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ボクだけがデスゲーム!?  作者: ba
第五章 クランの争乱
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第96話 招待状。

「遅くなって申し訳ありません、此方で宜しかったでしょうか」

「折角の招待ですし、来て差し上げたわよっ!」

「アンクルさんっ! シェンカさんっ! いらっしゃいっ」


 振り向くとそこにはメッセージの通り2人連れ立って来てくれたアンクルさんとシェンカさんが立っていた。シェンカさん心なしか嬉しそうに見える。作戦大成功だ。

 アンクルさんはいつもの白い鎧に、薔薇の花束を持ち、その隣で口元を羽根扇子で隠すシェンカさんはいつも以上に金色のドレスが輝いている。


 僕は慌てて駆け寄り、庭木戸を開いた。


「ユウ様、本日はお誘いありがとうございます。本当はユキノ以下何人かの騎士団員達も、という事でしたが、残念ながら新人指導に忙しく、申し訳ございません」

 そう言って真っ白な薔薇の花束を手渡してくれるアンクルさん。


「いえいえっ! 僕が無理言っただけだし、アンクルさんだけでも来てくれて嬉しいですっ! あ、その、『騎士(ナイト)』への転職おめでとうございますっ!」

 頭を下げるアンクルさんを何とか押し留めて、改めてお祝いの言葉を伝える。


「これもすべてユウ様のお陰ですよ。我が剣は巫女姫に捧げた物。その想いがきっと通じたのでしょう」


 それは違うんじゃないかなぁ……と思うけど流石に言うのは憚れる。

 そしてそれを隣で聞いているシェンカさんが複雑な表情と、明らかに僕への嫉妬の視線を送っている。美人に睨まれるのはちょっと怖い。


「えっと……シェンカさんも、『歌姫(アイドル)』への転職、おめでとうございます」

「当然ですわ。むしろ最初から『歌姫(アイドル)』になれない事がシステム的におかしかったのですわ」


 うん、確かにシェンカさんは初めて見た時から『歌姫(アイドル)』! って感じだったからなぁ……

 アンクルさんの『騎士(ナイト)』もそうだけど、最初からそうなれてなかったのがおかしいとも言える。

 だから尚更自分のなりたい職業にちゃんと就けた2人の事が嬉しい。


 ……僕もいつか重戦士(タンクウォリアー)とかになれる日が来るのかなぁ……。


「あー……それで、ユウ様。あの……アレは一体……?」

 庭の中を指さすアンクルさんに、僕も少し引きつった笑顔になった。

「えっと……何なんでしょう……ね」


 そこには一角獣(ユニコーン)のヴァイスとノワールさんとマヤとタニアちゃんがパンケーキを奪い合う戦争が繰り広げられていた。


 奪い合うと言っても白薔薇騎士団の団員さんが何十人か来ても大丈夫な位焼いたから量自体は十分にあるし、その有様は何処の大食いコンテストかって感じだ。

 ヴァイスが一口で大量に食べるのを見て、マヤもノワールさんも張り合ってしまったように見える。

 大人げないというか何というか……いや、一番大人げないのは最年長のヴァイスなんだろうか?




「なんと! ではヴァイス殿はユウ様の友人という事ですか。さすがユウ様、このアンクル感服致しました。さすがは『白き薔薇の巫女姫』っ! その美しさで『一角獣(ユニコーン)』までも虜にしてしまうとはっ!」


 とりあえず大食いコンテストをしてる皆を放置してアンクルさんとシェンカさんを席へ案内した僕は、アンクルさん達にとって初対面のヴァイスを紹介する事にした。

 紹介されてる当のヴァイスがパンケーキに夢中だからどうにも微妙だけど、でもどうせヴァイスは喋れないんだしあんまり関係ないのかな。


「殆ど偶然の結果だから、そんな特別な事じゃないですよ」

 実際そうだから何ともむず痒い。

「いやいや、純白のローブを着て銀髪をたなびかせたユウ様が、この白き気高き一角獣(ユニコーン)に乗る姿。きっと絵になる事でしょう。神もその姿を想像してお二人を引き合わせたに違いありません」


