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ボクだけがデスゲーム!?  作者: ba
第五章 クランの争乱

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第97話 変人。

「夜会……ですか?」


 夜会ってパーティーの事だよね? サラサラさんは分からなくもないけど、なんで僕?


「ああ! 『夜会』と言ってもそんな大層な物ではありませんよ。ただプレイヤー達の活動時間に合わせて夜に集まってお喋り等をしよう、というだけの事なのです」

 あたふたと手を振りながら説明するジョニーさん。


 なるほど、それなら……やっぱりわからない。


「えっと、なんで僕に?」

「それは勿論っ! 貴女が今回の主賓だからですよ」


 そう言ってジョニーさんはステッキを脇に抱え、胸元から2通の封筒を取り出した。


「まぁ詳しくはこの招待状に記してありますので、『銀の翼』クランリーダーのサラサラ様にお渡し願えないでしょうか?」


 そう言って一通をマヤに手渡す。

 僕はマヤに羽交い締めにされているから手も伸ばせなかった。


「リーダーに渡す事は了承しました。でもユウは行かないわよ」

 冷たい視線でジョニーさんを睨みつつそう宣言するマヤ。


 僕は行くとも行かないとも言ってないけど……なんて今言うとマヤに凄く怒られそうだし黙っている。それにマヤの言う通りどっちかといえば行かない方が良さそうな気がするし。

 君子危うきに近寄らず、なのだ。


「いえいえ、来ますよ。その招待状を読んで頂ければ必ず」

 自信たっぷりに言い切るジョニーさんに怪訝な表情をするマヤ。

 そんなはっきり言い切られると一層不安になってくる。


「と、そしてもう一通は丁度この場にいらっしゃった貴方様宛でございます」

 僕の不安を余所にジョニーさんはアンクルさんに向き直った。


「私にも夜会とやらの招待状を?」

「はい。『白薔薇騎士団』クランリーダー……いや、騎士団長でしたか、アンクル・ウォルター様。もしご都合宜しければ次の『夜会』に参加頂ければ幸いです」


 そう言って残っていた一通をアンクルさんに手渡し、ジョニーさんは一歩下がり、皆に一礼する。


「それでは何とか私も自分の仕事が終わりましたし失礼しま……」

 と言った所でジョニーさんが固まり、何処か一点を凝視している。


「?」

 羽交い締めにされたまま、僕は動く首から上を動かしてジョニーさんの視線を追ってみる……と僕の後ろを見てる?

 と言っても僕の後ろというとテーブルとお腹いっぱいになって眠っているタニアちゃん、タニアちゃんに付いてるソニアちゃん、あとヴァイス位しか……。


 って、ヴァイスは一角獣(ユニコーン)で神獣で『隷属の首輪』も付けてない状態だし、見る人が見ればいびっくりしても当然じゃないかっ!

 突然自分の話題になってすっかり忘れてたっ!


 ソニアさんは大丈夫って言ってくれたけど、まだ冒険者ギルドとか色々への根回しが終わった訳じゃないし、変なトラブルになったら嫌だし、どうしよう……何とか上手く誤魔化さないと……。


「ユウ様、1つ伺ってもよいですか?」

 視線を動かさずにジョニーさんが口を開いた。


「あ、あの、えっと、アレは……ですね、その……なんというか……」

「そうです、『アレ』です、あそこに見える『アレ』はっ!」


 どうしよう、誤魔化す上手いアイデアが浮かばないっ! ……そ、そうだ、普通の馬に角のコスプレって事でどうだろう? うん、それでいこう!


「あのっ! そう、アレはただのコスプレで……」

「『アレ』はあのパンケーキはユウ様がお作りになったのではっ!?」


 あれ? パンケーキ?

 首を必死で回すと確かにテーブルにはパンケーキが残っていた。


「あ、はい、えっと、僕が作った物です」

「やはり! いやぁ美味しそうなパンケーキですねぇ。私、スイーツに目がないんですよー」


 あ、なんだ、一角獣(ユニコーン)じゃなくてパンケーキを見てたのか。

 でもあんなに凝視する程って事はそんなに好きなのかな?


