論破と崩壊
学園審美討論会。
テーマは「胸の大小、どちらが真の美か」。
壇上に立つのは、弁論部の貧乳派代表・一ノ瀬 澄。
彼女はシャープな声で、こう始めた。
「巨乳には知性がない。人は乳に溺れて理性を失う。
貧乳こそが、均整美の極地。機能性、実用性、衣服との調和性、
すべてにおいて合理的であることを、この図をご覧ください。」
スクリーンには、資料・グラフ・数式が踊る。
「重力負荷と肩こり率の相関」「スポーツ活動における揺れ指数」など、
徹底した科学的アプローチ。
「しかも――人は『足りない』からこそ想像し、求め、惹かれるのです。
不足こそ美。貧乳は“問い”を生み、巨乳は“飽和”を生む。」
観客は「おぉ……」と唸った。完璧な論理。無敵の理性。
だが。
巨乳側代表、高峯 ミライが、壇上に立つ。
無言。資料もスライドも持たず、ただ──歩くたびに「揺れる」。
「…ねぇ、私、あなたの理論ぜんぶ聞いたよ。すごいと思った。
でも――」
ミライは、前をゆっくりとはだける。
ブラを外す。
落ちる音が、壇上に響いた。
会場の時間が、止まった。
視線を逸らせない。理屈が焼け落ちる。
「これが、現実だよ。」
澄の目が泳ぐ。何かを言おうとして、口が震える。
ミライが一歩、また一歩近づくたびに、
その揺れと存在感が「理論」を踏み潰していく。
「あなたの話は、頭で理解できた。
でも、今あなたの心は──どこを見てるの?」
澄は、何も言えなかった。
完璧な理論武装をしたはずの自分が、
たった二つの肉塊に――心を折られていた。
勝敗は、明らかだった。
理屈で勝とうとした少女は、
「本能」の前に、跪いた。