幼女と旅路
見つからないように荷物の陰に隠れ、気配を消す。
馬車はゴトゴトと揺れながら進んでいる。
揺れは幼女装備の効果か問題ない。
快適な乗り心地だ。
そうでなければ幼女に荷馬車は荷が重い。
ここまで乗り物酔いにもなっていない。
「みゃ〜」
「っ!!」
鳴き声に振り向き、目を見開いてしまった。
猫がいた。
知っている猫。
知猫のねこがいた。
気付かれずにここまで来るとは・・・
ねこ、お主できるな。
人差し指を口に当て静かにするように伝える。
分かってくれるかは微妙だが信じるとしよう。
いつの間について来たのだろう?
気配を絶ち、ミッションを達成し、もはやこの道の達人にでもなった気でいたが・・・
上には上がいるということだ。
この歳にして慢心するとは・・・
俺の幼女道はまだ始まったばかりだというのに情けない限りだよ。
ねこをそっとひと撫でする。
気持ち良さそうに目を細める。
俺は猫派でも犬派でもないと思っていたが・・・
こうしていると実は猫派だったんじゃないかと思えてきたな。
ねこが首を傾げる。
「はっ?!」
俺は重大なことに気づいた。
猫派じゃないねこ派だったんだ。
やっぱりどの仕草もかわいい。
俺も幼女になってかなりかわいくなったと思っていたが・・・
これも慢心だったのか。
それはそうだ。
そもそも、生まれつきの幼女と中身が男の幼女じゃ年季が違うしな。
生まれつきの幼獣とは格が違うってことか。
荷物を覆うホロは内側に支柱があるので四角い空間を作っている。
何だか軽トラにでも乗っている気分だ。
実際に乗ったことはないけど。
ホロと台車の間に僅かに隙間を作る。
バレないように慎重に、だ。
その隙間から目を細めて外の様子を窺う。
気分はブラインドから外を見る刑事のそれだ。
ふっ、朝日が目に染みるぜ。
まだ日も昇る前から出発したのだ。
この日の昇り具合だと時間はそれなりに経っているはずだ。
しかし、進んだ距離としてはどうだろう?
馬車はスピードを出しているとはいえ、自動車みたいな速さじゃない。
馬車の旅は数日は続くのだろう。
何日掛かるのかは調査していなかった。
ちょっと問題かもしれない。
寝ている間に見つかってしまう可能性がある。
食事の問題もある。
かなり杜撰な計画だったようだ。
出発してから気づいてもどうしようもない。
失敗した時は今後どうリカバリーするか。
これが大事だ。
俺たちのミッションはこれからだっ!
傍らにいるねこの背に手を当て、もう一方の手で明後日の方向を指差す。
気合も入ったところでどうにかする算段を立てねば。
ねこに見張りを任せるのは申し訳ない。
寝るときはここから離れるべきか?
それだと身の危険があるかもしれない。
食事はこっそり拝借するか、自分で確保するか。
う〜ん、どうしよう。
ゴトン
おや?馬車が停止したようだ。
再び外の様子を窺うと太陽は真上を過ぎている。
考えているうちに時間が経過していたようだ。
昼休憩でも取るのだろうか?
一般の人も乗っているから休憩はしっかり取る方針なのかも。
さて、それではこの間にお花を摘みに行こうかしら。
え?それはもう、文字通りですとも。




