕も経験あるけど皆でご飯に行こうって流れの時に1人だけお腹いっぱいだったりするとちょっと居づらかったりするし、かといって1人断るのも空気悪くなったりするし難しいのだ。

 次々知り合いにばったり出逢うから調子に乗っちゃったかもしれない。


 謝る僕を何故かテルさんが物凄い形相で睨んできた。

 やっぱり怒ってるのかな? と思ったけどすぐに視線をグラスさんの方に移し、ずかずかと大股で歩いて来て残った椅子にどかっと座り込んだ。


「手前ぇが誘ったんだから、手前ぇの奢りだからなっ!」

 グラスさんを睨みながらそう宣言するテルさん。


「それでも構いませんが……折角ですし今日も勝負というのは如何です?」

「勝負だぁ? 何で俺が受ける必要があんだよ」

「おや、負けた時の心配で?」

「やってやんよっ!!」


 バンとテーブルを叩いてテルさんが吠えた。


 って、あれ? 昼食……だよね? 勝負ってどういう事?

 睨み合う……というか笑顔のグラスさんを一方的に睨むテルさん達2人を交互に見て、視線でアンクルさんとクロノさんに尋ねる。


 が、アンクルさんも笑ってるだけだし、クロノさんは仮面で全く表情が読み取る事が出来なかった。






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