天井裏で暮らす
ずる、ずるり。
俺はもう三年ここで暮らしている、立つ場所なんてどこにもない。
あるのは埃まみれで、なんにも見えないこの空間と、下の階に通じる蓋の隙間から見える、住人の生活だけだ。
初めはこんなことになるとは思っていなかった、俺はただの毛深くて、メタボなおじさんで、他にこれといった特徴はない。
住んでいたアパートの家賃を滞納しすぎて、追い出されてしまったんだ。
鍵はもちろん作っておいた、あの大家なら鍵の交換などしないと思ったからだ。
荷物は全部リサイクルショップに売ってしまった。
その日から俺の第の生活が始まった、ゴミの中からペットボトルを拾い、公園で水を入れる、近くの美味しいご飯屋さんの残飯を漁る。
そして以前住んでいた部屋に戻り眠る。
数ヶ月経つと新しい住人が現れた、この時は驚いた。
鉢合わせしなくて本当に良かった。
俺は数日天井裏に隠れ、隙間から住人の生活リズムを把握するために覗いていた。
平日の朝は七時には家を出る、帰ってくるのは夜の十時ぐらいだ。
どれだけ通勤にかかっているのかと予想する、きっと二時間は使っているだろう。
休日はゆっくり昼過ぎまで眠る、起きると掃除やたまった洗濯をして、テレビやスマホを見ながら晩酌をしている。
多少の料理はするようだ。
休みは土日。
基本的には家にいるようだ。
それから彼女は二十五、六歳に見える。
とても美しい顔立ちをしていた。
俺は彼女が気に入った。
そのうち天井裏をずりずりしているせいで、服が破れてきた。
どうせ外に出ないからと裸で這いずり回るようになった。
彼女が仕事に行っている間、俺はトイレに行ったり、水を飲んだり、冷蔵庫から少しずつ食材を貰って食事をし、痕跡が残らないように片付けるようになった、シャワーもちょろちょろ水を出して浴びている。
シャンプーボディーソープにボディータオルも使っている、少しづつがポイントだ。
タオルは彼女が使用したものを使っていがしがし拭いている。
彼女が気づいたことは一度もなかった。
トイレに行けない時間帯は、拾った大きめのペットボトルで用を足すようになった。
そうして暮らし始めて三年、また新しい住人ができた。
見たこともない俺によく似たおじさんだ、彼女がいない時に話しを聞いてみると、ふらっと見かけた彼女が気に入って、後をつけていたそうだ。
彼女がいない隙に合鍵を作り、どこかに隠れることができないかと、思いついたのが天井裏だった、と。
それから俺はもう一人のおじさんと二人で天井裏に暮らし始めた。
もう人もいつの間にか、裸で暮らし始めた。
さらに数ヶ月後、また彼女に惹かれてつけてきたおじさん二人目が現れた、俺たちの暗黙の了解は、以前どんな生活をしていたのかは、一切聞かないことだった。
三人のおじさんが裸で天井裏を這いずり回っている。
部屋の中で彼女がスマホを見ながら大笑いしている。
俺たちはそれを見て、締まりのない顔をしている。
そこら中に置かれたトイレ替わりのペットボトルを、倒さないように気をつけながら動き回る。
ある日彼女がいない時に、テーブルの上にメモが置かれていた。
「食材はもうちょっと使っても怒らないよ、おじさんたちへ」
彼女は全て知っていて、俺達を飼育していたのだ。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
よろしければ♡や☆で応援していただけると励みになります。
良かったら他の作品もお読みください




