はじまりの出会い
1人の女が夜道を走る。
靴も履かず、上着も羽織らず。
舗装されていない土の道を走る、周囲は夜中の静寂に包まれている…
女「はぁ…はぁ…っ」
呼吸は荒く、その目は虚である。
女「必ず、この恨みは晴らす…」
[バタっ…]女は意識を失い倒れた…
――――――――
?「大丈夫かい?お嬢さん…」
男の老人の声がする、目を開けると太陽の日差しが目に刺さった。
女「う、うっ、ここは…」
男の老人「ここは私の家だよ…貴方は道で倒れておった。」
女「そう…もう用はないわ、私にはやらなければいけないことが…」
勢いよく立ち上がる女、[バタン]倒れてしまった。
男の老人「安心なさい、貴方は何かから逃げてきたのでしょう。ここには"契約国兵"はこない、ゆっくりしていきなさい。」
女「そうなの…失礼しました、私の名前は"アメノ"
事情あって、逃亡の身よ。」
男の老人「私は、"バタケ"ただの農家じゃな」
2人は食卓でパンを食べた。
アメノ「一つ聞きたいのだけれど、貴方も"法魔"を使えるの?」
バタケ「いいや、私の家系は代々農家だから法魔なんて使えませんよ。」
アメノ「そう、あんな恐ろしいもの私は近寄りたくもないわ…」
バタケ「そう思う人が増えたから契約国兵が取り締まりを強化しているのだろうね…」
2人は落ち着いた雰囲気で話す。
アメノ「助けてくれて本当にありがとう、そろそろ行くわ…」
バタケ「行くとこはあるのかい?」
アメノ「ないけど、ここには長居できないもの。」
バタケ「なら、ここから北に進んだところに"イシーマ"という町がある、そこに行けば必要なものは全て手に入るだろう。」
アメノ「ありがとう…行ってみるわ。」
バタケ「ちなみに、君は何から逃げて、何をするのが目的なんだい?」
アメノ「契約国兵から逃げているの…私の目的は法魔のいない世界を作ることよ…」
バタケ「随分と大きな野望だ…気に入ったよ必ず叶えなさい、応援してる。」
バタケは笑顔で言った。
バタケ「服や靴はあげるよ、あと少しのお金も」
アメノ「本当にありがとう。私は行くわ」
バタケ「気をつけて…」
アメノは扉を閉めスタスタと歩き出した。
――――――――
〜つづく〜
〜人物解説〜
"アメノ"
この物語の主人公、逃亡の身であり法魔のいない世界を作るという野望を持つ。美しい顔をしているが本人に自覚はない。
"バタケ"
道で倒れていたアメノを助けた老人、先祖代々農家である。白髪の男。
〜用語解説〜
"法魔"(ほうま)
人などと契約し特別な力を与える存在。
"契約国兵"(けいやくこくへい)
国に雇われた兵士、ただ契約しているのは国だけではないらしい…まだ謎の存在。
"イシーマ"
バタケの家から北にある町の名前。