作戦成功
地下経路の後退を命じると、子供たちは一様に不審そうな顔をした。
「北は正規軍どもが抑えてる。この暗い中、地雷原を抜けろってのか」
最近、急激に身長の伸びた十五歳が言う。
「あんたは?」
「予定どおり本隊に合流するさ」
「ずるい!」
ぎゃあぎゃあ喚かれる前にヘッドホンごと耳を塞いだ。感度の悪い受信機からは雑音だけが流れてくる。
「分かったよ」
勘のいい十四歳がしかめっ面で吐き捨てた。
「足手まといなんだろ。じゃあもういいよ」
見切りをつけたような十四歳に続いて子供たちは地下経路を引き返していった。その後ろ姿を見送り、唯一の二十代は予定どおりの歩みを再開する。
作戦は成功だ。死出の旅路に付き添いはいらない。
第24回 毎月300字小説企画、お題は「作る」でした。