航空戦
朝9時00分
ユウヤ「こちらユウヤ、航空隊の準備は完了したか?」
司令部からの通信にタケヒロが答えた
タケヒロ「完了や。ドラグーンアルファから各小隊へ、第一滑走路より順次発進して、俺に続いて。」
鋼鉄の鱗に包まれた5体のドラグーンが2人ずつ魔術師を乗せいる
俺もその一人だ
「いつでも召喚獣出せるように、術式スクロールと簡易術式の用意はできてる?」
ツバキ「万全であります。」
「了解、ほな行くか。」
ドラグーンに指示を出し、第一滑走路から離陸する
「こちらハルト、第一滑走路より出撃します」
カスミ「了解です。同志中将、姉さんもお気をつけて」
その瞬間ドラグーンの鋼鉄の翼が動き空に舞い上がった
「うおぉ!!」
タケヒロのドラグーンを見たことは何度もあったが、乗ったことは初めてだ
タ「行くぞハルト」
「了解!」
上空高くに舞い上がり5体のドラグーンが編隊を組んで飛行したまま、昨日の街に向かった
「見えてきたな」
昨日の暗い夜で見た時よりも鮮明に街の様子が見れた
高い…15mはあるであろう城壁に囲まれており、その中の街はどう見ても人間の住んでおるであろう街だった
だがこの高さからだと人間を確認できないため高度を下げようとした時だった
ツ「敵航空戦力確認!」
「何ィ!?」
ツ「こちらと同じくドラグーンに搭乗している模様です!」
「簡易術式発動!G1!」
慌てて簡易術式を発動したが、相手のドラグーンから黒い何かが迫ってきていた
ツ「中将!戦闘許可を!!」
「許可する!だが相手は殺すな!戦闘不能にしろ!」
ツ「了解!簡易術式発ど…」
バァン!!!
ツバキが術式を発動しようとした時
黒い雷鳴が俺たちの乗るドラグーンに直撃したのだ
「大丈夫か!?このドラグーン」
タ「んなこと後や、交戦しないとさらに敵は増えるぞ!!」
「了解!!!」
だが慣れていない空中での戦闘は分が悪かった
しかもさっき発動したG1が何かしらの影響で発動しておらず。他の術式も発動できない状態だった
「どうなってるんや!これ」
ツ「中将もですか?!私の術式も反応がありません!!」
術式が発動できないという不測の事態に困惑していたがタケヒロがその窮地を救ってくれた
タ「ドラグーンや!!そいつらに命令すれば攻撃してくれる!!!」
「まじか!?」
そう聞くと、乗っているドラグーンに攻撃命令を出した
「ドラグーンさん!?攻撃してくれ、敵のドラグーンを!!」
「グゥウ…」
そういうとドラグーンの口から赤い閃光が放たれた
その閃光は見事に相手のドラグーンに直撃した
が、強力すぎたのか敵のドラグーンは地上へと落ちていった
「殺した……殺してしまった……」
手が震え始め、心臓の鼓動が早くなった
ツ「中将!!!また別のドラグーンです!!!」
「くっ………」
考える余裕はなかった、今はただ自分が助かりたいという欲求を優先し、ドラグーンに敵を殲滅させ続けた
タ「ここまでしたらやばいぞ!!基地に帰るぞ!!!」
「了解…」
そうして空中での戦闘は勝利した
タ「そう落ち込むな、攻撃してきた相手も死ぬ覚悟はあったやろ。」
「いやでも、同じ人間に攻撃してしまった」
タ「…でも見た感じ兵士っぽかったし、まだ死んだと決まったわけじゃない」
「おう…ありがとう」
タ「そう考えすぎん方がええで、どの道こんなわけわからん世界に来たわけやし。いずれ戦闘は起こる気がしてたし。」
そう言ってくれるもののやはり最初の攻撃で落ちていったドラグーンとその兵士の姿が頭から離れない
ツ「中将…お水を…」
「ありがとうツバキさん」
ツ「今日はゆっくりと休んでください、休めば考えもまとまると私は思います。」
「ありがとう」
ツ「では私は今日の術式発動不能の件について調べて参ります。失礼いたします。閣下」
そう言って軽く敬礼してから、ツバキさんは司令部を後にした
ユ「まさか人間との戦闘になるとはな、とりあえずこれは謝罪しに行くべきか?」
シ「絶対やめとくべきや、殺されるやろ」
ユ「でもこれ以上事を大きくしたらもっとやばいことになりそうやし」
ユ「やはり謝罪しに行くべきかと」
タ「いらんやろ、死んだ方が悪い」
ユ「タケヒロ…そういうのはやめようぜ。相手にも家族や恋人はおるやろ」
皆の会話が続く
タ「それもわかるが問答無用で攻撃してくる向こうにも問題あるやろ」
シ「おそらく敵の領空とかだったのでは?」
タ「中世レベルの文明に領空が存在するんか?」
シ「でも向こうが領空と定めればそれは領空やで」
タ「…確かにそれもそうやな」
ユウヤが口を開ける
ユ「とりあえず、向こうの人間がどう思ってるか潜入してみるとかはどう?」
タ「バレて戦闘になるとかはごめんやで、俺はドラグーン達の管理するからパスで」
「俺もパスで、術式の作成とちょっと休ませてくれ」
つられるように口が開いてしまった
ユ「そうか、なら俺が行こう」
「参謀長官自らがですか!?」
メガネをかけたユウヤの副官がそう言った
ユ「なんやリンちゃん、なんか問題あるんか?」
リン「ありまくりです!!」
リ「全体の指揮をとる司令官が場を離れれば、その瞬間の対応に問題が生じます!」
ユ「じゃあ俺以外で潜入する部隊を編成して行かせるか?」
リ「それが最善だと思われます。」
ユ「うーん、潜入したい奴をまずは志願させて、志願が足りなかったら命令で編成するしかないね」
リ「それが良いかと」
改めてみんなの凄さを痛感した瞬間だった
過去のことばかり考えている俺とは違い、常に前しか向いてない。
俺にはできない
やっぱりどこかで悔いてしまうところがある
自分の情けなさがどうしようもなく自分をイラつかせる
そう思いながら、冷たいベッドで夜を過ごした