御礼小話 十年後の非日常 上
長くなっちゃったので2話に分けて、続けて投稿してます!
1話目です。
「急で悪いのだけど、明日、家族揃って神殿に来てもらえないか?」
突然来訪したお義父様が、子爵邸の居間で、クローディアス達にそう言った。
小さな女の子を膝に載せたチェリーも、チェリーに寄り添って座るクローディアスも3人の子もきょとんとした顔でレインドーン・フルサル伯爵を見上げた。
「父上、何か神殿にあるのですか?」
「ちょっとね。明日何か用事があったかい?」
「いいえ。特に何もないですけど。あの、フリージアもですか?」
「お祖父様!みんなでお出かけするんですね!?」
「アッシュ、大人の会話に口を出してはいけないって言われているだろう。」
「兄様。・・・ごめんなさい。」
「いいんだよ、アッシェード。君は賛成かい?ダイキュルードもいいかな?」
「でもおじいちゃま、フリージアはちっちゃいからむりよ。」
「わたちもいくの~。」
「もちろん、マーガレットもフリージアもだよ。」
にっこり笑ったフルサル伯爵が、孫たちに言った。
「・・・わかりました。」
「ありがとう、クロー。ああ、普段着でいいよ。昼前には来ておくれ。
私は、先に行っているから。」
にこやかなまま、お義父様は帰っていったけど、一体何があるのかしら。
お義父様のすることは、たまに不思議な事があるけど、クローもわたしも慣れてしまって、疑問には思うけど流してしまうことにしている。
でも普段着って言ってたけど、神殿だし、もうちょっといい服で行かないとね。
次の日、大型の馬車にはしゃいだ4人の子をのせて、クローディアス・フルサル子爵一家は神殿へと向かった。
一般の人間は、婚姻式や新年のお祈り以外で、神殿へ来ることはあまりない。
子どもたちは、初めて見た神殿の大きさに、兄2人は緊張し、妹2人はキョトンとしている。
「おとうさまとおかあさまは、ここで『こんいんしき』をしたんでしょ!」
「あら、マーガレット誰に聞いたの?良く知っているわね!」
「セルジュアスおじ様にききました!」
「兄上のおしゃべりはあいかわらずだ・・・。」
「ところで、お義父様はどこかしら。」
みんなで神殿に揃って入って行くと、神官に大聖堂のホールのほうへ案内をされた。
大きなホールの正面に女神様の大きな立像が見える。
手前の祭壇にいるお義父様の方へ行くと、ホール中央に空間があり、魔法陣のような模様の丸いジュータンが敷かれている。
そこへ家族が揃って足を踏み入れた途端、落ちていくような浮遊感にびっくりして目をつぶった。
そっと目を開けると、手を繋いだ4人の子どもと自分にぴったりと寄り添うクローを確認した。
それから周りを見回すと、今いた神殿ではなく、高級なホテルのロビーの壁際に立っていた。
「・・・ここはどこだ・・・?」
「え、ホテルのロビー・・・って、ええ?」
「「「「お、おとうさま!おかあさまー!」」」」
4人の子が、ぎゅうぎゅうとくっついてくるのを抱き上げながらクローディアスが、チェリーを見る。
「・・・ここは、日本みたい。逆トリップ?ええ?なんでこんなところに?」
キョロキョロと見回していると、ホテルのフロント、スーツ姿の男性や、華やかなワンピースドレスの女性、蝶ネクタイのホテルマン、電気の照明に、日本語の案内板。
案内板に花園家会場の文字が見えた。
「・・・桜子?桜子か?」
「!兄さん!なぜこんなところに・・・。」
「ああ!会えて嬉しいよ!」
「義兄上・・・。」
「おじさまーーー!!」
「おお、一家揃っているんだな!?ちょうどよかった!これから父の引退記念パーティーがあるんだ。父母も百合香もお前に会いたがっているよ。サプライズゲストだね!」
「クロー、どうやら日本に来ているみたい。どうしてかはわからないけど、兄もいるし、両親にも会って欲しいの。パーティーに行ってもらえるかしら。」
「いままで挨拶もできなかった。もちろん君と一緒に行くよ。」
「お母様のお父さんとお母さん?僕達のお祖父様とお祖母様だね!」
「そうよ、ダイキュ。上手に挨拶できるかしら?」
「セバスに習ったから出来るよ!」
「僕だって、出来るよ!」
「わたしもできます!おかあさま!」
「わたちも、わたちも」
兄は、いつもの輝くような笑顔で子どもたちの頭をなでてくれた。
「ひとまず、私の指示に沿ってもらうしかないようだ、クローディアス君。
