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~プロローグ~
目の前にぽっかりと開いた入り口、その前に漆黒のローブを羽織った男が一人。
「ここか…こんなところ普通なら素通りするところだけどな。」
男はどう見ても一人なのに誰かに話しかけている。男の腰には一振りの剣。だが、剣と呼ぶにはあまりに短い。それは【短剣】と呼ばれる武器だった。
「中に入れば自動で閉まるんだな?」
ここは朽ち果てた遺跡の中ほどに位置する特に変わったところのない通路の一角。いわゆる隠し通路だ。だが、ここは永遠に開かないはずだった。
「まぁ、誰も来ないだろうがさっさと行くか。」
そう言うと男は何の躊躇もなく一人で入り口の中へ入っていく。そして男が中へ入って一分後、その入り口は元の朽ち果てた遺跡の壁になっていた。
この男こそ後にこの世界で大きな波乱を巻き起こす者であった。