田宮 結衣(怒モード)
「はいっ!私はお兄ちゃんに言いたいことがあります!」
ある日の休日。結衣はソファに座ってのんびりテレビを見ている俺の目の前に立って、モノ申してきた。
「どっ、どうしたんだ?」
今まで見たことのない結衣の雰囲気を感じ取って俺は思わず身構える。
「お兄ちゃんが修学旅行に行ってから中々、かまってくれないので結衣は怒っています!」
”ドガーン!”その言葉を聞き終えると同時にどこかで雷が落ちた。気がした。
「なっ、なんだと!?」
俺はソファから勢いよく立ち上がり、額から汗を垂らす。結衣は可愛らしく頬を膨らませていた。普段であれば、それだけで1週間の疲れがすべて吹き飛ぶところだが今はそれどころではなかった。
汗が止まるところを知らない。こんなことは今までに一度もなかったため俺はただ立ち尽くすしかない。
「心当たりはありますか?」
そこからは地獄(結衣の尋問)が始まった。
「は、はい。」
これは結衣に当てられて反射的に答えたわけではなく普通に心当たりがあったためだ。バイトや藤本の家庭教師もどきがあったため家に帰って来るのが今までよりも大分遅くなってしまっていた。
「それになんか私に隠し事してるみたいだし。」
結衣に心配をかけまいと黙っていたのが仇となってしまったようだ。結衣は拗ねているのか俺から顔を背けそっぽを向いてしまった。そんな表情も可愛くて癒されてしまう。
「ごめんな、かまってやれなくて。」
俺は何とかしようと声をかけるが結衣はそっぽを向いたまま動かない。そこで俺はあることを試みることにした。
「どうすれば許してくれるんだ?」
あえて結衣にその方法を聞くことにした。
「・・・本当に許してもらいたいと思ってる?」
すると、結衣は顔を俺の方に戻しそう聞いてきた。その表情からはいろんな感情が感じ取れた。
「あぁ、勿論だ。」
結衣の問いに俺は即答する。
「じゃあ、今日一日私とイチャイチャして。」
俺はその言葉に驚きを隠せなかった。まさか、結衣から『イチャイチャ』という言葉が出てくるとは思ってもいなかったためだ。事態は予想以上に深刻なようだ。
「そのくらいお安い御用だな。」
その回答に結衣の表情が一瞬、笑顔になったかと思いきやまたすぐに顔をそっぽに向けてしまった。
「ど、どうかしたのか?」
その変化を見ていたため俺は再び声をかける。
「そういえば、忘れるところだったけど学校の後輩に勉強を教えてるって本当?」
その言葉を聞き、俺は体を硬直させる。
「・・・それは誰に聞いたんだ?」
「私の質問に答えてくれたら教えてあげる。」
(クッ、我が妹ながら交渉がうまいな。)
結衣に言い回しに舌を巻くしかない。
「・・・本当だ。」
俺は素直に答えた。
「そっか。隠してたのは悲しいけど正直に話してくれたから許してあげる!」
すると、結衣はいつもの結衣に戻って俺の腕に体を絡めてきた。慎ましい胸があったっているがそんなのお構いなしと言わんばかりに密着してくる。
「結局、その話は誰から聞いたんだ?」
「ふふっ、なーいしょ。」
誰からその話を聞いたのか知りたかったがうまくはぐらかされてしまった。
(まぁ、可愛いからいっか。)
多少気になったが結衣の笑顔にはかなわなかった。
「大好きだよ、お兄ちゃん。」
あれですね。こと結衣に関していえば翔斗は超能力者になりますね。その逆も然りですが。




