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5、第三王子ユーアティリオ

暑いですねえ!ブラジオール王国では春です。

クローディアスの頭に花が咲いてるので。

そして、チェリーは、奥様達とお茶を飲み、この世界の勉強をして、お手伝いもして数日を過ごした。


その日クローは、早めに仕事を終え王宮から帰ってきた。

早速、チェリーを探す。

彼女はどこだろう。セバスは、庭仕事に出ていると言っていたが・・・。

自分の目の届かない所にいる彼女のことを想うと、心がムズムズする。

見つけた!あの大きな麦わら帽子が、彼女だろう。

庭師の若い方と花の手入れをしているようだが・・・、距離が近いだろう。

笑い合う二人を見ると、今度はムカムカする。

近頃は、頭の中も心の中もなんだか忙しい。きっと顔には出ていないだろうが。


あ、また転んでいる!危ない。本当に目の離せない子だ。

近寄っていって、声をかけた。


「・・・傷を見よう。」

「わぁ!お、おかえりなさい・・・。なんで転びそうになると会うのかしら・・・。」


 いつものように手をつないで、屋敷の中に入った。

傷は・・・・・膝のようだ。メイド長を呼ぶべきだろう。


「! ス、スカートを上げないでくれ・・・。」

「え、ごめんなさい。ダメだったのね?」

「今、メイド長を呼ぶから・・・。大丈夫だ。」


 顔が赤くなった彼女は可愛らしい。

メイド長に傷の手当と、お茶の用意をしてもらった。

それにしても、びっくりさせられてばかりだ。

お菓子を食べさせてから話を聞くと、彼女の世界では短いスカート丈で、足を出しているそうだ。

なんということだ!俺だって見たことがないのに、男性に見せて歩いていたとは!

驚きとムカムカで心が忙しい。


 でも、彼女はそんな俺をじーーっと見つめている。

・・・そうやって、ずっと俺を見て、そばにいてほしい・・・。

そのまま二人でしばらく、見つめ合っていた。



******************************



 庭仕事中、またもや転んでしまったわたし。

もうちょっと器用なら転ばないでいられるのかな。

転ぶと、さっと現れるのが次男さん。

帰っていたのも知らなくて、突然の登場にびっくりする。

いつものように手をつながれて、お屋敷に行った。

はいはい、もう転ばないように気をつけます~。

無表情だけど、危ないだろうって思っている顔だし。


 膝の傷を見ようと、スカートを上げたらダメだったみたい。

メイド長さんが、手当をしてくれて、お茶までセットしてくれた。

次男さんは、無表情なのに、目が心配だといっているみたい。それに、耳が赤いかしら。

驚かしちゃったわね。わたしも驚いたからおあいこかしら。

次男さんって、お菓子くれるし、本当に優しい人だなー。イケメンだし。

本当に整ってる顔ってこんな感じなのね。兄もきれいなんだけど強い男の人ってオーラがすごい。

もうちょっと顔を見ていたいなーー。



 見つめ合う2人は、隙間の空いたドアの外で、こっそり覗いている家族と使用人の皆さまには気がつかなかった。

(ああー。もうちょっと押せ押せでいこうよ!クローディアス!)


**********************************



 ある日、仕事中にチェリーのことを思い出して、ぼーーっとしているクローがいた。

 団長室で書類仕事をしている、騎士団長の第三王子ユーアティリオの手伝い中だった。


「おい!最近どうしたんだ。ぼーっとしていることが多いぞ。」

「・・・・。」

「無口は変わらんが、顔がゆるんでいるときがあるぞ。何かあったのか?」


 首を振る、クローディアス。

幼馴染の俺にも言わないところが、どうも怪しいな。

近頃は仕事の後、別邸に急いで帰っているようだし。

よし、今日は後をつけて行ってみるか!



