侵入作戦
「…何ですかこれ…」
人間界に着いた瞬間、間髪を入れずにショウイチはそう漏らした。
「いや、この辺で合ってるはずなんだが…俗に言う大都会ってやつか?」
カナタは上の空で言った。
立ち並ぶ高層ビル。
四角いタッチパネルを片手に歩く人々。
当然ながら、妖怪であるカナタ達はこの様なものを見た事はない。
ビルの中には、巨大な画面が取り付けられているものもあり、訳の分からない映像が流れていく。
「…何これ…怖い…カナタさん、どうします…?」
「…行くしかねえだろ…」
既に顔から血の気が引いている二人だが、そんなことでは人間界に来た意味がない。
仕方なしに人混みに紛れ込んでやり過ごそうと思ったのである。
それから数十分は経っただろうか。
気付けば人はごっそりいなくなっていた。
ちなみに、現在二人は小さい公園にいる。
偶然空いていたブランコを適当にこぎながら、これからの作戦を練ろうとしていたが、これといって良い案は思い付かず。
「…で、これからどうする?」
カナタは先程コンビニで買ったおにぎりを貪りながら言った。
「…どうするって言っても…」
ショウイチがそこまで言った時だった。
「あの…ブランコ使いたいんですけど…」
声のした方を見ると、カナタと同じ位の身長の少女が立っていた。
服装や髪型を見ると、いいところの娘さんだろう。
「…あぁ、すみません!今退きます!カナタさん、違うとこ行きま…」
「ちょっと待て。お前、見えるのか?俺が」
ショウイチの言葉を遮り、カナタは少女に質問した。
「…え…見えるって…霊的なやつですか?私…霊感とかそんな無いです…」
「本当にか?普通の人間には俺の姿は絶対に見えないぞ。霊感が余程強くない限りは、な」
そう言った瞬間、カナタの表情が変わった。
少し前までの無表情から、何かに怒っているような、でもどこか悲しそうな…そんな表情になった。
「…悪い。今のは忘れろ。俺の勘違いだった…ショウイチ、行くぞ」
カナタはそう言うと、ショウイチの腕を引っ張って公園を出て行った。