「いやぁ美味しそうだなぁ……良いなぁ……食べたいなぁ……」


 独り言のように呟き続けるジョニーさん。本当によっぽど好きみたい。残ってるのにこのままっていうのはなんだか申し訳なくなってくる。


「えっと……もし良かったら、残り物ですけど……持って行かれま……」

「良いんですかっ! ありがとうございますっ!」


 食い気味に物凄い笑顔で頭を下げるジョニーさん。

 もしアンクルさんとマヤが居なければ抱きついてきそうな程の喜びようだ。


 本当にパンケーキが好きなんだなぁ。

 どうせなら好きな人に食べて貰う方が僕も嬉しいし、まぁいっか。


「じゃあ、えっと、これ、どうぞ」

 そう言って僕はアイテムウィンドウに残っていたパンケーキをいくつか取り出して手渡……そうと思ったらマヤに取り上げられ、アンクルさんに渡され、アンクルさんからジョニーさんに届いた。


「ありがとうございますっ! 良いお土産が出来ましたよっ! メッセンジャーやってて本当に良かった!」


 満面の笑みでジョニーさんは誰かに奪われまいとしているのか、受け取ったパンケーキをすぐにアイテムウィンドウに仕舞った。

 そしてコホンと咳払いをしてシルクハットをかぶり直し、ステッキを一回転させてから、元の笑顔に戻り、


「それでは皆様、明日の『夜会』を楽しみにしております。では」


 改めて一礼をしてジョニーさんは去って行った。

 後ろ姿だけどステッキをクルクル回し続けてスキップまでしてる。

 よっぽどパンケーキが嬉しかったのかな? 口に合えば良いんだけど……。


「さて、サラサラ殿宛は開封する訳にはいかぬでしょうが、私宛でしたら問題ない」

 ジョニーさんの姿が見えなくなった後、緊張が解けてテーブルに戻ってお茶を淹れ直していると、アンクルさんがそう言いながらさっき受け取った封筒を開いた。


 何となく皆無言で、アンクルさんが読み終わるのを待っていた……のだけど、アンクルさんの表情が目に見えて曇る。


「えっと……そんな悪い事が書いてあったの?」

 僕にも関わる事らしいし、ポットを置いてアンクルさんに尋ねる。


「いえ、そういう訳ではありませんが……不吉な事には違いないかもしれませんな」


 そう言ってアンクルさんは招待状をテーブルの上に広げて皆に見せた。



――――――――――――――――――――――――――――――

 第八位 『白薔薇騎士団』 アンクル・ウォルター様


 明日21時、『冒険者ギルド』第3会議室にてクラン会議を執り行います。

 クランリーダー、もしくはその全権代理人一名の参加をお待ちしております。


 議題:『銀の翼』とプレイヤー『ユウ』様について。



          第二位 『新羅万将』 ジョニー・ジョーカー

――――――――――――――――――――――――――――――



 わからない事だらけだけど、とりあえず『夜会』というのは『クラン会議』の事っぽい。

 会議で、議題がある位だから話し合いがメインなのかな?

 でも僕についてってなんだろう……僕何かしたっけ……。


「『新羅万将』っ! そっか、ジョニーって聞いた事があると思ったら」


 僕が議題について考えていると、横から呼んでいたマヤが合点がいったように声を上げて歯がみをしている。


 新羅万将……どっかで聞いた事があるけど……どこで聞いたんだっけ……?

