夢の中にて
「じゃあ、お守りについてなんだけど...
...知ってるみたいだね」
「ああ、パスが繋がった時ほんの少し嘉男くんの過去が垣間見えたんだ」
あの壮絶な精神力の一点集中の時は気にもしなかったが
起床後、熱にうかされている間に
彼の記憶も摩天楼のように自分の脳内に広がってきたのだ。
そこには...
「俺と黒田さんに追いかけられてる視点の記憶があった」
それを言うと照れ臭そうに彼が笑った
「ははは...実はちょっと前から奈々姉ちゃんを尾行しててね...」
思えば今の彼の服装もフード付きであるし
追いかけた時の格好だったかもしれない
「なんで...そんなことを?」
彼は悲しそうな笑みを浮かべて語りだした
「実は姉ちゃんとうちの関係は言ってみれば、本家と分家なんだよ」
本家と分家...
どこかで聞いた響き...
あ!
「ホッケーとブーケ!」
ついつい口に出して真面目な話に水を差してしまった
それにしても先輩はこのことを言っていたのか...
近しい人...本家と分家...
考えれば親戚の人という予想は当たっていたし
変な聞き間違いをして間違った解釈をした方に囚われなけば
神社の家だと想定して割り出せたかもしれない情報だ。
「ご、ごめん...続けて」
肩をすくめてスッと椅子に座った
「まあ、それで...言ってみればうちは分家で、
うちのお母さんや婆ちゃんは
立派な敷地とお社がある本家の奈々姉ちゃん親子のことを...
妬んでたんだ」
名家にはよくある問題なのだろうか...
「うちなんかは一瞬しか見なかったかもしれないけど、
山の方にあって
そのお社も更に長い階段を上った先にあるんだ。
階段の入り口付近に僕たちの家があるんだけど...
隅っこの倉庫から必死に抜け出してきたから...分からないよね」
やはりそう言った立地条件においても
本家の方が人を吸収しやすい有利なものを選べるようだ
「長くて傾斜のキツイ階段の先にお社があるもんだし、
そもそも山の方まで来る人なんて
そういないから、やっぱりそこが婆ちゃん達は気に入らないんだと思う」
名家に生まれても尚
左右される運命というものに同情を禁じ得ない
「それで僕は小さい頃から本家は意地悪な人しかいない...
みたいに育てられてたから、
婆ちゃんの様に憎々しく思うってよりかは怖い人ばっかりなのかなって
親戚の集まりの時も関わらないようにしてたんだ。
大体、正月やお盆に集まるのも婆ちゃんと母さんの機嫌次第だったなぁ...」
棟梁となる人が女の人が多いようだ
男でありながら嘉男くんが凛々しさやたくましさよりも
女の子っぽい顔になってしまったのも頷ける。
「そんなだから、
今でも大っぴらに本家の姉ちゃんと会うことは許されていないんだ...
だから最近姉ちゃんにその異変が起きて時に
何か嫌な予感がして陰ながら様子を窺っていたんだ」
なるほど...
「それじゃあ俺と彼女が――」
「そう、あの時こっちは有力な情報が欲しくて寒い中尾行してるのに
目の前でイチャついてたから、つい怒っちゃったんだ...」
「そ、そうなんだ...」
なんだかこの話はどちらも照れ臭い話だ、と感じて
すぐさま話題を切り替えた
「そ、それでいつに黒田さんと仲良くなれたの?
ほら、集まりにもあまり出れなかったんでしょ...?」
そう聞くと彼は懐かしそうに答えた
「ああ、そうだね...
確かそんな数少ない集まりで...
多分小学生になってから2年ぶりくらいに、
正月でこの家に集まった時だったかな...」
過去に想いを馳せて
彼は黄色に広がるこの世界の遠くを眺めた。




