本当にあった怖い話
「いや、お前に相談して本当に良かったよ」
「ん?ああ、当然のことをしただけだって、気にすんな」
俺は数ヶ月間の間嫌がらせを受けていた。最初は筆箱を隠されるとか、陰口だとかそんなレベルだったが、最近では弁当の中が空っぽになっていたり、教科書を破られたりとエスカレートしてきたため、流石に我慢ならなかった。
しかし、この一週間は奴らの嫌がらせを回避できている。それもこれもあいつのお陰だ。的確に嫌がらせの情報をくれるので、トイレの上からの水を掛けられることもなく、平穏に過ごせている。
「でも、やられっぱなしでいいのかよ?」
一週間経ってあいつが聞いてきた。確かに、あいつがいれば奴らを黙らせることができるかもしれない。
「そうだな、そろそろ痛い目をみてもらうか」
あいつから提案された内容は、ボイスレコーダーで会話を録音して教師に証拠として提出するといったものだった。
早速俺はボイスレコーダーをロッカーにセットした。
「次の日の六時に回収してくれ。あいつらはいつも五時過ぎに集まってるから」
長い嫌がらせ生活の幕引きが来ると思うと心が踊るようだった。
六時になったので、ボイスレコーダーの回収のため教室へと戻った。いつも通り机に落書きされているがそんなものは後回しだ。
ロッカーを開け、ボイスレコーダーを回収しようとした。しかし、ロッカーには埃一つ存在しなかった。
「お探しの物はこれかなー?」
教室のドアを開けて四人の人物が入ってきた。奴ら、俺に嫌がらせをしていた三人。そして、考えたくなかった人物が隣にいた。
「いやあ、楽しかったぜ。お前との友達ごっこ」
あいつはケラケラと笑いながら俺を見下していた。その手にはボイスレコーダーが握られている。
「何で、お前が、そこにいるんだよ」
「何でって?お前本当に気付いてなかったの?馬鹿だなあ、こいつらとつるんでなけりゃ何をいつするかなんて分かるわけないだろ」
あいつは、ボイスレコーダーをその辺に適当に捨てて近づいて来る。
「いやあ、その顔。その悔しそうな顔が堪んねえな」
俺は予備で掃除用具入れに仕掛けていたボイスレコーダーを取ろうとした。
「くそっ!何でないんだよ!」
だが、いくら探しても見つからない。また奴らに持ち去られたのだろうか。
「何やってんだよ、掃除用具入れに手を突っ込むとか汚いお前によく似合ってんな」
そこからの記憶はなかった。
「この学校の七不思議の一つなんだけど、教室に自殺した幽霊が出るんだって」
「普通の教室に七不思議があるのは珍しいね」
掃除をしていた私たちはこの学校の七不思議について話していた。彼女はホラー好きで映画もよく見ているようだ。私はそこまで好きではないのだが。
「ふぅ。もう終わろっか」
箒を片付けると同時に何かが掃除用具入れから降ってきた。
「何これ?埃まみれだ」
金属音を立てて落ちたのは年季の入ったボイスレコーダーのようなものだった。
「これ、まだ再生できそうだよ」
「えっ?やめといたほうがいいんじゃないかな?」
「いいじゃん。ちょっとだけ、ね?」
結局、彼女の押しに負けて再生することになった。内容はいじめだった。男子生徒に嫌がらせをする計画を立てているようだ。彼女は興味津々だったが、私は話半分に聞いていた。途中父にそっくりな声が会話に混ざっているのを聞くまでは。