表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
さびれたレンタル道具屋の転生おっさん、道具の使い方を教えまくる。~客のS級冒険者が俺を歴戦の英雄と勘違いして弟子入りを求めてくるんだが~  作者: 遥風 かずら
第一章 思い立つおっさん

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/37

第2話 ラヴァル村の出迎え盗賊団

「もしかしてアクセルさん、王都を出るの?」 


 人気の道具屋の場合いきなり店を閉めると多大な影響があるが、さびれた店を一時的に休業しても誰も気にならないはずだ。


 そういう意味でも行動を起こすのは今しかないだろう。


「ああ、決めた。店を一時的に休業して発つ!」

「一時的に? そっかぁ。アクセルさんのお店って気が休まる場所だしお気に入りだから寂しくなるなぁ」


 数少ない常連客とはいえこればかりはな。


「そう言ってくれて助かる! ありがとうな、ミレイ」

「そ、そんな大したこと言ってないよ」

「今回貸した道具はどうする?」

「大切に預かっておくね! もしかしたら遠征先で偶然出会うかもしれないし」


 ミレイなら言葉通りにしてくれるだろう。完全閉店でもないし、王都に戻って来た時にでも返してもらえばいいな。


「……よし。では、王国傭兵騎士団所属ミレイ・ベルジュ」

「ふぇっ!? え、何を改まって……」


 突然の物言いで動揺させてしまったが、大したことを言うつもりはない。


「国境付近まで俺を同行させてくれ!」


 俺はミレイに向かって深々と頭を下げた。


「え? 同行? アクセルさんも任務について来てくれるの?」


 任務についていくわけじゃないんだが、ミレイはやけに嬉しそうにしている。


「ただの同行だし、途中までだぞ? もちろん無理な願いなのは承知の上だ。危険を伴う任務にレンタル屋のおっさんがなんでついていくんだって話になるからな」


 王都の外に出るのもいつ以来だ?

 

「あ、そういうことかぁ。そんなことなら全然いいよ~!」

「助かる! 俺は国境付近で抜けるから、そこまでよろしく頼む!」

「は~い!」


 思い立ったが吉日。俺は客が来ないうちに営業中の木札を裏返し、休業中に変え、ずっと開放しっぱなしだった出入り口の扉を勢いよく閉めた。


「……これでよし、と」

「何も持たないで行くの?」

「俺には無限収納があるからな。手荷物はいつでも取り出せるんだ」

「それもそっか」


 ミレイの案内で王宮街区に入ると、俺を訝しげに見る者が多くいたがミレイが隣にいるのが分かるとその視線が一瞬で消え失せていた。


 傭兵騎士団の存在はそれくらいの立場であるということらしい。


「そんなわけで、道具レンタル屋さんのアクセルさんは道具の扱いに長けています! 今は任務が最優先だけど、アクセルさんが王都に帰ってきたらみんなで店を利用してね」

「御意」

「分かりました」


 上級職のミレイは傭兵パーティーのリーダー。そんな彼女の説明を聞いたメンバーは、リーダーの信頼を得ている俺をすぐに認めた。


 リーダーの影響力は絶大だな。


「それじゃ、アクセルさん。外に行こう!」

「ああ。悪いな」

「ううん、馬を出せなくてごめんね」

「気にするな! 体がなまってるから運動不足にちょうどいいってもんだ」


 王都周辺は道が整備されている。本来なら馬に乗って移動するのが手っ取り早いが、ミレイ達は歩行による諜報活動がメイン。そのせいもあり、馬による行動はなるべく控えるようにという命令が下されているのだとか。


