森の妖精
アッキーを仲間に加えついに五人と一匹となった。
レジェンド山賊集めの旅は順調に進んでいる。
「うーん。誰だったかな? どこだったかな? 」
どうしても思い出せないと嘆く当時の親玉のツー爺。
ツー爺によれば山賊仲間はその日によって変わっていたと。
ターゲットが左に行けば右に。右に行けば左にと。
だから必ずしも一定ではない。当然増減もする。
ツー爺は見た目よりもしっかりしていて記憶力だって衰えてない。
それなのにいまいち思い出せずにいる。こんなことってあるのか?
「うーん。まったく思い出せない。もうトノサキでよくないか? 」
頼りのツー爺は首をひねるばかり。
ユーティリティのトノサキを入れてしまえと投げやりだ。
仕方なく俺たちも考えるのだがどうしてもぼやけてしまう。
もはやここはダーゲンたちに頼るしかない。
「よしこっちだ」
ツー爺は明らかに適当に針路を決めた。
仕方ない。ここは夜のポエマーの出番だ。
♪ヘイ ツエ コロガセ イースト・ウエスト・サウス・ノース
イエイ アット オドロク ドロドロヌメヌメ アットホーム!
ライト センター レフト コロコロコロガル ココロオドリダス!
こうしてまたしても夜のボエマーの本領を発揮する。
ダーゲンに続きアッキーまでもが音に合わせ踊り出す。
これで行き先がはっきりするだろうさ。ツー爺だけに任せておけない。
「ふむふむ。そうかこっちでよかろう」
ついにツー爺が本気を出す。後について行けば間違いない。
「どれくらいですかツー爺? 」
「大したことはない。至ってシンプルで楽勝。ついて来るとよい」
どうも信用ならないんだよな。
「では船に乗るぞ! 」
方角はまったく関係ない。船に揺られれば着くそう。
では周遊の旅へ!
今度は足を使わずにゆっくりと船の旅に。
しかし船とは言え方角はあるはずだが。
うーん…… まあいいか。面舵一杯と行くか。
難しく考えてはいけない。ただ言われた通りに従うのがいい。
何と言っても俺だけではどうにもならない訳だしな。山賊時代を知らない。
それどころか俺がこのシュワシュワ王国に来てまだ間もない。
右も左も分からないんだから口も手も出さずにただ見守るとしよう。
まずは船に乗りステーキタウンへ。
ステーキタウンは他国との貿易の要所。
近くにはホットタコタコもあってグルメが盛ん。
最近大きな催しが開かれたとかで話題沸騰。
ミャクミャクと受け継がれてきた歴史と文化がある。
この辺りには近年力をつけて来たハンタイと青波が支配する。
俺たちはその一つの青波ステーキにお邪魔することに。
「ああん? 誰だって? 」
「だからこういう人を見かけませんでしたか? 」
似顔絵を見せるが居所までは特定できない。
「ああ彼なら扇子作りをやめて代行サービスとか仕分けをやってるね。
口癖は二番ではなぜダメなのか?
別に二番でもいいけど三番とか四番が普通だからね。
いくら強くても速くないとやってられないよ。ここでは」
知った風なことを抜かす専門家気取りのおっちゃん。
彼の紹介で伝説の山賊の一人の居所が判明。
山奥の鬱蒼とした場所。そこが彼の現在の住処。
アッキーと通じるものがある。
森の妖精。
それこそが彼の正体。一番山賊に相応しいのかもしれない。
どうもこの辺りが彼の故郷と言うか幼少時代に過ごした場所なのだとか。
ツー爺の話だからいい加減かもしれないがとにかく行ってみることに。
着いてすぐに異変が。
「お腹空いたよ! ステーキ食わせろ! 腹一杯食わせろ! 」
腹ペコ魔人のタケが我慢の限界を迎えたらしい。
いつもは温厚なタケもこうなっては手がつけられない。
量産体制に入ったか?
しかしステーキは当然ないし食いものなどどこにも見当たらない。
大体持ってきたのはタケが食い尽くした。ある訳がないんだ。
「うわああ! 食わせろ! 食わせろ! 」
温厚なタケが喚き散らす。
俺たちではもうどうすることもできない。
「おいタケ! ダメだって言ってるだろう? 」
いくら言い聞かせても腹ペコ魔人のタケは納得してくれない。
「何でもいい! 何でもいいから食わせろ! 」
もはや人間を捨てている。ここは急がないと大変なことになるぞ。
しかし肝心の食いものがない…… いや近くには立派な果実が。
これは梨? それともリンゴ? 見た目はどちらにもよく似ている。
間違いなく食えるはずだ。果実をちぎるが風が邪魔して届かない。
痺れを切らしたタケが強引に食いちぎるがなぜかことごとく失敗する。
「タケさん我慢してください。他のものを調達して来ますから」
タケに呆れるダーゲンたち。
どうも様子がおかしいぞ。食べようとしても食べられない。
「よし皆で一斉に! 」
タケの指示で果実をちぎろうとするがやはり無理だった。
どうも見えない何者かが邪魔をしている。そんな感じ。
「何者だ! 邪魔をするな! 」
怒りを通り越したタケの雄たけび。もはや動物。
しかしただ果実が風に守られている。そうとしか思えない。
仕方なく違う果実に目をつける。
だがどれも抵抗にあってるかのように動き回る始末。
ああどうして俺はこんなことに振り回されないといけない?
食いものもなく目的の男に会えずにイライラが募る。
クンクン
クンクン
ダーゲンの猫が臭いを嗅ぎだしたと思ったら今度はシャーと威嚇する。
一体何が起きた?
うん? 見えないものを見ようとして覗きこむと僅かながらに実体が。
「あなたは? 」
「初めまして。森の妖精のフォレストさ」
今まで邪魔をしていたのはこの妖精か? ふざけやがって。
だが直接妖精本人には言えない。だからポエム対決を望むがあっさり断られる。
ははは…… 調子に乗ったかな。
「おいお前…… 妖精になったのか? 」
衝撃で開いた口が塞がらないツー爺。
「まさかこの森の妖精があなたの求めていた山賊? 」
ついに発見。レジェンド山賊の一人。
「そのようだな。しかし驚いている。なぜこのような真似を? 」
「それは…… 」
どうやら後悔してるらしい。
「あの日が忘れられなくて。お前たちもそうだろう? 」
「まさか戻って来たいとか? 」
それならラッキー。即解決できる。
のんびりした生活はやっぱり退屈なのだろう。
ツー爺によれば受け入れ態勢は整ってるそう。後は本人次第。
「どうだ戻っては来ないか? 」
ツー爺の一言で彼も態度を改める。
「ありがたいですが…… さすがに今すぐとは行かない。ははは…… 」
「分かってる。後はお前次第だ」
ツー爺の一言に揺れるが山賊仲間への復帰はまだ遠い。
森の妖精には役割がある。この森を守る使命もある。だからすぐには難しい。
猶予を与え森を去ることにした。
残念だが後は彼自身の判断に任せるしかない。
こうして俺たちは妖精の暮らす森を離れることに。
続く
また来週!




