頼みの綱
俺は彼女が精神病や悪霊の域を超えた事態に巻き込まれたことを知って、
すぐに詳しい情報に精通していそうなよっちゃんに手短に状況を伝えて意見を仰ぐことにした。
「今そんなことが...」
「除霊は可能だと...君は思うかい?」
難しそうな顔で腕を組み
唸って悩んでいるようだ
「確かに悪霊ならその方法でも出来るってバアちゃんが出来るって言ってたけど...
笑い話みたいなノリで言ってたしなぁ...」
やはり強引な作戦に過ぎるようだ。
相手が所詮元は人間であったりする亡霊程度でない限りは通用しないのかもしれない...
「でも...」
顔を上げて真剣な表情で彼は言う
「姉ちゃんが浬さんを思う心は今に歪み切ってはいるけど本物だと...僕は思う。
魂の衝突で憑いている存在を追い出すというなら、
浬さんが戦うことは有効かもしれない」
強い口調で言い切ったその発言は少し俺の気持ちに自信を持たせてくれた
「やっぱり、俺にしか出来そうにないか...?」
「うん...」
やはり俺がやるしかないんだ
そう覚悟を再確認した
だが...
まだ、俺は揺らぐような気持ちがどこかあるような気がしてならない...
この気分は何なんだというんだ......
「ただ...」
「今の浬さんじゃ...勝つことは愚か、姉ちゃんの...支配欲に負けるかもしれない...」
「支配...欲?」
彼は姿勢を正して俺を見据えた
「さっきの姉ちゃんの走力のような人間に出せるはずのない身体能力も同じで、
憑依された者は限界に近い能力が出せる...というのは知ってるよね?」
俺は頷いた
「でもそれはあくまで悪霊に限って話なんだ」
「そう...なのか?」
なんという事実だ
悪霊でない場合は違うというのか
「うん...僕たちに憑くのは神霊なんだ。
写真に写ってしまうような奴や人を呪ったり怨念でこの世に居座る霊とじゃ格が違うんだ」
彼の語りにも熱が入る
「だから...
憑依した人間が出せる限界の能力までしか亡霊は引き出せないんだ」
それでも驚異的だというのに
まだ何かあるというのか...
「しかし神霊なら...超人的なまでの力量を引き出すことも可能なはずだ...」
ああ...
だから飛びぬけた身体能力も、
学校全体を巻き起こす怪奇までも
現実のものに出来たというのか...
「それに憑依として悪霊も神霊も同じことは...
憑いた人間持つ気持ちで特に強いものを拡大させるんだ」
つまり、それが...
「さっき言った支配欲も...拡大されて暴走が起きてるんだ...
それも超人的なまでの力と精神を引き出してね...」
そんな...
そんなものに勝てるものなのか...?
俺の精神が押し負けて
呑み込まれれば、全てが終わってしまうのではないか...
「そうだね...姉ちゃん本人の気持ちの拠り所である浬さんの魂も手中にしてしまったら
もう誰も皆救えなくなってしまう...」
勝負の土俵にも立てていなかったのか...!
悔しさに手に力が入る
何か...何かないのか...!
せっかく諦めない覚悟を持つ、
気を強く持てる自分になったというのに!
「嘉男くん...もう手はないのか...?」
その時、彼が立ち上がる音が聞こえた
「だからこそ」
顔を上げれば彼は真っすぐに俺を見つめた
「僕と一緒に来て欲しい場所があるんです」




