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ボクだけがデスゲーム!?  作者: ba
第五章 クランの争乱
102/211

第98話 ランキングと会議。

「そっか、ユウちゃんはまだクランに入ってないんだっけ」


 横で聞いていたソニアさんが思い出したようにそう言った。


「うん、『銀の翼』は……なんだっけ? 『仮加入』状態?」

「なら知らないかもしれないわねー」


 良かった。知らなくてもおかしくなかったのか! 聞いても何も恥ずかしい事じゃなかった。

 ……ここにホノカちゃんが居たら又「そんな事もしらないの?」って馬鹿にされてた気がするけど。居なくて良かった! 


「『第二位』というのは『クランランキング』の事よ」

「クランランキング? ……クランにランキングがあるの?」

「ええ。冒険者ギルド、商人ギルド、生産者ギルド、あと王国が共同で審査を行って登録されている『クラン』の順位付けを行ってるの」


 へぇ……そんなのがあったんだ。そういえばこのゲームって大規模PVP(プレイヤーバトル)とかは出来ても領土の奪い合いみたいなクラン戦は無いと思ってたけど、ランキングで競ってたんだなぁ。


「あ、じゃあもしかして『第八位』の白薔薇騎士団って……」

「ええ、先日の『転職祭』以降で我等白薔薇騎士団のクランランキングが八位になったという事ですな」


 すごいっ! さすがアンクルさんだっ!

 白薔薇騎士団って全体で見ても上位クランだったんだなぁ。


「おめでとうございますっ!」

「ありがとうございます。これも全てユウ様のお陰ですよ」


 そう言って微笑むアンクルさん。だけど僕は白薔薇騎士団に何もしてないし、全部アンクルさん達の活動の結果だと思う。『転職祭』でトーナメントに優勝して有名になってるだろうし。


「そういえば『銀の翼』は何位なの?」

「22位よ」

「す、すごいのかどうかわからない微妙な順位だね……」

「少人数クランとしてはすごい方じゃない? あんまり興味ないけど」


 マヤに『銀の翼』の順位を教えて貰って、22位という喜んで良いのかわからないポジションにちょっと困る。

 僕も別にランキングとかに興味はないけど……やっぱり自分の所属してる場所が皆に評価されていたら嬉しいし。


「少人数、って事は人数もランキングに関係するの?」

「そうねー。審査の細部は秘密になってるけど……大まかにはクランの人数、所属メンバーのレベル、ダンジョン攻略率、モンスター討伐率、アイテム獲得率、(アース)獲得数、クエスト達成率、イベント達成率、PVP(プレイヤーバトル)の勝率、『転職祭』なんかの入賞、あと違反者、処罰者の人数、とかがポイントね」


 ソニアさんが指折りながら教えて教えてくれた。

 結構色んな所がチェックされてるっぽい。

 そういえば冒険者ギルドだけじゃなくて生産者ギルドや商人ギルド、王国まで審査に協力してるんだっけ……でも確かに審査項目を聞くと人数が多い方が有利な条件に聞こえるかな?

 人が増えれば違反者や処罰者が増えるリスクはあるかもだけど……そんな悪い人が多くはないと思うし。


「まぁ要約すると、クエストを受注して、ダンジョンに行って、モンスターを一杯倒して、レアアイテムを持って帰っていればクランランキングは上がるのよ」

「なるほど。確かに『銀の翼』はあんまりダンジョン攻略は多くないね」

「コテツさんとかはソロで行ったりしてるみたいだけどねー」

「へー」


 そういえばコテツさんはソロ狩りも好きな人なんだっけ。

 ソロでダンジョン攻略かぁ……いいなぁ。僕も斧を振り回して1人で危険なダンジョンでモンスターに立ち向かい、ボスモンスターを撃破とかしてみたいなぁ。

 司祭(プリースト)じゃ無理かなぁ……。


「まぁ今はそんな事より『招待状』の方ね。クランランキング『第二位』の『新羅万将』が名指しで『銀の翼』とユウにちょっかいをかけてきた事。……ふふふ、私達にケンカを売ったらどうなるか、例え『第二位』だろうが思い知らせないとダメよね……」