 新手のジェットコースターみたいに物凄いスピードで走り抜ける恐怖体験しか記憶にないから何ともイメージしずらい事をアンクルさんが続ける。

 白き気高い一角獣(ユニコーン)さんはその隣で生クリームまみれになりながらせっせとパンケーキ食べてるし、よくこの姿を見てアンクルさんはそんな想像が出来るものだ。


「そういえばアンクルさんとシェンカさんはペットモンスターを捕獲(テイム)したりしたんですか?」

 今日は2人とも連れてきては居ないようだけど気になって尋ねてみた。


「そうですね、やはり我等白薔薇騎士団は騎乗用モンスター。特に私はユウ様と同じように白いモンスターをと思っておりますのでまだ用意出来ておりません」

「そっかぁ……出逢うのも難しいって話だもんね」


 ペットモンスターって1人一体までだし、『幻獣』とかに絞ると出逢うのも大変みたいだから目的に合わせたモンスターに出逢えるまで、てすると更に大変なんだろうなぁ。

 幻獣の森に籠もってるプレイヤーとかも多いんだろうか?


 でも確かに白馬に乗ったアンクルさんとか、さっきのアンクルさんの言葉じゃないけど『絵になる』し見てみたくはある。


(わたくし)はその……捕獲(テイム)予定はありませんわ」

「あ、シェンカさんはペットモンスターに興味ない感じなんだ」


 それはちょっと意外。結構もふもふなモンスターって多いし、女の子なら皆欲しがるのかなぁ……と思ったのに。


「無くはないのですけれど……残念ながら捕獲アイテムが手に入りませんでしたの。」

 あぁ、シェンカさんが見るからにションボリしてしまった。


「確かに『隷属の首輪』は数が全然足りませんね。我が騎士団でも団員全員分の確保は出来ませんでした」

 そういえば今販売中止してるんだっけ。露店だと物凄く高くなってるとかだそうだし。

「ファンの方からプレゼントとして、って申し出もありましたが高価な品ですしお断りしまして。暫くは(わたくし)はペットモンスターは先送りですわね」


 紅茶をすするシェンカさんは、本当に残念そうに肩を落とした。

 なんとか方法があればいいのに……って、そうだ!


「シェンカさんっ! じゃあ僕から『隷属の首輪』買いませんか? 定価で良いですから」

「え? 何を言ってらっしゃいますの?」


 僕の突然の申し出に目を白黒させるシェンカさん。


「その、実は僕、ヴァイスと出逢った時に色々あって、『隷属の首輪』を今2個持ってて、1人で2個持ってても仕方ないし、1個誰かに……って思ってて」

「でしたら露店等に出せば宜しいでしょう。何十倍もの値段になってますのに、勿体ないですわ」

「元々この1個は拾ったような物で元手かかってないから、お金稼ぎに使おうとか思わないし、知り合いに使って貰えたらその方が良いよ」


 アイテムウィンドウから『隷属の首輪』を取り出してシェンカさんに手渡す僕。

 でもシェンカさんはまだ迷っているようで困ったような顔をしている。


「その……本当に宜しいんですの?」

「うんっ! 『転職祭』ではいっぱいお世話になったし、そのお礼だよ。それにシェンカさんに使って欲しいんだっ」


 そう言うと観念したのか、ウィンドウを操作し、僕のメッセージウィンドウにシェンカさんからの入金が表示され、『隷属の首輪』を受け取ってくれた。


「ありがとう、ユウ。では『歌姫(アイドル)』に相応しいペットモンスターを捕獲(テイム)しないといけないわねっ!」


 何やら熱く燃えているシェンカさん。元気になって良かった……んだよね?