 伯爵家の別邸か・・・。久しぶりだ。小さい頃、よく遊んだな。

庭師のじいさんは元気だろうか。

 クローはエントランスで執事と話したあと、庭へ回った。

王子の俺が一人で外出できるわけもなく、侍従を連れているので、尾行もだいぶ離れてしまったが庭なら隠れやすい。

ん?少女・・・か?伯爵家にあの年頃の子供はいないはず・・・。

手をつないで歩き出したぞ!無表情のあいつの顔がゆるんでいるのが、俺にはわかる!

いくら伯爵が怖くて女が寄ってこないからって、少女はまずいだろう!

そんなことになっていたなんて、俺がなんとかしてやらなければ・・・!

とりあえず、街に出て高級娼館へでも連れて行くか・・・。

屋敷のエントランスで追いついて、声をかける。


「おい、クロー!少女はまずいだろう!俺がなんとかしてやる!出かけるぞ!」

「・・・。」

「第三王子のユーアティリオ様?なぜここに?」


 エントランスで執事が驚いている。

クローは無表情だが、ヒンヤリした空気を感じる。


「え、王子様なの?こんにちは♪・・・きゃっ!抱き上げないで猫じゃないのよ!」

「まて、クロー!」


 少女が俺に話かけると、クローは少女を抱き上げて行ってしまう。

慌てて声を大きくすると、執事がとりあえずと部屋へ通してくれた。

居間へ行くと、伯爵と奥方が揃っていて、クローの膝に少女がのっている。


「やあ!ユーアティリオ第三王子、お元気でしたかな。」

「お、おう。伯爵、ご無沙汰している。」

「突然の訪問とは、いかがいたしましたか?」


 お茶を出されたが、なんだか部屋中にヒンヤリした空気を感じる。

クローは、少女にお菓子を上げている。

そんな世話好きだったのか?お前!まるで猫のような扱いだが・・・。

奥方はニコニコしているが、家族公認なのか?少女はいったい誰なんだ。


「近頃、クローが仕事中ぼんやりしていることが多くて、どうしたのかと気になったんだ。」

「なるほど、そうでしたか!

チェリー、我が国の第三王子ユーアティリオ・サン・ブラジオール様だ、ご挨拶を。

クロー、手を離しなさい。」


 初めてみるクローの様子に目が離せないまま伯爵と会話をする。

しぶしぶ手を離したクローから降りた少女が、挨拶をした。


「初めまして、花園 桜子と申します。チェリーと呼んでください。

 伯爵家にお世話になっております。」


 歳の割にしっかりした挨拶で、所作も綺麗だ。

聞いたこともなく発音も難しい名前で、この国の者ではないようだ。

少女は、クローに手をひかれて、クローの隣に座った。

そんなに、クローが執着しているのなんて初めて見る!

びっくりしていると、伯爵夫妻は温かく見守っているようだ。


 御用が済んだらお帰りなさいと言わんばかりに、伯爵家からやんわりと追い出されてしまった。

呆気にとられていると、少女が庭の方へ行くのが見えた。

侍従に、少女を連れてくるよう指示を出し、馬車に乗った。


「きゃ!誘拐なの?誘拐なの?ちょっとテンプレすぎるわよ!って、王子様・・・?」

「すまない、ちょっと話を聞かせて欲しい(テンプレってなんだ?)。」

「困るわ、心配かけちゃう。え、お城行くの?見学していい?あら、お菓子?ありがとう!」


 なんで怖がらないんだ?まあ、子供だしお菓子でもやっておくか。

うーーん。可愛いとは思うがこの少女にどんな魅力があるんだ?

伯爵家みんなで応援しているようだったしな。

そういえば、どこから来たのか聞いていなかった。


「君は、どこの国からきたんだ。ブラジオール王国出身ではないのだろう?」

「えーーと・・・。異国の迷子さん?だっけ?日本という国から来ました。」

「何?それは!本当か? 父に報告しなければ!」

「国王様?あんまり会いたくないかも・・・。しょうがないか・・・。」


・・・諦めるの早いな・・・。まあいい、このまま王宮へ行こう。



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