 マヤの言葉は最後の方は小声だったけどハッキリ聞こえた。流石に自分のクランが対象だと怒りを隠しきれないようだ。

 ……普段から隠してないけど。


 マヤの呟きを聞いてノワールさんは真面目な顔で頷き、ソニアさんは心配そうな顔をしている。


「まだケンカを売られた、と決まった訳ではないですが、警戒は必要でしょうな。我々白薔薇騎士団も今後の対応を検討しますのでそろそろ失礼しましょう。『銀の翼』との摺り合わせは其方のリーダーが戻り次第という事で」

「ええ、わかったわ。よろしく」


 そう言うとアンクルさんは立ち上がり僕の前に来て片膝を付いた。


「折角のユウ様のお茶会でしたが帰らねばなりません。申し訳ありません」

 深々と頭を下げるアンクルさん。正直凄く困る。あ、シェンカさんがちょっと僕を睨んでるっ!?


「だ、大丈夫ですから、顔を上げて下さいっ! こんな状況じゃお茶会も続けられないですし、もうお開きにしますからっ」


 じゃないとアンクルさんのせいでシェンカさんの中での僕の株が大暴落しちゃうよっ!?

 そもそも無理言ってお茶会に来て貰ったのは僕の方だし。


「ありがとうございます。ユウ様の広いお心、このアンクル・ウォルター感謝の極みっ」


 そんなのは極めなくて良いと思う。


 結局その流れでお茶会はお開きとなり、アンクルさんとシェンカさんが、ソニアさんとタニアちゃんが一緒に帰って行った。

 マヤは忙しそうにどこかに連絡を入れていて、一方ノワールさんとヴァイスは残ったパンケーキに舌鼓を打っている。


 そうしてる間に日が沈み、1人、また1人と『銀の翼』のメンバーがホームへと帰ってきた。




 最後にサラサラさんがログインしてリビングに降りてきて、夕食を摂りながら会議をする事になった。

 ちなみに今日の献立はソニアさんが持ってきてくれた美味しい牛乳が残っていたからシチューだ。


 良い素材を使っただけあって、結構な自信作だけど残念ながら食卓の議題があんまり楽しくないのが残念だ。


 手を合わせて「いただきます」と言ったあと、サラサラさんは受け取った『招待状』にざっと目を通して、それを皆に回した。


 そこに書かれていた事はアンクルさんが受け取った物と大差なかった。

 が、そこには大きく違う一文が追加されていた。



――――――――――――――――――――――――――――――

 第二十二位 『銀の翼』 サラサラ様


 明日21時、『冒険者ギルド』第3会議室にてクラン会議を執り行います。

 クランリーダー、もしくはその全権代理人一名と、プレイヤー『ユウ』様の参加をお待ちしております。


 議題:『銀の翼』とプレイヤー『ユウ』様について。



          第二位 『新羅万将』 ジョニー・ジョーカー

――――――――――――――――――――――――――――――



「あ、僕も参加するんだ」


 スプーンから手を放して僕は何となく呟く。

 何度か読み直したけど確かに僕も参加するように書かれている。

 自分の事みたいだし、ちゃんと僕も参加出来ると知って良かったような悪かったような。


「ダメよユウ、危険だわ」

「そうよ、ユウが行く必要ないわっ!」

 同じように文面を見たマヤとホノカちゃんが即座に否定した。


「え、でも『冒険者ギルド』内だし危ない事とかは無いんじゃ……」

「血に飢えた狼達の中に兎が一匹迷い込むような物よ。ユウはもっと男が狼な事を自覚なさい」

「知ってるよ!? その例えだとむしろ狼達の中に狼が迷い込むだけじゃないかな!?」

「ユウも所詮男なんだ、サイテー」

「いや、ホノカちゃん、そういう事じゃなくてさっ!?」


 僕だって健全な高校生男子なんだから男が狼になっちゃう仕方ない事情も理解出来る。

 そしてマヤから例えとはいえそういう話を聞いてしまったら、高校生男子として女性であるサラサラさん1人を狼達の中に見送るなんて出来る訳もない。


「危険かどーかは知らねーけどさ、そもそも『クラン会議』ってなんだ?」

