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ボクだけがデスゲーム!?  作者: ba
第五章 クランの争乱

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第99話 会議の前に出来る事。

 結局ジョニーさんと『クラン会議』の目的がわからないから、思いつく限りの事はしておこう。という事になった。

 前日の出来る事は済ませ、同じく招待状を貰ったアンクルさんに助力をお願いする。


 夜が明けたらまず冒険者ギルドへ行って、ソニアさんと相談して一角獣(ユニコーン)についての許可申請も済ませた。

 ソニアさんが居なければ終わらなかったと思う。


 更に大神殿に向かい、神獣を保護飼育している旨を伝えてお墨付きを貰う事で更に完璧にしようと思ったのだけど、それは少し失敗したかもしれなかった。


 担当の人にホームに来て貰って確認して貰うつもりが、『神獣が居るなら』と見たい行きたいという神官さんが物凄い数手を挙げたのだ。


 勿論そんな大人数をホームに連れて行く訳にもいかず、暫くバタバタした結果、偉い人が出てきてくれて、


「神獣様に心労を与えてはならない」


 と鶴の一声を出して貰うまで収まらなかった。

 結局『鑑定』を持つ神官さんが1人選ばれてヴァイスを確認してくれて事なきを得たけど、混乱させない為に行ったのに反省だった。


 でももし何の許可もせずに街中をヴァイスと歩いていてこんな騒ぎになっていたら……と思うと恐ろしくなる。

 そう思えば今日ちょっとだけ混乱した事もむしろ良かったのかもしれない。

 何事も経験だよねっ! うんっ!


 そうして結局夕方近くまでヴァイスの処理に追われて、もう数時間で『クラン会議』の時間になってしまった。

 今日一日走り回ったお陰で書類も揃ったし、これでヴァイスが追われたりする事はないと思うけど……結局僕自身は何の準備も出来なかった。

 ……何を準備していいのかわからないけど。




「さて……じゃあ、そろそろユウ君の準備しましょうか」

 会議がある為少し早めに軽めの夕食を摂って『クラン会議』に向けてリビングで気持ちを昂ぶらせていると、サラサラさんが手を叩いて不意にそう言った。

「あいあいさー!」

 ルルイエさんがテキパキと何やら道具……絵の具? みたいなのを並べている。


「えっと……僕の準備って?」

 何も聞いてなかった僕は首を傾げる。

 マヤやコテツさん、ノワールさんやホノカちゃんも同様だ。

 ヴァイスはリビングの端でくつろいでいる。


 絵の具みたいなのを並べてるって事は絵でも描くのかな? でも僕、絵下手だけど……。


「勿論、ユウ君に化粧(メイク)をするのよ」

 笑顔で謎の道具を両手に持ったサラサラさんが当たり前のように言った。


「え? めいく?」

「そ、お化粧」

「お化粧って……え?」


 お化粧って……あれだよね? お化粧だよね?


「って、いらないよっ!? 何で化粧するのっ! 僕、男だよ?! 健全な高校生男子だよっ!? 化粧なんて最も遠い物だよねっ?!」

 慌てて飛び上がってにじり寄っていたサラサラさんとルルイエさんから離れた。


 確かに過去何度か冗談半分にマヤやクラスの女の子やお母さんに化粧された事はあるけど、それは黒歴史だし、思い出したくもない物だ。

 だいたい男の顔に化粧してもキモくなるだけじゃないか。


「あらあら、今の世の中、男の子も化粧(メイク)して当たり前の時代よー? ユウ君も聞いた事あるでしょ?」

「えっと……言われてみれば……」


 確かに雑誌とかで『男のモテメイク』とか『キメる男のメイク術』とか見た事があるような気がする。


「男の子が化粧(メイク)するのは、全然変な事じゃありません! むしろしない男の子が変なのよー?」

「そ、そうなの?」


 うぅん……で、でも……やっぱり男が化粧するのって何だか抵抗があるような……。

 そもそも何で突然化粧とかって話になってるんだろう?


「なんやユウっちわかってへんなぁ……これからユウっちが行く場所は何処や?」

 悩んでいる僕を見て、ちっちっち、と筆? を振りながらルルイエさんが芝居がかったため息をついた。


「えっと……『クラン会議』?」

「そう、会議や! 会議っちゅうんは言葉の戦争やっ! そこで戦うんやったら、戦う男やったら、戦化粧くらいするべきやないかなっ!?」

「!!!」


 た、確かにそうだ! これから死地に赴く戦士が戦化粧をするっ!

 それこそ男がするべき事じゃないかっ!


