焼死体(事件編)
【数日後】
私たちの事務所に、2人の男が立ち寄った
「こちらは、黒猫探偵事務所ですか?」
尋ねるように言う男
不機嫌な顔をするカイム
「看板が見えないんですか?まったく・・・」
その答えに驚く私はすぐにフォロをする
「ちょっ!所長!大変申し訳ございません。確かに
こちらは、黒猫探偵事務所本局でございます。
といっても、まだ支局はありませんが」
営業スマイルで答える姿を見とれてしまったのか
男の心拍数と顔のほてりが上がる
「これは失礼、このようなお綺麗な方が居るとは」
イヤハヤと、困ったように言う
「それで、警察官の方が何か御用ですか?」
その問いに驚いたような顔をする
「それは簡単です、人前であまり表情を出さない、
最低でも2人1組で動く、靴のそこが磨り減っている
左内ポケットを良く使う、ズボンのポケットなどには
手を入れないなど推察すれば分かることです」
しかも、警察ですか?と聞いたときの
表情筋の動きで図星だとわかって確信する
「これは・・・見事ですな。貴方が、噂の
小動物を操り事件を解決するという」
「高間 真夏です。どうぞ、お座りください」
その答えに何か引っかかるような顔をした
「失礼・・・高間・・・真夏・・・どこかで聞いたことがあるような」
「気のせいでしょう。今回は、お仕事でこちらに?
わたくしめ、犯罪などに手を出すほど落ちぶれておりませんが?」
緑茶にしますか?それともコーヒー?
と聞く私
お気になさらずに、と返ってくるが
リーダー格の人は、緑茶
付き添いの人は、コーヒーだと分かり
二つ用意する
「こりゃ・・・参った・・・なんで、私が緑茶だと?」
「心理学の応用といいましょうか・・・緑茶かコーヒーかといったとき
緑茶のとき頬の部分が少し緩みましたので。あと、付き添いの方は、
逆に強張ったので緑茶はお好きじゃないと、きっと、紅茶の甘いのがお好きなんですね」
驚くというより、ビックリする付き添いの男
私は、ビジネススーツのうちポケットから名刺入れを取り出し彼らに渡した
「わたくし、本所の秘書をしております。高間真夏と申します。こう見えても日本人でして
母が、フランス人なんです。ハーフだったんですが、ほとんど母の遺伝を受け継ぎまして、
よく、フランス人形だって言われるんです」
「いや、お世辞無くお美しい。失敬、私は千葉県警捜査一課の吉田仁といいます、
名刺を持ち合わせていませんので申し訳ない」
左のうちポケットから警察手帳を見せる
今の警察手帳は、新しいアメリカタイプのものに変わっている
「検死もなされるんですね」
右の人差し指に縦に切れている傷を見ていった
良く、メスを逆の手に持って切ってしまうことがある
この場合、すぐに検死を中断する
今は治療中のみだろう
「おや、さすがですな。一応、検死官の資格をもっておりますので」
「今回は、その件で?」
「はい、先日有りました変死体についてなのですが」
「江戸川河川敷に浮かんでいたという?」
3日前にニュースになった溺死体
年齢は20代男性 未だ身元確認中らしいが
それからニュースを聞いていない
「それがどうしたのですか?」
吉田警部補が、付き添いの男にファイルを出すよう指示をする
「こちらをご覧ください」
溺死体の鑑識写真を閲覧する
どれも、死後10日前後だろう
腐敗化が進みだしている
その中の1枚が気になった
「これ・・・犬の噛み跡ですか?」
「えぇ、これをぜひとも当てて欲しいと来たわけなんですが
なにせ、鑑識にもこのような牙の跡で追跡するというのは困難なわけでして
トレーナーなどに聞いても、牙ばかりは分からないと」
「そうですね・・・どの程度のことが分かればよいのでしょうか」
この牙では大体のことしか分からない、大きさ、牙の刺さり具合で顎の強い弱い
ある程度はもう特定しているのだが、断定は出来ない
「出来れば、詳しく」
「そうですね・・・断定は出来ませんが、中型犬、柴犬や雑種に似たものでしょうが・・・
その程度ですね・・・あと、食事は生肉を良く食べるようです。ブロックで頼む
お客さんを探すといいかもしれません」
手帳に記する吉田警部補
「参考になりました。あと、このことは外部には」
「えぇ、守秘義務を遵守いたしますわ」
「結構、今回の相談料です」
封筒を渡される
中を透視すると1万円と紙が入っていた
「確かに、又の御来所お待ちしております」
男が帰った後、一万円を抜き取り
カイムに渡す
「なんか安い仕事だよね」
退屈そうに言う彼にあきれながら
封筒に入っていた、一枚の紙を見る
そこには、吉田警部補の携帯電話番号とアドレスが書いてあり
また、助力をお頼みするかもしれません
と書いてあった
数日後、吉田警部補から電話があり、現場に向かった私は野次馬を退けて中には入っていく
制服警官に止められたが、吉田警部補の案内で現場に行くと、警官として不似合いの格好をした男がいた
下から、白革靴・白いズボンに、白の背広に為まいには、白いカウボーイハットなんて被っていた
(誰?)
