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天井裏で暮らす

作者:
掲載日:2026/03/31

ずる、ずるり。

俺はもう三年ここで暮らしている、立つ場所なんてどこにもない。

あるのは埃まみれで、なんにも見えないこの空間と、下の階に通じる蓋の隙間から見える、住人の生活だけだ。


初めはこんなことになるとは思っていなかった、俺はただの毛深くて、メタボなおじさんで、他にこれといった特徴はない。

住んでいたアパートの家賃を滞納しすぎて、追い出されてしまったんだ。

鍵はもちろん作っておいた、あの大家なら鍵の交換などしないと思ったからだ。

荷物は全部リサイクルショップに売ってしまった。


その日から俺の第の生活が始まった、ゴミの中からペットボトルを拾い、公園で水を入れる、近くの美味しいご飯屋さんの残飯を漁る。

そして以前住んでいた部屋に戻り眠る。


数ヶ月経つと新しい住人が現れた、この時は驚いた。

鉢合わせしなくて本当に良かった。

俺は数日天井裏に隠れ、隙間から住人の生活リズムを把握するために覗いていた。


平日の朝は七時には家を出る、帰ってくるのは夜の十時ぐらいだ。

どれだけ通勤にかかっているのかと予想する、きっと二時間は使っているだろう。


休日はゆっくり昼過ぎまで眠る、起きると掃除やたまった洗濯をして、テレビやスマホを見ながら晩酌をしている。

多少の料理はするようだ。

休みは土日。

基本的には家にいるようだ。

それから彼女は二十五、六歳に見える。

とても美しい顔立ちをしていた。


俺は彼女が気に入った。

そのうち天井裏をずりずりしているせいで、服が破れてきた。

どうせ外に出ないからと裸で這いずり回るようになった。


彼女が仕事に行っている間、俺はトイレに行ったり、水を飲んだり、冷蔵庫から少しずつ食材を貰って食事をし、痕跡が残らないように片付けるようになった、シャワーもちょろちょろ水を出して浴びている。

シャンプーボディーソープにボディータオルも使っている、少しづつがポイントだ。

タオルは彼女が使用したものを使っていがしがし拭いている。

彼女が気づいたことは一度もなかった。


トイレに行けない時間帯は、拾った大きめのペットボトルで用を足すようになった。


そうして暮らし始めて三年、また新しい住人ができた。

見たこともない俺によく似たおじさんだ、彼女がいない時に話しを聞いてみると、ふらっと見かけた彼女が気に入って、後をつけていたそうだ。

彼女がいない隙に合鍵を作り、どこかに隠れることができないかと、思いついたのが天井裏だった、と。


それから俺はもう一人のおじさんと二人で天井裏に暮らし始めた。

もう人もいつの間にか、裸で暮らし始めた。


さらに数ヶ月後、また彼女に惹かれてつけてきたおじさん二人目が現れた、俺たちの暗黙の了解は、以前どんな生活をしていたのかは、一切聞かないことだった。

三人のおじさんが裸で天井裏を這いずり回っている。

部屋の中で彼女がスマホを見ながら大笑いしている。

俺たちはそれを見て、締まりのない顔をしている。

そこら中に置かれたトイレ替わりのペットボトルを、倒さないように気をつけながら動き回る。


ある日彼女がいない時に、テーブルの上にメモが置かれていた。


「食材はもうちょっと使っても怒らないよ、おじさんたちへ」


彼女は全て知っていて、俺達を飼育していたのだ。






ここまで読んでいただきありがとうございます。

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