ゆれる論理、ふくらむ感情(前編)
その日も、壇上には堂々と一ノ瀬 澄が立っていた。
前回の逆転劇で、観客たちの記憶に深く刻まれた彼女。
「胸の大きさが美しさを決めるものではありません。
“あること”より“どうあるか”こそが、私たちの本質です。」
そう言って、彼女は──自らの制服の前を、再び開いた。
「これが、私の──」
言いかけて、彼女は言葉を止めた。
自分の胸元を見て、目を見開いた。
まな板のはずのそこが──ふくらんでいる。
制服の中から、
確かに、双丘が主張を始めていた。
「え……? な、なにこれ……?」
ふくよかな膨らみ。
震えるように揺れ、明らかに重みを帯びた存在。
観客がどよめいた。ミライすら、口を半開きにして見つめていた。
(落ち着いて、これは何かの幻覚……)
澄は強引に続きを話し始める。
「この……私の……えっと、その、変化は関係ありません……!
胸のサイズなど、論点では──」
その瞬間、制服のボタンが「ぷちっ」と弾け飛んだ。
観客「うおおおおおおおお!?!?」
顔を真っ赤にした澄。
思わず胸を押さえてうずくまる。
(……重い。すごく重い。でも……)
ふと、思った。
(……やわらかい……温かい……気持ちいい……)
ミライがゆっくり近づいてきた。
「……ねぇ、澄。正直なところ、嬉しいんじゃない?」
「う、嬉しくなんて……っ! 私は……貧乳の誇りを……!」
震える声。だが、
両腕で胸を支えるその仕草は、どこか名残惜しげだった。