私の生まれてからの記憶にこの男はいない
その男は私に気付き歩み寄ってくる
正直、生理的に受け付けない男ナンバーワンだ
「やぁ、君かい?新人助手は」
殴り吹っ飛ばそうかと、心の奥底て燃え盛る炎を抑え
「残念ながら、違います。私、黒猫探偵事務所の高間です」
今は、名探偵モードと、秘書を足して2で割った状態でいる
「そうか、君なら私の助手として申し分ないのだが?どうかね、私の助―」
その男の言葉をさえぎるようにして、いや、
無視して吉田警部補に怒りを当てつける
「御断りします、吉田警部補、民間人の協力は惜しみませんが、
同業者を掛け持ちするとは、どういう了見ですか!
不愉快です、帰らせていただきます」
その場から踵を返すようにして帰るが
「呼んだのは私だよ、高間くん」
その声は、さきどのキザ男の声だった
「どういう意味かしら?」
「君に興味が湧いた」
死ね!
「私はまったくもって、興味は湧きません。
女に飢えて、自分を目立たせるために色々と
しているようですが、貴方のような人は
正直、鳥肌が立つほどです。吉田警部補の方が
よほど、もてるはずですよ?」
いやぁ、と照れる吉田警部補は置いておいて
「ほう、なぜそのように思うのかな?」
「仕草、行動、顔に表れる表情すべてを統合した結果です」
「あはは、それは間違いだ、なにせバレンタインでは
手に余るほどのチョコを貰ったほどだからね」
表情を見ればすぐに分かる
「手に余るほどの義理チョコでしょう。
貴方の会社には女性が沢山居そうですからね
しかも、手に余るということは、媚を売る人が
沢山居るって事ですよね。はぁ〜日本語って
難しいわ」
「このくそ尼!調子に乗りやがって」
その男の仮面がはがれた瞬間だった
「あら?それが、貴方の本性?こんにちは、初めましてね」
いやみなほどの笑みを男へと向けると
殴りつけるキザ男のよわよわパンチを片手で受け止める
「乙女に対する態度かしら?」
私とその男の間に吉田警部補が割り込んだ
「止めて下さい。高間さんも、『望月』さんも」
「まっ、いいわ。現状教えて、依頼は全うするわ」
「は、はぁ」
現状報告は、こうだ
被害者は、竹内 東生 32歳
住所は千葉県八街市
金融会社『曙橋』に勤務
「勤務場所は、どのように?」
「遺品から名詞が発見去れました」
「それ、拝見できる?」
吉田警部補は近くにいた、鑑識を呼び品を持ってこさせた
鑑識班のリーダだろう一人が持って来ると
「高間さんですか!うぁ、本物だ、し、失礼ですけど握手しても」
「えぇ」
彼の手はゴツゴツしていて、働き者だと直ぐにわかった
「感謝感激です!探偵事務所ブログ見てます。頑張って下さい」
確に、なぜか急にアクセスが増えたのは、このせいか
「ありがとう、また御協力を頼むかもしれません。」
そういって、名詞を渡すとき、量子コンピュータ(脳内)直通電話番号を記し彼に渡す
「こ、こ、これは!」
「みんなには秘密よ」
「感謝感謝感激、ひゃっほぅ」
飛び回りながら出ていってしまった
捜査状態とか、内部で動ける人がいればいい
そのほかの状況を聞くと
死因は、熱によるショック死
いわゆる、ご遺体は焼死になっている
その原因になったものが突き止められないとの事だった
それで、私たち・・・しゃくだけど、呼ばれたらしいんだけど
これだけじゃぁ、どうにも解らない
「遺体は?」
こっちです、と担当景観に誘導されていく
あのきざ男は、もう見たというので私一人だ
遺納袋|(通称:遺体袋)の中を見ると、
無残に焼け焦げた男性だろう死体が入っていた
「触ってもいいかしら?」
「どうぞ」
接触鑑定をする
衣服には、ポリエチレン製の服と、ウールのセーター
らしきもの・・・あと・・・うっすらと・・・
これは、今の技術では鑑定できないほどの
微量な可燃性溶液、何かしら?
圧縮製PG??
脇が、抉られるようにして燃えてるわね
それ以外解らないわ
「ありがとう」
そういって、チャックを閉めさせた
プロパン性ガスと、ウールのセーター
下半身はあまり燃えてない
一番燃えていた場所は、脇
しかも、抉られるようにして
先ほどの遺品を見せてもらったときに
バックがやけに燃えていた
破裂したような感じに
でも、ご遺体は禁煙をしていたのか
もともと、タバコをすわなかったのか
ライターなどの可燃性のものは無かった
その代わり、携帯電話の電池式充電器(旧式)と
ホッカイロがあった
(なるほど、そういうことか・・・)
私は、一つの糸を引っ張り込んだ
これしかない!
<<あなたはわかったかな?死因と事故か他殺か?>>
真相は次回に続く