 ミレイ達に無理やりついて行く俺もそれに従うのが筋だろう。


「――うっ……!? 日の光が!」


 空を見上げる間もなく、太陽が真上にきていてかなり眩しく感じる。こうして直射日光を浴びるのもいつ以来になるだろうか。


 レンタル道具屋を始めて以降、外に出る機会も失われていたがまた外に出て日差しを浴びる日がくるとは感慨深い。


「アクセルさんって、王都の外を歩くのはいつぶりなの?」

「王都で暮らすようになって以来だから、十年以上ぶりくらいか?」


 冒険者パーティーにいたのは数年だしすぐに帰ってきたからそんなもんだな。


「えぇっ!? もしかして、ずっと王都から出てないの?」

「まあな。生活するだけなら王都で事足りるからな。そういう意味じゃ、ミレイから聞かされる話は楽しみにしてたぞ」


 言われてみれば外に出るのは長いことなかった。そのせいか日差しを浴びるだけですぐに汗を掻く。まして今は乾季だからすぐに喉が渇きそう。


「そっかぁ。アクセルさんを外に出すきっかけが作れて良かったんだ~」

「はははっ、俺に怒られるとでも思っていたか?」

「えへへ」


 ミレイ達とともに王都を発ってからしばらく経つ。石造りの街道をひたすら歩いているが、魔物の姿は見当たらず何とも気の抜けた散歩だ。


「そういや魔物を見かけないな?」


 ミレイ達についていこうとしたのは、念の為だったのだが。


「国境までは心配いらないよ。国境兵が目を光らせているからね! それに王都周辺の脅威は騎士団が一掃したみたいだから心配ないよ」

「流石は王国が誇る騎士団だな」


 外の話はミレイから聞かされていたが、そこまで劇的に変わっていたとは。


 街道をしばらく進んでいると、国境付近を示す城壁が見えてくる。辺境エリア側と王都側にそれぞれ国境兵が配置されていて警備も万全だ。


「おっ。そろそろ国境か」

「あ、そっか。アクセルさんとはここでお別れなんだ」


 本音を言えばミレイの任務っぷりを見てみたかったが、国の任務を邪魔するわけにはいかないからな。


「そうだな」

「何十年ぶりに外に出たのはいいけど、道は分かるの?」

「国境からしばらくは一本道ってのは覚えてるぞ。で、歩いた先にラヴァルの村がすぐにある」

「ラヴァル村! 懐かしいなぁ。あの人って今でも盗賊なのかな?」


 ラヴァル村は王都から先へ行くのに必ず通る村だ。


「村にさえ着けばそこからは何とでもなるから心配は無用だ」

「アクセルさんがそう言うならいいんだけど、気をつけてね」


 俺の格好はその辺の旅商人と何ら変わらないくらいの軽装。何も持たない手ぶら状態だが、戦える道具はいつでも取り出せるから心配はしていない。


 ミレイには知らせてないが、俺には冒険者時代に得られた特性のサーチスキルがある。サーチを使えば貸し出した道具の位置を探すのが容易になる。


 もっともその効果範囲はごく狭く、強い魔物の動きを見たり村や町を探すことに関しては冒険者に劣るので注意が必要だ。


 そうこうしているうちに国境付近にたどり着く。


「ミレイ隊長……そろそろです」

「アクセル殿。オレ達はここから隠し道に……」


 ミレイパーティーのメンバーが足を止め、高くそびえる山に視線を移す。

 

 ……なるほど、北の山から行くんだな。


「ここまでありがとうな! 任務頑張れよ!」

「うんっ! アクセルさん、またね!」


 ミレイ率いる傭兵団は寒い地域に向かう為、北へと向かった。一方で俺は国境を通り過ぎた先の一本道、南へひたすら歩くだけなのでミレイ達に比べれば気楽な旅と言える。


 彼女らを見送った後、ラヴァル村へと歩き出すが。


「そこの男、ちょっと待て!」


 予想していた通り国境兵に呼び止められた。


「俺に何か用か?」


 辺境側の国境兵も警戒しているようだが、王都側の国境兵に任せる感じか。


「王都から歩いて来たようだが、お前は……レンタル道具屋か?」

「そうだ」


 国境兵にも一応俺のことは知られているわけか。


「見たところ何も持っていないようだが、ラヴァル村へは何しに行くつもりだ?」


 やれやれ、たかがおっさん一人に警戒してどうするんだ。そもそもレンタル道具屋が大層な格好で外に出るかって話だぞ。

 

「ラヴァル村へは野暮用だ。この先へ進むには村は避けて通れないだろ?」

「……む、確かに。ならば気をつけて進め。だが、あの村は盗賊どもが暮らす村。入った途端取り囲まれる場合が多いぞ。用心して進むことだ」


 国境兵の顔に緊張感が漂っているところを見ると、盗賊と聞くだけで悪いことが起きると思っているんだろう。


「心配無用だ」

「そ、そうか」


 俺を呼び止めるから何事かと思ったが心配してくれただけだった。王都側の国境兵が俺を通したことで、辺境側の国境兵はそのまま通してくれた。


 辺境エリアは王都周辺と違って高原、湿地帯、峡谷、森林などなど未整備の道が大部分を占める。だからといって恐れるような魔物は現れない。騎士団が魔物を一掃した範囲は広範囲に及んでいるからだ。


 国境を越え、ひたすら歩き、何事もなくラヴァル村に着いた。


 ラヴァル村は盗賊連中とその家族が暮らす村。昔と比べてだいぶ様相が変わっているようで、目に見える範囲に宿は見当たらない。古びた家屋と小屋が建っているが、分かりやすいのは普通の村には見られない柵がいくつも並んでいるくらい。


 まだ明るい時間だが歩いている村人は見当たらない。そう思っていたが、知らず知らずのうちに人相の悪そうな男達が俺を取り囲む。


 相変わらず気配を消すのは得意のようだ。


 取り囲む男達の中から、ガタイのいい白髪交じりの熟年の男が俺のすぐ目の前に立って威圧してくる。


「おい、そこの!」


 そうか、俺はもうおっさんだった。あの頃の感覚で来てしまったな。話し合いは通用しそうにないか?


 そう思っていたが――


「――ぼっちゃん! 誰かと思ったら、アクセルぼっちゃんじゃないですかい!」

※ここまで読んでくださりありがとうございます! ↓にあります★★★で評価してくださると作者の励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