 確か最近……何かで……えーと……。


「あ、そうか、確かPVP(プレイヤーバトル)トーナメントの決勝に居たっけ」

「ええ、そうですね。トーナメント決勝にも居ました。ですが、本来『新羅万将』はダンジョン攻略系のクランなのです」


 うん、思い出した。確か一回戦で負けてたチームだったような。

 試合自体は白熱したし、最後相手の大魔法で敵味方問わず大爆発してたからよく覚えてる。


「あれ? でも試合でジョニーさんは出てなかったような」

 流石に僕でもあの派手な格好のジョニーさんを見忘れる訳が……ちょっと自信ないけど。

「出ておりませんね。まぁ『新羅万将』は大手クランですので出て無くてもおかしくはないかと」


 それもそっか、1チーム3人しか出れないんだしジョニーさんは自分の事をメッセンジャーとか言ってたし、クランの中でもあんまり重要なポジションじゃないのかも。


「攻略系大手クラン『新羅万将』、そのクランリーダー『変人』ジョニー・ジョーカー。すっかり忘れてたわ」

「クランリーダー!?」


 マヤの言葉につい声をあげてしまう僕。

 あんまりどころま一番重要なポジションだった。というかクランリーダーがなんで手紙の配達なんてしてるんだろう?


(わたくし)も噂は聞いておりましたが、実際に見るのは初めてでしたわ。彼があの(・・)『変人』なのですわね」


 どうやら驚いたのは僕だけで、シェンカさんも何か納得したように何度も頷いている。

 というか『変人』『変人』って皆ちょっと酷いと思うんだけど……。


「えっと……その『変人』って?」

「二つ名よ。有名なプレイヤーは大抵持ってるじゃない。『薔薇の騎士』とか『黄金の歌姫』とか。ユウだって持ってるでしょ? 『白き薔薇の巫女姫(・・・・・・・・)』って」

 マヤがわざわざ僕の名前を強調して口に出した。悪意があるようにしか聞こえない。


 でもそういえばそうだった。結構『二つ名』を持ってるプレイヤーって多いんだなぁ……知らないだけで他の知り合いも二つ名持ってる人居るのかな?

 僕としては自分のは早く消去したいのだけど、こういうのは一度知れ渡ると変えるのは難しそうだ。

 75日位がんばればなんとかなるだろうか?


「うむ、ユウ様に相応しい素晴らしいお名前です!」


 ……アンクルさんが居る限り無理そうな気がする。でも、それ以外はアンクルさんいい人だし困ったなぁ……。

 と、今は僕の事よりジョニーさんだ。


「でもさすがに『変人』はひどいような……」

「自分でそう言ってるらしいから仕方ないでしょ」

「自称なのっ!?」


 なら仕方ないけど……何故そんな酷い二つ名に……。


「まぁ行動も十分変わった御仁であるのは間違いないでしょう。噂ですが、生産職で生産スキル特化でありながら攻略クランを設立しただとか、スライムゼラチン欲しさに1人で三日三晩ゼリースライムを刈り続けただとか、全財産、装備全てまで売り払ってサトウさんの露店のお菓子を買い占めただとか、アイスクリームの為に雪山ダンジョンに単身突撃を繰り返しただとか……」


 指折り数えていくアンクルさん。

 どうやら筋金入りの糖分ジャンキーだよね!? ゲーム攻略というよりスイーツ制覇を目論んでるようにしか聞こえないよね!?

 そして少し共感できてしまう僕は『変人』と同じカテゴリに入っちゃうんだろうか? それはちょっと嫌だ……。


「『変人』でも、とっても危険」

「そうね。無茶苦茶な話しか聞かないけど、結果的に『新羅万将』は第二位の最大手クランの1つになったし、噂通りならジョニーは目的の為に『無茶苦茶』な手段も厭わない、って事だしね」

「ただの『変人』では第二位にはなれないでしょうな」

「『銀の翼(ウチ)』としてはサラサラさんへの手紙を確認後に対応を検討するわ。あんたの所にも招待状が来てるんだし、後で意見を摺り合わせましょう」

「それがよいですな」


 マヤとアンクルさんが何やら打ち合わせをしてる中、すごく口を挟みにくいけど、このままだとわからないまま進みそうで思い切って質問する事にした。

 聞かぬは一生の恥なのだ。


「えっと、マヤ、アンクルさん」


 僕の声にぴたりと会話を止め、此方を見る2人。うぅ、もっと自然な流れで聞きたかったんだけど……。


「その……手紙にもあったし、さっきから話してる『第二位』って……何の事?」






ウィリーの名前をジョニー・ジョーカーに変更。

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