「そ、そっか! そうだよねっ! えっと、じゃあ、お願いしますっ!」

「うんうん、分かってくれたんやったら嬉しいわぁ」

 嬉しそうに何度も頷くルルイエさん。


「それじゃ、腕によりをかけて頑張っちゃうわね~」

 サラサラさんも本当に嬉しそうだ。


 僕は何も分からないので、椅子に座って全てを2人に任せて目を閉じた。


「うっわ、何コレ!? 化粧水使わんでも肌ぴっちぴちやんっ!? キメも細かいし、前々からそうやないかとは思っとったけど、こんなんチートちゃうっ!?」

「ホント、すごいわねー。普段全くスキンケアしてない筈なのにこんなのズルよねー」

「ファンデなんかせんでも綺麗な薄桃色やし、あぁ食べてしまいたくなるわぁ」


 な、なにやら不穏な声が聞こえてくるのは気のせいだろうか?


「ビューラーも付け睫毛も無くてもこんな長いってどういう事っ!? これが天然モノっちゅう事かっ!?」

「でも更にアイラインをこうして……」

「おおっ! 更に魅力が……」

「ふふふ……よね、ちょっとアイシャドウをこうして……」

「ふおおおっ!」

「リップはやっぱりピンク系で……と……」

「マジなんっ!? コレマジなんっ!?」


 聞いていても何をしているのか分からないけど、どんどんルルイエさんのテンションが上がっていく声だけが、僕をどんどん不安にしていった。


 そうして結構な時間サラサラさんの赴くままに化粧を施された。


「これで完成よー」


 全てが終わった時サラサラさんは何やら満足そうにやり遂げた顔をしていた。

 ルルイエさんは叫びすぎて疲れた顔をしている。


「えっと、あ、ありがとうございます」

「会心の出来よっ! どうっ、みんなっ!」


 サラサラさんがくるりと僕の座る椅子を回転させて、マヤ達にお披露目する。

 化粧中は「邪魔になるから」とサラサラさんが皆を遠ざけていたのだ。


 集まっていた皆の目が点になり、呆けたように口を開けた表情が並んでいた。


 な、なんだろうそのリアクション……もしかして戦化粧ってそんな酷い有様なんだろうか?

 リビングでの化粧だったから鏡もないし自分では確認できてないんだけど……。


「えっと……ど、どうかな?」


 とりあえず笑顔を作って皆に尋ねる。


「……え、ええ、い、いいいい、いいんじゃないかしら?」

「こりゃすげーな。ここまで化けるか」

「ユウ、すごい」

「ま、まままま、まぁサラサラさんの化粧なら、こ、これ位当然よよよねっ! そ、その程度でいい気になってるんじゃないわよっ!!」

「ブルルルゥッ」


 何故か顔を背けるマヤ。頬を引きつらせてるコテツさん。いつも通り無表情なんだけど眉がぴくぴくしてるノワールさん。いつも通り怒ってるホノカちゃん。嬉しそうにすり寄ってくるヴァイス。


 視線を向けると何故か皆、僕から目線を逸らすし……顔が赤くなったように見えるけど……もしかして笑うの堪えてる?


 サラサラさんは一体どんな化粧をしたんだ?

 2階の洗面所に行けば鏡はあるけど……みたいような怖いような……。


「さ、そろそろ時間だし、『冒険者ギルド』に行きましょうか」

 手を叩いて皆を急き立てるサラサラさん。


 いつの間にか随分時間が経っていたようだ。顔を見る為だけにわざわざ2階に行く必要はないか。どんな面白化粧してたとしても所詮僕の顔だし。

 さすがにサラサラさんも皆もこれから『クラン会議』に行くのに悪ふざけみたいな化粧は施してないだろうし。


 僕はいつもの猫耳フードを被って、我先にと玄関へ向かった。


 フードを被った瞬間、ルルイエさんから何やら残念がるような声が聞こえたけど何だったんだろう?




 冒険者ギルドへは皆でやってきた。

 勿論『クラン会議』には僕とサラサラさんしか行けないけど、場所が『冒険者ギルド』の会議室なのだから、他のメンバーが1階のカフェスペースに居る事は出来る。

 不測の事態に備えて全員が1階に待機していよう、と話し合ったのだ。


 冒険者ギルドに入ると遅めの時間なのにいつもより人が多いように感じられた。

 他の『クラン会議』参加クランの人達が僕達みたいに待機してるのかもしれない。


 そしてその中に見知った顔、『白薔薇騎士団』のリリンさんとダムさんが居た。


「あ、リリンさんっ! ダムさんっ!」


 フードを外して2人に手を振る。

 と、2人も僕に気付いてくれたのか、こっちを向き一瞬笑顔になった……かと思ったら驚きの表情で固まる。


「……ゆ、ゆゆゆゆ、ユウ様?」

「う、うん。そうだけど……」


 まるでロボットのようなぎくしゃくした動きで近づいてくるリリンさん。


「あああ、くきく、ききょうは、どどど、どうさされたのでですか?」


 口調までロボットっぽい。本当にどうしたんだろう?