ここでは危険はないと思うが、君たちは離れずに一緒にいるようにしてくれ。」
「わかりました。」
「やっぱり叔父上は、魔法使いなんだ!」
「アッシュ!しーーっ!それは内緒にするって約束だろ!」
「あ、そうだった!ごめんなさい!」
クローディアスの足にくっついていた兄弟が話しをしていて、下の姉妹が抱き上げられた腕の上できゃっきゃっと喜んでいる。
チェリーが、クローディアスを見上げて、腕に手を置き寄り添った。
「大丈夫だ。俺は家族を守る。君と子どもたちさえ一緒ならどうにでもなるから心配するな。」
「クロー、ありがとう。」
微笑み合う2人を見て、子どもたちも笑顔になった。
パーティーが始まり、兄の挨拶が聞こえる。
一家6人は、扉の外で待機していた。
久しぶりの家族になんて言えばいいのかしら。兄さんはフォローしてくれていたみたいだけど、10年以上も音信不通の娘に両親が怒っているんじゃないのかなと桜子は少し心配になる。うつむく桜子の手をそっと握るクローディアスを見上げると、微笑み、心配するなと目で伝えてくる。そうね、ひとまず謝っておこう。なるようにしかならないわ。
『本日はサプライズでゲストを呼んでいます。皆さまには関係ありませんが、父母に私が用意したプレゼントです。暖かな目で迎えていただけると嬉しく思います!』
拍手の中、扉が開かれ、クローディアス一家が入ってくる。
「桜子!?桜子なのか!」
「さくらちゃん?まあ、何年ぶりなの!?顔をよく見せて!」
「お父さん、お母さん・・・。
10年以上も親不孝していてごめんなさい。」
「クローディアス・フルサルです。自国を離れることができずに、お嬢さんを頂いてしまい、今まで挨拶も出来ず、大変申し訳なく思っています。
ですが、サクラコを絶対幸せにすると、コーキ殿とも約束をしています。どうぞ、許してください。」
「君が・・・。この子たちはお前の子どもなのか?・・・私達の孫か。」
「「「「はじめまして!おじい様!おばあ様!」」」」
「長男のダイキュードと次男のアッシェード。長女のマーガレットと次女のフリージアよ。」
「まあ、みんな可愛い!挨拶もきちんと出来るのね、いい子たちだわ。
安心したわ、さくらちゃん。幸せに暮らしているのね・・・。」
「お母さん、孫にも会わせずごめんなさい。彼と子供達と幸せに暮らしています。」
「見たらわかるわ。さくらちゃん、イキイキした顔になっているもの・・・。今思えば、あの頃は諦めきった顔ばかりしていたわ。ごめんなさいね、気がついてあげられなくて。」
「泣かないでお母さん。あの頃も、もうちょっと頑張るべきだったのかもしれないわ。でもいいの、彼に出会えたから、わたし変わったのよ。」
「クローディアスさん。さくらちゃんをお願いしますね・・・。」
「(コクリ)・・・彼女を幸せにします。」
「桜子。」
「・・・百合香姉さん・・・。」
「・・・随分久しぶりだわ!!ひどいわ!兄さんとばっかり、私をのけものにして!心配していたのよ!」
泣きながら、わたしを抱きしめる姉さんにびっくりしながらも、笑みがこぼれてしまう。
姉さんは感情豊かで、突っ走ってしまうけど、わたしにも優しい人だった。
「ごめんなさい。子育てに追われて、あっという間の10年だったのよ。事情もあったけど。」
「義理の弟は、この方?ちょっとアナタ、桜子を大事にしているの?可愛い妹に何年も会えなくて寂しかったんだから!」
「・・・申し訳ありませんでした。サクラコを世界で一番愛しています。一生守って大事にします。」
「・・・まあ、合格よ。・・・桜子、男を見る目があったようね。そうだ、私も結婚したのよ。社内恋愛でね。」
パチンと素敵なウインクで、周りの人達に魅力をばらまいているような華やかな姉。
地味だったわたしにも眩しかったけど、今は微笑ましく感じる。
姉の後ろにいたダンナ様を紹介してくれた。エリートサラリーマンっぽくて、メガネの似合うかっこいい人。姉さんから一歩下がって護衛みたい。
手を繋いでくる心配そうなクローディアスと目が合う。
わたしなら大丈夫と意味を込めて、にっこり笑ったら笑い返してくれる優しい旦那様。
子供達は、父と母と兄と話をしている。
姉を見ると、子供達を眩しそうに見ている。
花園家、母は薔薇で薔子。長女・百合香、次女・桜子。
桜子の長女がマーガレット、次女・フリージア。
お花シリーズの名前です!(゜∀゜)




