四大美女 『藤本 明日香』
高崎への情報提供からはや3日が経っていた。ちなみに、高崎は俺のアドバイスしたとおりに手作り弁当を作り、クラスメイトの目の前で渡していた。俺の予想通り淳は顔を引きつらせながらしょうがなく弁当を受け取っていた。おいしそうに食べていたことから作戦は大成功といえるだろう。
「おはよう、翔斗。この間はよくもやってくれたね。」
今までのことを回想しているといつの間にか教室に着いており、着いて早々に淳に絡まれた。
「さて、何の事だか分からないなぁ?」
俺は淳の追及に対してすっ呆けるを選んだ。
「あれは、一本取られたよ。まさか、あんな方法で来るとは思わなかった。」
淳は爽やか笑顔を浮かべながら、先日のことを振り返っていた。
「確かにあの状況なら受け取らざるをえないからね。」
「面倒なことをしてくれた御礼だ。」
俺は、今回の件についてクラス内での『目立たない』という目標をあっさりと壊してくれた淳への反撃もかねたものだった。
その後は、数分も経たないうちに先生が来たため俺たちは席に戻った。
それから授業は進み、昼休みに俺たちは高崎も含めた4人で昼食を食べていた。
「そういえば、3人は幼馴染なんだよね?」
黙々と昼食を食べていると高崎が口を開いた。
「うん、物心つく前から一緒だよ。家も並んでいるしね。」
澪が微妙にうれしそうな声で答えた。
「羨ましいなぁ~、私にはお兄ちゃんはいるけど幼馴染とかはいないから。」
高崎は可愛らしく口を尖らせて言った。
「でも、そんなに良いものでもないよ?」
そこに、淳が反対意見を挟む。
「あぁ、距離が近すぎて些細なことで喧嘩になることも少なくないからな。」
それに、俺も同意の言葉を述べる。
「喧嘩なんてするんだね。」
高崎は驚いた様子になった。
「そうだね、最近はしてないけど基本的には喧嘩をするのは僕と翔斗でそれを止めるのが澪って感じだったよね?」
淳の説明に俺と澪は頷く。
「・・・澪は怒るとかなり怖いからな。俺たちは澪に歯向かう事なんて恐ろしくて未だにできねぇよ。」
俺が過去のことを思い出しながら言うと淳もそれに激しく同意した。
「もう、やめてよ。昔のことでしょ。」
その反応に澪が恥ずかしそうに声を上げた。
「田宮先輩はいらっしゃるでしょうか!」
すると、教室の中に元気いっぱいな女子の声が響き渡った。
声のした方向に視線を向けると、その女子とバッチリ目があってしまった。すぐさま視線を逸らすもすでに遅かった。
「なんで目を逸らすんですか、田宮先輩!」
そう言いながら、俺に近づいてきたのは四大美女が一人『藤本 明日香』だった。ちなみに、藤本は一年生である。
「次から次へと、また面倒なのが来た。」
「田宮先輩の分際で生意気です!それとも、クソ虫先輩と呼んだほうが良いですか?」
俺が誰にも聞こえない程度の声で呟くと藤本の地獄耳がそれを拾ったのか皮肉を込めた言葉で返してきた。
「おい、藤本。話があるなら場所を変えるぞ。付いて来い。」
しかし、『クソ虫』という言葉を聞いた淳と澪が顔を歪めたのに気付いた俺は二人が何か言う前に藤本を連れて教室を出た。
場所を移し、俺は藤本を連れて非常階段に来ていた。
「それで、俺はお前のことなぞ知らないのだが教室にまで来て一体なんのつもりだ?」
「はい、私は時坂先輩に一目惚れをしてしまったので情報をください!」
俺が訪ねてきた理由を聞くと、隠すつもりもないのか大声で宣言した。
「それなら、前払いだ。」
俺が対価を要求すると、藤本はあっさり100円を差し出してきた。
「それで、なにが聞きたいんだ?」
「はい、私が聞きたいのは。時坂先輩に付き合っている人、もしくは気にかけている人は居ないのかですね!」
大抵の奴は必ずと言っていいほどこの手の質問をする淳が好意を抱いている人がいないのなら狙おうかなといった感じだろうか。
しかし、俺から言わせれば気になる人がいるから諦める程度の恋ならそんなもの捨ててしまえと言いたい。
「淳に付き合っている人、気にかけている人はいねぇよ。」
「そうなんですか、ありがとうございます!」
俺が藤本の期待通りの答えを言うと藤本はとてもうれしそうな表情になった。
「それじゃあ、次の機会もよろしくお願いしますね!」
そう言うと、藤本は走り去っていった。
俺はその純真無垢な藤本の様子を見て思わず悪態を漏らした。
「くっだらねぇ・・・。」