習作1
練習として、「落としたCDを拾って二、三会話をする」という数分程度の作業の時間を文章にしてみました。
練習ではありますが、一応著作権は放棄していません。
人物は
・一人は大人しめ、もう一人は失礼な人にしよう
・一人は女性で、もう一人は男性にしよう
とだけ決めました。
課題としては
・段落を入れる箇所が今いち分からない。
・表現に乏しい。
・終わりのオチがない。
というところでしょうか。
お読み頂いた皆様のご感想から勉強させていただきたいので、ご感想をいただけますと幸いです。
―カシャーン。
大きな音を立ててプラスティックの無機質な音が、様々な音が混ざり合って、まるで色々な絵具が混ざり合ってぐちゃぐちゃになったキャンバスのような空間の中に、甲高く響いた。
「あっ・・・。」
思わず祥子は声をもらした。
お隣には、ヘッドフォンをかけて真剣そうに音楽に聞き入っている、男性。
「あの、落としましたよ。」
祥子はつい、あっと声を出してしまったことをばつが悪く感じながら、そのお隣りのヘッドフォンの男性に声をかけた。
しかし、男性は気付かない。
祥子は、さらにばつが悪そうに、床に落ちたCDを拾い上げた。
黒をベースにデザインされたジャケットの、英語のタイトルのCDだった。
念のためケースの表面、裏面の両方をさっと見る。
ケースはどうやら割れもせず、無事のようだ。
多分、中身も無事だろう。
祥子はホッとしつつも、バツが悪いので売り場を移動しようと考えた。
そのCDを、祥子は売り場のラックに戻し、一歩後ろへ身を引いた。
「ねぇ、それ、好きなの?」
そのまま左を向いて売り場から離れようとしたその時、男性の大きな声が右手から聞こえた。
祥子は右手を振り向いた。
先ほどのヘッドフォンの男性が、祥子と、そのCDを興味深そうに交互に見つめていた。
「ねぇ、そのCD。好きなの?」
「えっ・・・、いえ。これあなたが落としたから拾っただけなんだけど。」
祥子は、戸惑いながら答えた。
「え?」
男性は大きな声を店に響かせながら、祥子に聞き返す。
(なんなの、この人。失礼な人。)
祥子は少しムッとしながら、ヘッドフォンを指差した。
「それ、取ったらどうですか。」
男性はその様子に、ヘッドフォンを取れ、と言われていることに気付き、ヘッドフォンをとった。
「ねぇ、そのCD好きなの?」
男性は再び、同じ質問を祥子に訊いた。
祥子は、今よりさらにムッとした気持ちを一気に返した。
「いいえ。あなたが落としたCDを、ラックに戻しただけです。それより、次から人にものを尋ねる時は、ヘッドフォンは取りましょうね。それと、音量もう少し下げて試聴したらどうです?そうしたら落としたCDにも気付くでしょ?」
男は面食らったような表情を一瞬見せたが、気にしていないのかぱっと明るい表情に変わった。
「ホント?良かったぁ。これ、どうも最後の一枚っぽかったんだよね。じゃ、俺がお買い上げさせてもらうね。」
男はご機嫌そうにそう答えると、さっとCDに手を伸ばしてその黒いジャケットのCDを取り上げた。
「・・・。」
祥子は、呆れて物が言えないとはこの事を言うのだなと思いながら、くるりと後ろを振り向き、振り返ることなくスタスタと歩いて行った。
(今日ってついてない日かも。CD探す気分じゃなくなっちゃった。)
祥子はがっかりした気分で、そのままCDショップを後にした。
終