天宮 要は諦めない
舞とのデートが終わった後はいろいろと大変だった。帰ってきた俺がネックレスをつけているのを見るなり結衣は問い詰めてくるし、俺たちがデートするのを知らなかったのか澪は拗ねたりなどがあった。
疲れてぐだ~としていると不意にインターホンが鳴った。俺はその場から立ち上がり無言で玄関に向かう。
(・・・そう言えば、前にもこんなことあったな。)
脳裏に思い浮かぶのはこの間、謝罪に来た藤本のことだ。そんな頻繁に美少女が2度も家に来るわけがないと考えた。
「はーーい?」
「久しぶりね田宮君。」
そんな俺の考えは目の前にいたお嬢様によってすぐに否定された。
「・・・何の用でしょうか、お嬢様?」
「その前に入れてもらってもいいかしら。別に周囲の視線を気にしないというなら入れてくれなくてもいいのだけれど。」
反論を許さない口調でそう言ってきた。俺は小さく舌打ちをした後、お嬢様を家に招きいれた。
「それで?あんたまで一体何のようだ?」
「『あんたまで』と言うことはすでに藤本さんは来たのね。」
俺の質問に答えず、お嬢様はそう推測していた。
「・・・。」
「気分を害してしまったのならごめんなさい。少し気になったものだからついね。」
お嬢様はなんの悪びれもなさそうに弁明する。
「用がないのなら帰れ。」
俺は口元から極寒の声を発しながらそう伝える。
「あら、釣れないのね。」
お嬢様は特に怯えた様子もなく言い返してくる。
「お前に優しくしてやるほどお人よしでもない。」
「そう・・・。」
俺の言葉を聞き。お嬢様はなぜか少し驚いたようだ。
「では、まず最初にごめんなさい。」
そう言って、お嬢様は頭を下げてきた。
「どういうことだ?」
俺は何か裏があるのかと勘ぐってしまう。
「心外ね。私が素直に謝るのがそんなに珍しい?」
お嬢様は上から目線を決して崩さず話す。俺は小さく「あぁ。」と返事をする。
それと同時に俺はあることに気が付く。あの日の話を知っているのはお嬢様・藤本・舞の3人だ。そして、舞と藤本は俺に対する接し方を多少なりとも変えた。しかし、目の前の人からはそんな気配を一向に感じないのだ。そこから導き出される答えは一つ。
「・・・お前まさかまだ諦めてないのか?」
「えぇ、勿論よ。」
俺がそう言うと、お嬢様はやっと気付いたかといわんばかりに答えた。
「逆に聞くがまだそんなことが出来ると思っているのか?」
「逆に言うけどどうして無理だと思うのかしら。」
俺の内心は驚き半分、呆れ半分だった。
「とは言っても、あなたの力を借りたいとかそういうのはもういいわ。彼があなたのその行動を許しているのにも合点が行くというものよ。」
「お前、まさか・・・。」
「あなたを通して彼の元に行く人と元から付き合う気なんてさらさらない。そういうことなんでしょう?」
お嬢様のその言葉に俺は愕然とする。そこまで気付かれているとは思ってもいなかったのだ。
簡単に言うと、淳は俺から情報を買ってから自分にアプローチをしてくる人と付き合うなんてありえない。と言うことだ。
「とは言っても、彼の友人として多少なりとも手伝ってもらうこともあるでしょうからその時はよろしくお願いするわ。」
「・・・変わったなお前。」
俺の言葉にお嬢様は頭を振る。
「何も変わってなどいないわ。知らないようだから教えてあげる。私、狙った獲物は逃がさないの。」
お嬢様はいつものように偉そうに言う。
「淳も面倒な奴に目を付けられたもんだな。」
これからの淳のことを思い浮かべながら俺は心の中で手を合わせた。




