逆襲、貧乳の矜持
学園討論会「胸部の美的価値を問う」2回戦。
壇上に立つのは、前回圧倒的乳圧で論破された一ノ瀬 澄(貧乳代表)と、再び登場した巨乳のカリスマ高峯ミライ。
前回は、論理を超えた“存在感”に沈められた澄。
だが、彼女は帰ってきた。瞳に火を灯して。
ミライは余裕の笑みで語る。
「今日も“現実”を見せてあげる。あなたの理論が、また潰れる音を聞かせて。」
静かに制服の前を開くミライ。
会場がざわつく。巨乳は今日も、美しかった。
ふわりと揺れるその質量に、思わず息を呑む観客たち。
──だが、澄は微動だにしなかった。
彼女は、静かに一歩を踏み出す。
そして、言った。
「その“見せる戦法”が通用するのは、見せられる側が劣等感を抱く者だけよ。」
ミライが目を細めた。
「……どういうこと?」
澄は自分の制服のボタンに手をかけた。
だが──彼女の胸元には、なにもなかった。完璧な“まな板”。
「見なさい。これが私の“真実”よ。
私にはない。でも、だからこそ私が美を選んだの。」
ざわめく会場。
「胸がある者は、それに依存できる。
でも、私には寄りかかれるものがないからこそ、言葉を磨き、姿勢を整え、立ち方を極めた。
これが私の、“自分を愛する”戦い方よ。」
ミライの表情から、笑みが消えた。
澄は続ける。
「あなたが“見せる”ことで屈服させてきたそのやり方──
それは私には効かない。なぜなら、私はもう、自分に胸がないことを誇りに思っているから。」
──沈黙。
ミライがゆっくりと目を伏せる。
「……澄、変わったね。」
「ええ、あなたのおかげで。私は自分を赦した。
そして、美しさは“在ること”じゃなく、“どう在るか”だと気づいたの。」
その瞬間、
観客たちの視線は、胸ではなく――
彼女の背筋に、眼差しに、言葉に宿る意志に向けられていた。
勝敗は、明らかだった。
ミライは微笑んだ。
「……まいったわ。今日のあなた、すごく綺麗。」
澄も微笑み返す。
「あなたも。胸がなくても、きっと素敵よ。」