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いつか、呼べる名  作者: 塩治房智
第一幕 第一部
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零話 でも、生きている。

 雛鳥(ひなどり)たちは、親鳥を待つ。

 飛び立てるようになるまで親に守られ、育てられる。


 けれど、もし。

 親鳥が帰ってこなければ?

 兄弟を奪われたら?


 彼らはどうするんだろう。

 それがいつも、ふとした拍子に頭をよぎる。

 何気ない幸福な日ほど、余計に。


 寝転び、手を太陽にかざす。そうすれば、体の中に血が巡っていることがわかる。

 生きている。

 丘には風が夏の匂いを運んでくる。

 赤い髪を(なび)かせて、少年はそれを感じていた。

 

 母を失ったあの日から、心に穴が空いている気がする。

 泣けば楽になるのかもしれない。けれど、泣くのだけは許せなかった。

 

 でも、少しずつ、家族たちが塞いでくれる。血は繋がっていない。けれど、だからこそ互いに背を預けることができる。


 兄に連れられて、孤児院の門を叩いた。初めて会った父は、とても恐ろしい顔をしていたのを覚えている。


 土の匂いが、変わるのがわかった。きっと雨だ。

 木の幹にこさえた巣に、親鳥が戻ってくるのが見えた。


「おーい。ルカー。そろそろ帰るぞ」

 兄弟たちの声が聞こえて、立ち上がる。


「わかった。すぐ行くよ」

 体を起こし、首飾りを直す。


 遠くで、何かが光る。きっと、雷だ。

 不意に右の手のひらが熱くなった。

 それはなぜか、懐かしい感触だった。


 そして、その熱の懐かしさが。

 僕ではなく、誰かの物のような気がして、少しだけ怖かった。

 

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