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幼女と夢

テーマは自然の温もり。

大きな岩石と太い樹の根が大胆に配置され、土の壁が趣を感じさせる。

地下に作られた空間は年間を通して安定した室温を保ってくれそうだ。

頭上には明かりを取り込む天窓。

今も月明かりでこの空間を照らしている。




「痛っー」


どうしてこんなところに?

一瞬そう思ったが次の瞬間には思い出していた。

何でもない事実だ。


倒れて、ウサギに攫われて、閉じ込められている。


俺はその何でもない事実を噛み締めた。


樹の根元にあると思われる穴の中に俺はいた。


俺が目を覚ましたのはつい先程。

今がいつなのかは分からない。

ステータスが確認できる便利なナニカにも時計は付いていない。


頭がズキズキと痛む。

あの後ウサギ共にでも殴られたのだろうか?

それはない。

断言できる。

殴ったウサギが無事には済まないだろうから。

このローブがある限り俺を傷付けられはしないから。

この痛みは疲れや疲労からだろう。

あれ?どっちも同じか?

頭がボーっとする。

このまま気を抜いたら、意識を失いそうだ。


月明かりが差し込む頭上の穴は遥か遠くに感じる。

大きいのか小さいのかさえ分からない。

大人なら大したことはない高さだろうか?

いや、そんなことはないか。

かなり高さがあるように見える。

ジャンプして出入りするのか?

壁面はとても登れるような角度じゃない。

90度の壁だ。いや、途中からは超えているだろう。


俺に登れるか?

無理だ。幼女に出来ることじゃない。

元の体だったとしてもきっと無理だろう。

そもそも俺は縛られていて、まともに身動きが取れない。

全く、ウサギのくせに器用な真似をしたものだ。


逃げなくてはいけない。


あのウサギたちが何をするか分からない。

幼女のローブを着ているし、疲れているだけで無事だ。

でも、このあともそれが続くとも限らない。

食料の問題もあるし、ノユたんを心配させてはいけない。


縄を解こうと力を入れるとあっさりと成された。

なるほど、これもローブの守護力か。

便利なことである。


問題は多い。

ウサギが来る前に、気付かれる前に逃げなくてはいけない。

急がなければいけない。

心拍数が上がる。

呼吸が荒くなる。


急げ、速く。


分かっている。分かっているんだ。

それなのに起き上がるにも一苦労だ。

力が入らない。フラフラする。眠い。

視界がはっきりしない。

夢を見ているようだ。


もしかしたら、夢かもしれない。

俺はこうしている今も、野原で眠っているだけかもしれない。

そもそもの話、幼女になっている事自体が夢なのかもしれない。


もし、本当にそうであったなら。

ああ、弱気になってはいけない。

気を強く持たなければいけない。


この痛みも疲れも現実だ。

この恐怖も現実だ。

この不安も現実だ。


失いそうな意識と折れそうな心に気合を入れて、フラフラと覚束ない足を剣でなんとか支える。

あんなウサギだったけれど、楽しく過ごしていると思っていたけれど。

俺はウサギにも、この状況にも、恐怖や不安を感じていたようだ。



もしかしたら、本当に夢かもしれない。

気合を入れたばかりにも関わらず、またそんなことを思ってしまう。

それくらいに不思議なことだ。


謎の光が瞬いた。

強い光だった。

穴が切り取った夜空に雲はなかったはずだ。

それは今も月の光が届いていることからも明白だ。


だから、雷が落ちるなんてことは起こらない。


また、瞬いた。

雷のような光。


それなら一体何だというのか?


眠気と疲れと緊張と・・・。

徐々に高まるそれらが相まって幻覚か幻想でも見ているのかもしれない。


穴の入口に突如現れたそれは――


白。


ウサギではない白。


純白の白。

白銀の白。


それ自身が光っているのか?

それとも月明かりがそうしているのか?

月明かりを背に立つ――


白い何か。


あの瞬きの正体か?

それは少女の形をして見える。


今夜の月は明るく、その顔は窺えない。

しかし、それはやっぱりぼんやりと、そしてキラキラと輝きを放っているように見えて――


幻想かもしれない。


ソレと目が合った気がした。


ソレが微笑んだように見えた。


そんな筈はないのに。

顔は見えないのに。


頭の中はボーっとして、意識は何処か遠くにあるようなのに。

視界はぼんやりとしてピントも合わないほどなのに。

心と頭は恐怖と不安で一杯のはずなのに。


何者か分からない。何故か分からない。

それなのに俺は安心して、そこで意識を手放した。





再び目が覚めたのは町の外れの野原だった。


側には一匹ねこがいた。

俺の頬を舐めるねこがいた。

それに安心して、俺はまた意識を手放した。

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