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春風

作者: 朝野 賢哉
掲載日:2012/11/09



 古めかしいチャイムがスピーカーから流れ、歴史の授業が終わる。織田信長がどういう人生を歩んでいたかなんてのは更々興味がないけれど、終始眠ることなく五十分を過ごせたたということは、それなりに面白い話であったのだろう。


 担当教員が教室を後にし、入れ替わりにクラス担任のジョナサンが入ってくる。


 ジョナサンは中々話せる奴で、今時の教員には珍しく生徒から好かれている方だ。ただ、物凄く話が長く、所々日本語が怪しいので、ホームルームの時間だけは誰しもが遠い目をする。


 僕もその中の一人であることは間違いなく、顔は前に向けたまま、目を外に移す。


 学校のすぐ隣には市内でも大きい方にはいる公園がある。四月はまだ十日近く残っているため、公園には数多くの桜の木。公園内の道には大量の花弁が積もっており、その花道を親子が手を繋ぎながら歩く様はとても絵になっている。



 ——ふと、強い風が吹いた



 そう思った次の瞬間には、風に乗った沢山の花びらが教室に流れ込んできていた。きっと、窓を開けっ放しにしていたのだろう。


 弱まりながらも風は今だに吹き続け、教室に桜が舞う。木製の校舎内で花びらが舞う光景は中々風流で、ジョナサンに至っては「アメイジング……」などと言いながら瞳を輝かせている。


 気を取り直し、早々とホームルームを終わらせたジョナサンは、箒と塵取りを手に、惜しむ様にゆっくりと花びらを集め始める。その背中を目にしながら、僕は教室を後にした。


 下駄箱へ向かう途中で、先ほどの光景を今一度思い出す。



 ——そして、少し考える



 今日は塾がない日で、頼まれごともなかった筈だ。風は少しあるけれど、天気も良い。



 ——寄り道したっていいだろう



 そう思い立ち、踵の潰れたローファーに足を入れる。いつもの通り校内にある駐輪場に向かうのだが、心なしか僕の歩幅は大きくなっていた。




 最後まで読んでいただき、誠に嬉しく思います。


 ふとした思い付きで友人達とテーマを決めてショートストーリーを書くことになり、そこで出来上がったのがこれです。ふとこのサイトを思い出し、せっかくだからと投稿してみました。

 行間がやたら多かったり会話が無かったりショートストーリーにしても短過ぎるだろ、と手抜きっぷりが凄まじいですが、こんな文章でも春っぽさ、春の暖かさみたいなものを感じとっていただけたら幸いです。

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