神柱と呼ばれた少女
壇上の百合と審美の戦いから数ヶ月後。
学園は平穏を取り戻していた──と思われた。
だが、九条 天の“アレ”は、静かに、しかし確実に成長を続けていた。
最初は、「ちょっと大きいね」で済んだ。
しかし次第に、
教室のドアが通れなくなり
専用デスクが岩のように削られ
体育館の床を貫き
ついには、地表に根を張り始めた。
「……これ、もう人間が持つサイズじゃないよね……」
澄が呟く。
長谷川が言う。
「いや、人間じゃない。これは“生態系”だ。」
やがて、そのアレは、屋久杉を超えた。
神々しいまでの枝分かれと皮膚感。
先端からは香り高いフェロモンが霧のように放たれ、
渡り鳥が止まり、花が咲き、蝶が舞った。
そしてついに──
世界文化遺産・緊急登録会議
ユネスコ代表「これは……文明……ではなく、自然と精神の融合体です。」
日本政府「史上初、“陰茎単体による登録”となりますが……異議ありません。」
こうして、
“Futanari Mount Kujou”(通称FMK)は、
世界文化遺産に登録された。
観光客は1日100万人。
フランス人「このライン、まさに芸術」
中国人「写真撮ってはいけないが……心に焼き付けた」
アメリカ人「自由の女神より好き」
修学旅行生「でっけぇ……」
そして九条本人は──
ある日、巨大なそれを背にして語った。
「私の中に、もう羞恥はない。
これは私の一部ではない。
私が“これ”の一部なのだ。」
それを聞いた澄・ミライ・長谷川の3人は、静かに頭を垂れた。
「最初は性徴の話だったのにね……」
「でも今は、星を見上げるような気持ちで見てる。」
「尊いとかいうレベルじゃない。……これは、世界だ。」
こうして、
胸・尻・性・愛・信仰・世界遺産──すべてを超越した存在は、
“歩く世界遺産”として歴史に刻まれた。