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ボクだけがデスゲーム!?  作者: ba
第一章 始まりの王国
11/211

第10話 最強の敵。

 物凄い数の攻撃を受けているように見えたがマヤの身体には傷らしい傷はついてなかった。これはマヤがすごいのか装備がすごいのか、両方なんだろうなぁ。

 それでもマヤは女の子、ゲームとはいえかすり傷でも残っちゃいけないと治癒(ヒール)を唱える。

 パーティウィンドウを見るに殆どHPは減ってなかったけどマヤも大人しく治療を受けてくれる。治癒(ヒール)って結構気持ちいいんだよねぇ。神聖魔法万歳。


 マヤの治療が終わった後、今度は反対側に倒れている残念イケメンの元へ行き、こちらも治癒(ヒール)を唱える。

 やはりPvPとはいえHPが減ったり外傷が出来たりしているようだ。マヤがほぼ無傷なのはとんでもなく固いんだろう。

 治療を行う僕を残念イケメンが信じられないような顔で見ている。


「何故……?」

「下らないケンカで怪我するのは馬鹿馬鹿しいでしょ。APは余ってるから気にしなくて良いよ。僕の自己満足だし」


 残念イケメンの方も数回の治癒(ヒール)で見た感じほぼ回復したっぽい。初めて侍祭(アコライト)っぽい仕事をした気がする。

 侍祭(アコライト)になりたかった訳じゃないけどこうして目に見えて人の役に立てるのはやっぱり良いなぁ……癒して戦う戦神官(バトルプリースト)、そういうのも格好いいよね!?


 と、治療も終わったし戻ろうとした僕の手を残念イケメンが両手で掴んで来た。

 PvPの結果に全てを委ねるとか言ってたと思うのにまだ何かする気か?

 マヤも慌ててこっちに駆けつけようとしている。


「ありがとう! ありがとう姫よっ!! 御前で敗北した情けない私にまで癒しを与えてくれるその優しさにこの薔薇の騎士、心を打たれました! 私の忠誠は永遠に姫の物です! 未だ力及ばぬ我が身なれど何時の日か姫を守れる力を身に付け、馳せ参じます!」


 残念イケメンが涙を流しながら熱く語ってる。

 ごめん、正直引く。物凄く引く。忠誠なんて要らないから永遠に馳せ参じないで欲しい。

 というか僕は姫じゃない。


「あー……えっと、まず聞いて欲しいんだけど、僕はおと――」

「私の力が姫の騎士に相応しいレベルになるその日まで、どうかお元気でっ!! おさらばですっ!!」


 だから人の話を聞けっ!!


 結局まともに会話すら出来ず残念イケメンは颯爽と去って行った。何だったんだろうアレ……。


「ユウって昔からああいうのに好かれるわよね」

「なんか僕が悪いみたいになってる!? 心外だよっ!?」

「ユウちゃんはもっと気をつけなきゃダメよ?」

「むしろ僕はアレに対して何に気をつければいいのっ!?」

 マヤもソニアさんも何気に酷いんじゃなかろうか?




 ともあれよく解らない残念イケメンの乱入で中断させられた討伐クエストの受注も無事完了し、ソニアさんにお礼を行って僕はマヤと王都南平原に向かった。

 ソニアさんがやたらと心配してくれてたけど、僕だって冒険者、スライム如きに負けません。

 城門をくぐり、広い平原を眺めて思う、そう改めてここから僕の冒険譚は始まるのです!!


「まぁユウは私とパーティ組んでるから、私がゼリースライムを倒していけば自動でユウにもパーティ分配経験値とクエスト達成の経験値が入るんだけどね」

「何それ!? 僕戦えないの?! 嫌だよ、そんなヒモ男みたいな生活!!」

「ユウが望むなら別に私が飼ってあげる事は吝かじゃないけど?」

 人差し指を顎に当てて、こてんと首をかしげるマヤ。


「だから嫌だって言ってるよねっ!?」

 ヒモ男の冒険譚て誰も読みたがらないよね、僕も読みたくない。ましてや自分がそんな主人公になりたくない。


「でしょうね、勿論そんな事しないわ。レベルを上げるだけならそれでも良いんだけど……セカンドアースって、それだけじゃ強くなれないっぽいし。」

 よかった、僕もちゃんと戦えるらしい。たとえ命が懸かっているとはいえ、誰かに依存して生きるなんて高校生男子として絶対ダメだ。


「でもレベル上げ以外で強くなるって……あ、装備か」

「50点。勿論装備も重要だけど、一番大事なのはスキルの熟練度とアバター操作の習熟度、そしてこればっかりは実戦で鍛えないと身につかないのよね」


 マヤはそう言いながらさっき折れたのと別のブロードソードを取り出して物凄い勢いで振り回した。

 刃が風を切る音が格好いい。これが習熟度の結果なのかな?

 そういえばマヤはよく授業中もペンを指先で回してるのが好きだったなぁ。


「アバター操作の習熟度は何となくわかるけど、スキルの熟練度って? そんな表記ないっぽいけど……」

 自分のステータスを眺めてもスキルの項目にそんな説明はない。個別経験値的な欄も見あたらない。

「うん、ステータスに載ってないし、推測でしかないんだけど……有志による実験結果だからかなりの確率で存在してる筈の物なの。」


 曰く、同じレベル、ステータスでもスキルやアーツの威力が変わる。普段と違う発動をする事があるのだという。

 その事に気付いたプレイヤーが何度か実験を行い、それを元に推論を掲示板に投稿した。

 それは「スキルやアーツは何度も使う事によって威力や発動のタイミング、ディレイ、効果範囲等をある程度の範囲で調整出来るようになる。」というものだった。

 つまりスキル個別に熟練度のような隠しパラメーターがある、という結論だ。


 しかしこのスキル熟練度、どうやらアバター習熟度とも密接に関わっているようでむやみにスキルやアーツを使えば上がる、という物でもないらしい。

 その事がわかってから一部のプレイヤー達は一つ一つの戦闘で如何にアーツを磨くか? という事を念頭にモンスター狩りを勤しんでいるのだと言う。


「だから『自分の身が守れる位強くなる』事が目的のユウはただレベルを上げるんじゃなくて、スキルの熟練度やアバター習熟度を上げる為に自分で戦う必要があるの」

 なるほどそういう事か。


「おーけーおーけー! 元々そのつもりだったし! 僕の天才的神業戦闘を見せてあげようじゃないか!」

 ふっふっふ、レベル1にして森狼(フォレストウルフ)から見事逃げ切ったのは伊達じゃない!

