転生したら『歩』で詰んだ…。『ゲームの世界に転生』って、将棋なことある?
俺は、トラックに轢かれて死にましたー
女神らしき人の声が聞こえる。
「あなたは、ゲームの世界に転生させましょう」
そっかー、死んだのは残念だけど、ゲームは好きだし!次の人生、頑張ろー!
そうして、俺の意識は消えていった。
気がつくと、木っぽい材質の床の上にいた。
「さて、ここはどんなゲームの世界かなー?」
そうして軽く腕を伸ばそうとして、気づく。
体が、動かない…?
というかそもそも、腕がない…!
突然、フワッと体が宙に浮き上がる。
「は…?」
どうやら、巨人の指と指に挟まれて持ち上げられているようだ。
下を見ると、9×9のマス目があり、一部のマスには駒が置かれていた。
「将棋盤…?」
深く考える間もなく、今度は逆に体が急降下していった。
「バチンッ!!」
とてつもない音とともに、俺はかったい木の床に打ち付けられた。
「いってぇえええええええ!!!」
俺の悲鳴とは正反対の、無情な声が響く。
「先手、霧里八段、2六歩」
痛みに耐えながらも、状況が見えてきた。
「後手、浜岡六段、8四歩」
…これ将棋じゃん!そんで俺『歩』じゃん!は?あの女神『ゲームの世界に転生』って言ってたよなぁ!?それ将棋なことあんの!?いや将棋もゲームかもしんないけどさぁ!?もっとこう、デジタルなゲーム想像するだろ!!!
心の中で女神に文句を言っていると、再び持ち上げられ…
「バッチィィィン!!!」
「ぐわぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
「先手、2五歩」
再び固い将棋盤に打ち付けられた。
しかもさっき打ってめっちゃ痛いところをもう一回やられた!!
それから、およそ100手が過ぎた。
持ち駒として2人のおっさんの手を渡りながら何度も将棋盤に打ち付けられた。
そして、ついに地獄の終わりを迎えた。
「…負けました」
「まで、107手をもちまして、霧里八段の勝ちとなりました」
ふぅ。やーっと終わった…。これ以上続いたら、痛みで死ぬとこだったよ…
「はい、okでーす。では次の対戦の撮影に入るので、対局者は入れ替わってくださーい。盤と駒はそのままで撮影していきまーす」
あっ、詰んだ…