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1対1

「そん、な...!」


抜けていく血液、

抜けていく意識、

抜けていく体力...


奴の言葉のままになりそうになる


まだ、だ


そう踏みとどまろうとする希望は失せ始めようとしていた


下品な笑い声が聞こえる


「はっはー! ザマぁないねぇ?

 いつぞやに私を倒すとか言ってたが...

 所詮は人間風情に神霊様が一人追い出せただけでも頑張った方か...」


息も絶え絶え敵を前にふらつく体が倒れないように踏みとどまる。

ここで倒れればもう、二度とは立ち上がれない

そう感じた



「ハア...ハア...お前は...誰なんだ...?」


声を振り絞る


「ん~? お前が軽鬱としていた状態に決まってるだろ?」


「違う!!」


声を張る

腹から出すことが出血を促しても気にはしない


「お前はどこの悪霊だ!

 ハア、くっ...3匹も潜伏してるなんて...考えられない!!」


霞む視界で奴が嫌らしく笑うのが見えた


「ああ~...じゃあ、冥土の土産に名乗ってやるよ...

 私は...いや、私らは宗片三女神(しゅうへんさんめがみ)...!

 お前の相手をしたのが、蛇心姫(だしんひめ)

 そして今の私が、田儀津姫(でんぎつひめ)

 あともう1柱が...一基志間姫(いっきしまひめ)だ」


最後の姫様だけ苛ただしげに紹介があったが

驚きなのは


「神霊とは言え3人も...憑依出来るのか...!?」


「そう、私らは姉妹なんだ...内1柱が憑依出来て...

 あとの2柱に出来ないことなんかないんだよ!」


3体にも憑かれていれば精神が不安定になるのも当たり前だ...!

黒田さんはこんな重責を背負っていたのか



「一番下の一基志間姫が入れたから私らは続いたのさ、コイツにね」


その答えにピンと来た

死の淵にいることによってここに来て脳が冴え渡り始めたか...?

怪我の痛みを忘れて考えが纏まり始める



「まさか...元々はその三女の一基志間姫だけだったんじゃないのか?」


その言葉にピクリと反応したのを見逃さなかった


「神道ってのは主に多神教だが、神社は1柱の神様を祀って建てられることもある」


「黙れ...」


小さく聞こえただけなので無視する


「特に神様ってのは人気がハッキリするからなぁ...姉妹の中でも」


「黙れ...!」


知らない知識と活力が湧いてくる

嘉男くんから受けた神霊の力が更に解放され始めたか...!



「それで三女の神様だけはあとの2柱に比べて人気が高く、

 黒田さんの神社でも一基志間姫しか祀られていなかった!

 それがお前は気に入らなかったんだ!!」


「黙れ!!」


今や大声になって

神様っぽくなく怒って顔を紅潮させている


「そんな訳で全国規模で三女だけが贔屓を受ける中、

 次女のお前は我慢の限界だったんだろう?

 そこに丁度黒田家という神降ろしを生業にしていて

 さらに三女を祀っている家系だと知ると目を付けて

 出来の良い娘が生まれた瞬間から

 憑依することを画策していたんだ!!」


「......」


身体をワナワナと震わせて声を出すことも出来ない怒りが伝わってくる


つまり図星ってわけだ


腹も刺されたことも忘れて勢いそのままに止めに掛かる



「言ってみれば然るべき評価を受けることが出来ず、

 三女が羨ましかったんだ...

 それでどうにかしてまず憑依出来る人間を見つけ、

 その本体の願いを勝手な解釈で叶えてやった上で

 後腐れなくその体を乗っ取ってから

 自分を祀る様にさせたかったんじゃないのか...?

 それも上手く行けば全国を視野に入れて」


彼女はもう武器のナイフをも投げ飛ばしたそうにしている

形勢は逆転していた。

 


「言っとくがもう神様が主役で崇められてるような時代は終わってるんだぜ?

 それなのに飽きずに今までそんなロクでもないことを考えていたとは...

 まあ...

 妹に嫉妬でこんなことをするとは...

 神様にしては人間らしく愛嬌があって人気が出るんじゃないか?」


「!!」


手の平を突き出されて、怒りの突風攻撃を受けた


しかし今度は少し体を押されたくらいで何てことはない



当の本人が自身の力が弱まっていることに驚いている


その本人でさえ知らない理由を俺は知っていた



「どうやら先ほどの戦闘での消費と

 長女の蛇心姫の離脱で相当、霊気を持って行かれたようだな」



その一言に明らかに彼女は狼狽を見せた



それを見取って俺がゆっくりと近付く



腹を探ると傷は浅くなっていた。

痛みは今や勝ち戦となった状態によって

噴出したアドレナリンで気にするほどではなくなっていた



可哀相な次女は気圧されるように後退する



「に、憎たらしい分家のガキから受けた力で傷が塞がったのと

 私たちのことを知ったような気でいる程度で!

 勝ったと思うなよ!!」


手に持つナイフを最後の頼みに振り回す



ここに来て窮地を友の神霊に助けられ、今に仇の神霊を追い込んだ



「随分と神様ともあろうお方がワガママをしすぎたようだな...

 今は彼から受けた力も消えた、

 1対1でしっかり相手してやるよ!

 田儀津姫!!」


「気安く呼ぶな! 殺してやるぞ、人間!!」



今ここに最終決戦が始まった。

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