 しかも今の僕には愛刀鬼斬り丸まである! 恐れる物は何もない!!



 可哀想な獲物はすぐに見つかった。

 直系30cm程度……バスケットボールより少し大きいくらいだろうか? の薄桃色の半透明な物体。メッセージウィンドウに『Lv2ゼリースライムエンカウントしました。』の文字が出ている。

 中央に核っぽい物があるけどアレが弱点なのかな?


 僕は木の棒を正眼に構え、ゼリースライムを睨み付ける。ゼリースライムには顔も目もないから視線がぶつかる事はないけど。


「必殺!!唐竹割りっ!!」

 振り上げた木の棒を気合いと共に振り下ろす! 木の棒は見事ゼリースライムの核に命中し、砕け散る核、飛び散るゼリー――


 ――という事にはならず、ゼリースライムは僕の攻撃をぴょんと横に躱す。身体がぷるるんと揺れて可愛い。

「ええい、たぁ! やぁ! はぁ!!」

 躱された悔しさで更に木の棒を振り回して追撃する。けどゼリースライムは器用にぴょんぴょんと木の棒を躱す。意外とすばしっこい。


「はぁ……はぁ……はぁ……当たらな、げふっ!!」

 息が切れて一息ついた瞬間に反転したゼリースライムのタックルが僕のみぞおちに命中しそのまま押し倒された。

 それでも何とか痛みは我慢出来た。ウィンドウの表示ではHPが2減っている。ゼリースライムが弱いのか新しいローブの防御力のお陰か、多分両方。ありがとうコテツさん。

 この程度の痛みならなんとか戦える、そして目の前にはゼリースライム。


「ゼロ距離では避けられまい!! 肉を切らせて骨を断つ!! 食らえ必殺!!」

 ゼリースライムの核めがけて何とか木の棒を突き入れようとした瞬間、ゼリースライムが震えて――


 弾けた。


「え?」


 いや違う。球体、というか饅頭型だったゼリースライムが僕の身体にまとわりつくように広がっていた。


「って、いや、ちょっと!? 待って!! 何これっ!」


 全身に薄くまとわりつくゼリースライム。僕のお腹の辺りに核があるっぽいが、両手両足にもゼリースライムがまとわりついてまともに動かせない。

 しかもギリギリと全身を締め付け始め、1づつゆっくりとHPが減って行ってる……。


 なんとか抜けだそうと藻掻くけど僕の筋力で振り解ける訳もなく、むしろ締まって行ってる気がする。


「いや待てっ!! 服の中に入ってくるなっ!! ちょっそこはっ!? このゲーム一般向けでしょ!? 何でこんなエロい動きし始めてるのっ?! マヤ、ちょっと助けっ」


 色んな意味でピンチなんだけど横にいるマヤは嬉しそうな笑顔で僕を見ているだけで動こうとはしない。

 あぁわかってた。マヤはこういう奴だ。こういう時、僕が苦労してる様を嬉しそうに見てる奴だ。

 しかしもうHPが無くなる……このままじゃ本当に死んじゃうかも……。


「ひっ……治癒(ヒール)っ!!」


 間一髪口元を覆うゼリースライムを避けて回復する。けど拘束されたままだから又HPがジリジリ減っていく。

 あれ、コレ詰んだんじゃ無いだろうか?


「だ、だめぇ……も、もう……うぐぅっ! ……ひ、治癒(ヒール)っっ!!」




 その後、ゼリースライムにいいように全身を弄ばれ、何度か治癒(ヒール)をかけながらも絞め殺されそうになった所で、見てるのに飽きたのかマヤがゼリースライムの核を破壊して助けてくれた。


「大丈夫? 怪我してない? 治癒(ヒール)で足りないようならポーションもあるけど飲む?」

 僕の側に寄って抱き起こしてくれるマヤ。

「えっと……た、助けてくれてありがとう」

「いいのよ。でも折角の綺麗な肌なんだから、あまり怪我をしちゃダメよ?」

「そう思うならもっと早く助けて欲しいんだけど……」


 助けて貰っておいてなんだけど、つい涙目で訴えてしまう。


「そもそもどうして戦う前に自分に祝福(ブレス)加速(アジリティアップ)を使わなかったの?」

 小首を傾げてマヤが言った。



 ……うん、忘れてた。


マヤの描写を少し追加。


**

どうでもいい話だけど今回の内容について。

必殺唐竹割りはアーツではなくただの面打ちです。


**

ついでに頂いた感想でお返事した無くてもいい解説を一応此処でも


第四話でユウとマヤはパーティを組んでおり、お互いにHP/APを確認できる状態にあります。

そしてマヤはゼリースライムの攻撃力も、締め付けによるダメージも把握しており、自分が一撃でゼリースライムを倒せる事も確認してるので、

マヤはユウのHPギリギリまで安心してスライムプレイを視姦できたというわけです



うん、やっぱりマヤへのフォローになってないか……

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