「えっと、アンクルさんから聞いてないかな? 夜会があるとかで僕も呼ばれて」

「そそれは、きいてますっ! けっけっけど、その、そのお顔は」

「あぁ。出掛けにサラサラさんにちょっとして貰ったんだけど……変かな?」

「変じゃないですっ!!」

「ひぇ!?」


 突然再起動したように物凄い勢いで叫ぶリリンさん。ちょっと怖い。


「……なるほど、分かりましたっ! ユウ様のお覚悟っ! このリリン、命を賭けてユウ様をお守り致しますっ!!」

「あ、えっと……うん……うん?」


 なんだかリリンさんがアンクルさんみたいになってしまった。

 何がわかったのか僕にはよくわからない。


「貴女なんて居なくてもユウは私が守るから別にどっちでもいいけどね」

「もっと大局を見るべきですね。ユウ様を完璧にお守りする為ならば大嫌いな貴女とだって私は共闘できますっ!」

「そうね、弾避け位にはなるかしら」

「それこそ貴女の仕事でしょ?」

「その仕事も出来ないんじゃ貴女は何の役に立つのよ?」


 歯ぎしり死ながら睨み合うマヤとリリンさん。

 なんで2人っていつもこんな仲が悪いんだろうなぁ……やっぱりPVP(プレイヤーバトル)トーナメントで戦ったのが尾を引いてるのかな?

 殴り合って綺麗さっぱりって訳にはいかないのかもしれない。


 止めるべきか、どう止めようか……でも女性同士の口論に口を挟むと180%の確率で男が悪い事になって怒られるし……うーん……。


「ユウちゃんっ!」


 どうしようか思案していた僕を聞き慣れた声が引き戻した。

 しかしその声は居るはずのない声だったので少し首を傾げる……が、目線の先にはやはりその声の主が居た。


「えっと、ソニアさん? 今日は朝からでしたしもうお仕事終わってる時間じゃ無かったでしたっけ」

「そうだけど、ユウちゃんが大変って事だから無理言って残らせて……貰って…………」


 近づいてきたソニアさんは振り向いた僕を見て動きを止めた。

 って何度目だコレ!?


 サラサラさんだから大丈夫と思ってたけど……本当にこの化粧大丈夫なんだろうか?

 もしかして『ヒゲ』とか『肉』とか『瞼に目』とか書かれてたりしないだろうか……? か、確認するのが怖い……。


 一瞬止まったとはいえ、リリンさんと違ってすぐに普段通りに戻ったソニアさんは僕の両肩を掴んで僕の目を見つめる。

 至近距離で美人のお姉さんに見つめられるのは……その、想像以上の破壊力で赤面してしまう。

 ソニアさんも少し頬に朱が差してるように見えて色っぽい。


「ん、うんっ。良い? ユウちゃん、何かあったらまず悲鳴を上げるのよ? すぐ『冒険者ギルド』の権限で介入するからねっ? 少しでもおかしいと思ったら大きな声を出すのが第一だからね?」


 初めてのお使いに行く子に言うようにソニアさんが何やら物騒な事を口にする。


「えっと、た、ただの会議だし、大丈夫……だと思うよ?」

「その油断が命取りになるのよっ! 危ないと思ったらすぐ悲鳴っ! いいわねっ!?」

「は、はひっ」


 物凄い剣幕につい頷いてしまった。

 そんな事にはならないと思うんだけどなぁ……。


「宜しい。じゃあ……本当に気をつけてね」


 そう言って優しく僕を抱擁してくれたソニアさんは、僕を階段へと案内してくれた。


「階段を登って、一番奥の部屋が第3会議室よ」

「ありがとう、ソニアさん。行こう、サラサラさん」


 サラサラさんと一緒に2階への階段を上る。

 皆に見守られているから恥ずかしい所は見せられないけど、正直足取りは重い。


「ごめんねユウ君」

「? 何がですか?」


 なんでサラサラさんが謝るんだろ?


「本当ならこんな『招待状』、有志の集まりで何の強制力もないんだから無視しても良いのに……でも大手クランが集まりはそれだけの数と力があるから、今後面倒な事にならない為にもちゃんと相対して、話を付けてしまいたい。

 相手が『変人』と噂される人なら尚更。……でもこれは『銀の翼』のクランリーダーとしての気持ちでもある。

 だから、私の我が儘に付き合ってくれているユウ君には謝っておきたかったの」


「そんなのいいですよ。僕も『銀の翼』の一員です。『銀の翼』の為だというのなら、それは僕の為でもある事だし、一緒にがんばりましょう」

 隣を歩くサラサラさんの手を取って本心を伝える。

 一瞬サラサラさんの歩みが止まり、また動き出し、僕達は第3会議室の扉の前に着いた。


「……ありがとう、ユウ君。『銀の翼』の為とは言ったけど、勿論全力でユウ君の事も守るから。ユウ君は隣で笑顔で居てね」

 そう言ったサラサラさんはいつもの笑顔に戻っていた。

「はいっ」

 釣られて僕も笑顔になる。


「うんっ! その笑顔ならどんな相手もイチコロよ」

 ニヤリと笑うサラサラさん。

 それはいつもの笑顔とはちょっと違うと思ったけど、それはそれで味方なら頼もしい笑顔だった。


 僕の笑顔にそんな力ないと思うけど。







ウィリーの名前をジョニー・ジョーカーに変更。

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