 最後に『招待状』を読んでサラサラさんに戻したコテツさんがパンを囓りながら皆に聞く。


「名前からしてクラン同士の会議、なんでしょうけど……」

 コテツさんだけでなくサラサラさんも知らないらしい。

 知らないのが自分だけじゃないと知るとちょっと安心しちゃうのは僕だけだろうか? それが何の解決にもならないのはわかってるけど……。


「あ、ウチ聞いた事あるよ?」

 パンを一口大に千切ってはシチューに浸して食べていたルルイエさんが手を挙げる。


「さすが『(シノビ)』のルルイエね」

(シノビ)すごい」

「職業は関係ないんちゃうかな!?」


 ルルイエさんにマヤとノワールさんが賞賛したが何故か褒めたように聞こえなかったのは僕だけじゃなかったようだ。


「まぁええわ。『クラン会議』やっけ。確かクランランキング上位8位やったかの代表が集まって、クラン同士のローカルルールを決める話し合いの事やね。それを『クラン会議』とか夜中にゴソゴソやる事から『夜会』とか呼んでるって昔聞いた事あるわ」


 へぇ……そんなのがあるんだ。でも……

「ローカルルールって何?」

「ん? んー……何て言うんかなぁ……ゲームシステム的に可能で、テラ王国の法的にも抵触しない範囲で、でもプレイヤーとしてやったらアカン事、した方がええ事、とかの事かな?」


「出来るけどしちゃダメな事?」

「例えばモンスターの横取り、大量のモンスターを連れ回す事なんかが代表的な事ね」


 首を傾げた僕にマヤが説明してくれた。


「まぁ普通横取りはダメやけど、ピンチなプレイヤーを助けるんはエエ事やし、MPKはダメやけど大魔法でモンスター倒すんやったらある程度モンスターまとめた方がええし、システムや法律で決められへんグレーゾーンをどうするかってのがローカルルールって事やね」


 ルルイエさんの言葉を聞いてサラサラさんがぽんと手を叩いた。

「そう言えば聞いた事があるわね。上位クランで話し合って『フィールドやダンジョンを特定クランが占拠する事の禁止』『特定アイテムの買い占め、独占の禁止』とか決めて、掲示板やWIKIで流布してるんだっけ」

「そういやテストサーバー時代にそんな事した馬鹿が居たんだっけか。それで『クラン会議』とやらは出来たのかね」

「やと思うよー」


 どうやら昔から存在していた会議らしい。


「そういう事なら『クラン会議』に行かない、って選択肢はダメなのかしら?」

 『クラン会議』の事を聞いて暫し考えていたホノカちゃんがサラサラさんに尋ねた。


「そうね~。せっかく参加出来る権利を蹴っても良い事はなさそうね。逆に知らない場所で勝手に色々決められて、それが多数決で押し付けられてゲーム内で住みにくくなっても困るしね」


 ゲーム内とはいえ人間同士の事だからこういう柵って難しいのよね。とサラサラさんが呟いた。

 確かにこういう所はゲームでもリアルでも大差ないと思う。


 話を聞く限り『クラン会議』自体はゲームにとってもプレイヤーにとっても良い事みたいだし良いんじゃないかな?

 でも……。


「そんな『クラン会議』が僕に何の用なんだろう?」


 僕の問いに首を傾げる皆。

 僕自身も正直心当たりが全くない。


「やっぱり外見の問題じゃないかしら?」

「装備かねぇ……さすがにちっとばかしやり過ぎたか?」

「ごはん、おいしい」

「ウチが知ってる所やと歌唱コンクールも結構お祭りになったんよね」

一角獣(ユニコーン)捕獲(テイム)せずに連れてきた事かも~?」

「ブルウゥッ」

「ユウ、あんた心当たり多すぎるんじゃないの?」

「そんな事ないよっ!? 明らかに冤罪じゃないかなっ!?」


 結局何が呼び出しの原因なのかも分からず、今考えられる事、出来る事をやって『クラン会議』に備える事になった。






 

ウィリーの名前をジョニー・ジョーカーに変更。

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