 でも『歌姫(アイドル)』に相応しいモンスターって何だろう……次に合う時は巨大なクジャクとか連れてそう。




 こうして僕がアンクルさん、シェンカさん、そしてタニアちゃんがお腹いっぱいになった所で合流したソニアさんが談笑している間に大食いコンテストは終了した。

 1位ヴァイス、2位ノワールさん、3位マヤ、離れて4位タニアちゃんの順位だった。


 みんな食べ過ぎて気持ち悪くなったりしてなければ良いけど……。


「こ、これで勝ったと思わない事ね……パンケーキの枚数じゃユウへの想いは計れないわ……」

「ヒヒン」

「私はまだ2回の変身を残してる。今日はまだ本気出してないだけ」

「フヒヒーン」


 皆元気そうだし大丈夫そうだ。

 タニアちゃんはお腹いっぱいで幸せそうに眠ってるし大丈夫だろう。


「あー……ごめんくださーい。どなたかいらっしゃいませんかー?」


 まだいがみ合ってる3人を眺めていると、不意に間延びした男性の声が聞こえてきて、声の方に振り返る。

 そこには燕尾服にシルクハットをかぶり、ステッキを持った青年が1人立っていた。


 ……誰?


「すみません、呼び鈴を鳴らしたんですが、誰も出てこなくて、でも人の気配があったんで裏手に回って着ました。こちら『銀の翼』のホームで間違いないでしょうか?」

「あ、はい! すみませんっ」


 誰かわからないけど、『銀の翼』に用がある人だろうか?

 僕は慌てて立ち上がり、庭木戸を開けた。


「えっと、確かにここは『銀の翼』ですけど……何の御用でしょうか?」

「あ、大した用という訳ではないのですが……と、申し遅れました。私の名前はジョニー・ジョーカー。ジョニーとお呼びください」


 そう言ってシルクハットを外して華麗に頭を下げるジョニーさん。庭先なのに様になってる姿がちょっとシュールだ。


「あ、えっと、僕は司祭(プリースト)のユウです」

「あぁ! 貴女があの!」

「あの?」

「ええ。あの。それはともかく、宜しくお願いします」


 そう言ってジョニーさんが右手を差し出した。釣られて僕も右手を出す。

 と、握手かと思ったらジョニーさんは差し出した僕の手を取り、その甲にキスをした。


 その瞬間、僕の背筋に悪寒が走る。

 僕は男にキスされる趣味はない。それが手の甲だろうが足の先だろうが御免被りたいっ!


「ふむ、やはり噂通り…………って、うぉ!?」


 ショックで動けない僕の代わりに皆の動きは機敏だった。

 僕とジョニーさんの間に突然物凄い突風が吹き、マヤが僕を引き寄せ、僕の前にアンクルさんが立ちふさがり、ノワールさんの矢がジョニーさんの脳天に狙い付けられた。


「それで、ジョニー殿は何の用ですかな?」

 僕の前に立つアンクルさんがいつでも剣を抜ける体勢で尋ねる。


「いやいや、何やら険悪な雰囲気ですね。レディに挨拶のキスをするのは紳士の嗜みでは……いや失敬。セクハラで訴えないでくださいね。アカウント停止処分とか怖いですから」


 全然怖そうにしてるように見えないジョニーさんがシルクハットをかぶり直す。


「と、よく見れば貴方は『白薔薇騎士団』のアンクル様。それに後ろにいらっしゃるのは『黄金の歌姫』シェンカ様。なるほどなるほど、豪華なメンバーが揃ってらっしゃいますねぇ」


 何やら楽しそうに見渡すジョニーさん。ノワールさんの矢はまだジョニーさんを狙ったままなのにやっぱり怖がってるようには見えない。


「それで、なんの用なのよ」


 低い声でマヤが改めて尋ねる。

 その問いにジョニーさんは嬉しそうにニヤリと笑う。


「あぁ、何、私はただの使いぱしりですよ。えぇえぇ、今日は『銀の翼』のクランリーダーであるサラサラ様と、そして『白き薔薇の巫女姫』のユウ様に、


 夜会の招待状をお持ちしただけでございます」


 そう言ってジョニーさんはもう一度皆を見渡し、最後に僕を見つめて慇懃に頭を下げた。





 

ウィリーの名前をジョニー・ジョーカーに変更。

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