その18 二度目の暗闇
─前回のあらすじ─
フローシフ教団の教祖『ダアム』の呼び出した魔物『がしゃどくろ』の襲撃により、ヨミエルとラナ達は分断される。
ラナとミライ、シェリーはがしゃどくろを退け、ヨミエルの元へと向かう。
しかし、ラナが目にした光景は、ダアムの凶刃に倒れるヨミエルの姿だった。
──ダアムとの戦闘は、熾烈を極めていた。
剣ではダアムの刃に押し負け、斧では素早く、鋭い一撃に対応できない。
それを見越しているかの様に、先程からダアムは片腕で大剣を振り、もう片方の手は後ろ手のまま、余裕の笑みを浮かべている。
「ククッ……随分と必死じゃあないか、そんなに勝ちたいのかぁい?」
このままでは時間稼ぎどころか、こちらがやられるのが先だろう。
…………一か八かだが、不意を尽くしかない。
自分はダアムの攻撃に合わせ、段々と距離を取る様に立ち回る。
「…………フン、何考えてるかは知らんがぁ……せいぜい成功を祈ってやるよぉ」
ダアムは完璧に油断している、余裕とも取れるが、どちらでもいい、距離は稼げた。
自分は悟られぬ様ダアムの攻撃をいなした瞬間、体を回転させながら銃を隠し、上に放り投げると、両手で剣を構えてダアムに突撃する!
「おやぁ、決死の覚悟かい……好きだよそういうのはさぁッ!!」
ダアムが迎え撃つ様に剣を振るう!自分はそれをいなし!躱し!隙を見てはダアムに剣を振るう!
「──遅い!!」
ダアムが自分の剣を弾き、その大剣を振り下ろそうと高く構える!
──来た!!
ダアムが大剣を振り下ろす刹那、自分は上から落ちてきた銃を手に取り、ダアムに向けて発砲する!
発射された弾丸はダアムの大剣へと当たり、その手から大剣を落とす!
「なにッ!?」
狙いが逸れた!ならもう一度!
自分はダアムの胸目掛け、剣を突き刺す!
剣はダアムの胸を突き刺し、その命を絶つ!!
──そのはずだった。
突如、自分の胴体に多量の熱と衝撃が襲いかかり、見ると、自分の胴体には、ダアムの大剣が突き刺さっていた。
「……いやはや、驚いたよぉ……いや?君の方がもっと驚いたかなぁ?」
ダアムが手を翳すと、大剣が一人でに動き出し、ダアムの手元へと戻る。
刃が抜け落ち、自分の体からは赤黒い血が流れ出す……それと同時に、痛いほどの寒気が体を襲った。
ダアムは自分の前に来ると、自分の前にかがみ、何かを呟いた。
『何も成せずに死ぬのは嫌だろう……の為に……にが見えたか……』
ダアムの声が聞こえなくなり、視界も薄れていく…………。
血が出た…………死ぬ…………嫌だ…………怖い…………。
死ぬ間際は、思ったより単純な思考に支配されるものだ…………。
──死ぬとわかった瞬間、最後にそんなどうでもいい事を悟った。
─意思─
エルフの扱う魔法は、七つの種類に分布されている。
『憤怒』『貪食』『傲慢』『生欲』『怠惰』『嫉妬』『強欲』それぞれが違った特徴を持つ。
大抵の魔法使いは、その内の一つを選び、生涯それを主に扱うという。
憤怒の意思は、敵を引き裂く刃となる。
貪食の意思は、人の根源的な力を解き放つ。
傲慢の意思は、この世界の法則を従える。
生欲の意思は、自身に流れる命を繋ぎ止める。
怠惰の意思は、人の欲望を叶える。
嫉妬の意思は、目の前の出来事を模倣する。
強欲の意思は、人の創造物を従える。
そして魔法とは、人の意思が具現化した姿である。




