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プロローグ 成人式の夜

「お前に真実を伝えよう」


 今日、僕は成人して政治などに関わらなくてはならなくなった。そんな成人式の日の夜おじいちゃんの部屋に呼び出された。お祝いでもされるのかと思っていたが、急にどうしたのだろうか。


「真実…?」


「そうじゃ、心して聞くがよい。我が孫、アレックス・アレクシア3世」


「はい!」


 こんなに溜めて一体何を教えてくれるのだろうか。しかし、表情からして只事ではないのだろう。


「この国で一番偉いのは、誰だと思うかね?」


「それは…」


 そんなの国王である我が父上アレクサンダー・アレクシア2世以外にいるのだろうか…。しかしあえてこの質問をするということは、もしかしたら未だにおじいちゃん、いや先代のアレイオン・アレクシア3世が権力を握っているなどと言い出すのか?


「父上ではないのですか?」


「残念ながらな。我らが王家、アレクシア家には最早何の権力もないのじゃ」


「それは…本当なのですか!では一体誰が…」


 王家では無いのなら、貴族の誰かなのだろうか、それとも…もっと裏の何者かが?


「よいか?全ての権力は、メイド長にある。」


「へ?」


 何を言っているのだろうか。メイド長といえば、召使いであるメイドを束ねるだけの存在。そんな者に権力があるとは思えないのだが。おじいちゃんは冗談を言っているのか?


「信じられないのも無理はあるまい。誰がメイド長などと思うものか。我も王位に就く以前にそんなことなど想像もしなかったわい。」


「じ、冗談ですよね…?」


「冗談などではない。奴らはあの手この手で王を裏から操っているのだ。メイドは生まれた頃から我らの面倒を見ておる。弱みを握るなど造作も無いこと。」


「では…先代も?」


「うむ。そして現国王もだ。」


「そんな…」


 僕は衝撃の事実を突きつけられた。にわかには信じがたいがおじいちゃんの表情は真剣そのもの。どうやら本当らしい。しかしなぜそんなことを僕に言うのだろうか。


「よいか、我が孫アレックス・アレクシア3世よ。お前にはアレクシア王家の権力回復を委ねたいのじゃ。」


「僕に…そんなことができるのですか?僕とてメイドと無関係に生きてきたわけではないですし。どうせ操られるのではないのですか?」


「いや。これはお前にしかできない。まだ即位していないお前はメイド達の中での優先順位が低い。即位した時のために早くにお前につけ込むメイドは確かに一定数いる。しかし、即位が何年も先になる以上、奴らは手っ取り早く権力を握れる可能性のある現国王を狙うのじゃ。」


「僕は…まだ成人したてです。そんな謀りごとなどできるとは思えません。」


「安心するのじゃ。お主にはこれを託そう」


 なんだこれ…かなり古い本のようだが。


「これは代々アレクシア家の権力回復を願いメイドとの闘争を繰り広げてきた歴代の王が長きにわたり書き記してきたものだ。先人たちの戦略から学ぶがよい。我もアレクシア家の権力回復を願う者。お前に協力しよう。」


「歴代の王でさえ敵わない相手に僕が勝てるのでしょうか?」


「お前も知っているだろう。メイド長が昨年亡くなってから現在までメイド長の座は空席。絶対的な権力者が不在の今がチャンスなのだ。これはお前にしかできない。我らが悲願を成し遂げてくれ!」


「は、はいっ!」


 勢いに飲まれてつい返事をしてしまったがなんだかいけそうな気もしてきた。頑張ろう。ん?


「頼ん…だぞ…アレックス…」


 急におじいちゃんが倒れた、一体何事だろう、あんなに熱く語っていたのに。


「先代!どうたんですか!先代!」


「すまない…気持ちが…高ぶりすぎたようだ…すまない…だが…後は………頼んだぞ」


 うそだろ…このタイミングで…。クソっ、さっき自信満々に「協力しよう」なんて言っていたのに…メイドはおじいちゃんの仇、こうなったら絶対に権力を握ってやる!


 こうして次期国王アレックス・アレクシア3世はメイドたちの権力闘争への参戦を決意した。

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