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1、もうちょっとなわたし

初作品でドキドキです!(*≧∀≦*)

よろしくお願いします!

 私は、『もうちょっと』の星の下に生まれてきた。


 誕生日は3月31日。あともうちょっとで学年で早い生まれになったのに。

子供の頃の誕生日の遅さは、成長に比例する。

いつもちびでやることの遅いわたしは、『もうちょっと頑張れ』と言われた。

(兄はいつもかばってくれた)


 家族はエリートで、会社経営の父と母、10歳上の兄も3歳上の姉も優秀な人だった。

わたしが小学生の頃には、何を頑張っても、容姿・立ち居振る舞い・頭も良い姉と比較されてしまい、周りから『あなたも、もうちょっと出来るでしょう?』と言われた。

(兄はお前も良く出来てるよと褒めてくれた)


 姉との比較にすっかり色々なことを諦めたわたしは、姉の通う私立のお金持ち学園ではなく、中学・高校・大学と もうちょっと落ちる学校に行き、もうちょっと人気のない会社に入社した。

(兄の勧めで、女子校だった)


 恋愛も女子校で出会いは少なく、もうちょっとでお付き合いできそうになっても、兄に反対されて終わった。

(兄は、あの男はだめだ!といった)


「もうちょっと諦めるな!」と言う世話好きな友人達はキレイ系女子で、わたしももうちょっと美人だったらいいのになぁと思っていた。

(兄はかわいいと褒めてくれるが)



 それでも、もうちょっと顔がよければという男と、もうちょっとで結婚するはずだった。



 そう、はずだった。

 会社で出会った男で、熱烈な恋愛じゃなかったし、もうちょっと盛り上がらない感じのまま、結婚にうなずいたけど・・・。

----同僚の新入社員に寝取られるとは思わなかった。


 今日は、その二人の結婚式で、同僚として披露宴に出席させられた。

「あんたの方が可愛い」と、親友の同期は怒ってくれたが、もうちょっとばかりであきらめ癖がついていた わたしはすでになんとも思わなかった。


 帰り道で、ハデハデだった結婚式にうんざりして もうちょっと地味でいいのにと考えていたわたしは、足元に穴があったことに気がつかなかった。

あっという間に マンホールの穴に落ちたらしい。

 最後に見たのは、『工事中』の看板を持っていた工事のおじさん。

もうちょっと早く看板置いてよーーー!と心で叫んだ。



***********************************



 ああ、もうちょっとばかりの人生だったな、次はもうちょっと幸せになれたらいいなと思っていると、気がついたときには、なんと地面についていた。

衝撃もなく地面につくなんてありえるの? ここはどこだろう?

なにやら穴っぽくて、すぐ上の穴の外が明るい。落ちてきた穴はどこかしら。

落ちたはずなのに変だなー、地球の『反対』側まで来てたりして・・・。

日本の反対はブラジルだっけ?


「おーーい、おーーい、助けてーー。ヘルプミー!」


 大声で助けを呼んでいると外人のおじいさんと青年が穴を覗いた。


「誰かいるのかい? おや?こんなところにお嬢さんが。」


 2人は手を伸ばして、私の手をつかみ引っ張り上げてくれた。

おじいさんは庭師とその弟子だと言った。

アルプスの少女のおじいさんにそっくり!じゃあ、青年はピーターかしら!


「もうちょっとでお昼だから休憩に帰るところだったんだよ。

 ・・・偶然に見つけてよかったねえ。」


にこにこと笑うおじいさん。

ん?日本語が通じるの?


「おじいさん、ここはブラジルですか?」


おじいさんは、首を振りながら言った。


「? いや、ブラジオール王国のフルサル伯爵家の別邸だよ。」


うーん、おしい!もうちょっとで正解って・・・ブラジオール王国?

どこよそれーー!?

まさかのテンプレ、異世界トリップですか・・・。

そうだ、こういう時は衣食住を手に入れなきゃ!

読書の趣味のあるわたしは、この手の話も大好きなので、すぐ思いついた。


「お嬢ちゃんは誰だい?きれいなドレスでお客様かい?」

「おじいさん、わたし、迷子です!」


おじいさんは、びっくりしているみたい。


「家出かい?親御さんが心配しているよ。」

「帰れないんです!ここに置いてください!」


 あっちもあんまり幸せじゃなかったし、結婚もなくなったし、仕事もいまいち。家には兄も姉さんもいるし、戻れなくても大丈夫かな?

 わたしは、青年をじーっと見ながら、この人はいくつだろう?わたしよりもうちょっと年下だねーと とりとめのないことを思っていた。


「しょうがないねえ・・。どっかいいところのお嬢さんみたいだし、そのうち迎えが来るだろうよ。」


 おじいさんはため息をつきながら、なぜか上気した顔の赤い青年と話していた。

結婚式の帰りだったので、ドレスっぽいワンピースだし、助けてくれた時に見ていた、労働者じゃないキレイな手をしているわたしを勘違いしているんだな。


「ありがとう!よろしくお願いします♪」


 どうやら、なんとかなりそうだ。






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