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やり投げをしている私の投げやりな人生

作者: はやはや

 私は陸上部に入っている。別に陸上競技が好きな訳ではない。ただ、興味があったのだ。生活態度が投げやりな私が、陸上部でやり投げをしたら、どうなるのか。




 まず、やり投げについて少し話したいと思う。

 やり投げは陸上競技の一種で、助走をつけ投擲とうてきする競技だ。

 その名の通り、やりを投げ、どこまで遠く投げられるかを競う。

 助走を始めてから一分以内なら、やりを投げない限り、助走の取り直しが可能。一人の選手につき三回試技ができる。

 上位八人までがまた三回投げ、一番良い記録を競うシンプルなルールとなっている。


 弧の中心となる二十九度の扇形の内側の地面に落下したものだけが、有効な試技となる。線上はファウル。


 単純な力だけではなく、技術によって記録を伸ばせるのが、やり投げの魅力。(らしい 本気でやり投げをしている先輩曰く)

 ステップ、踏み込み、握り方など自分に合った方法を見つけていくのも楽しみ。(らしい 本気でやり投げをしている先輩曰く)




 次に私、新城由奈あらきゆなの性格について話そう。


 私は生まれた時から投げやりな態度で生きてきた。(さすがに赤ちゃんの頃の記憶はないが、物心ついたときから投げやりなので、多分、生まれもった気質だろう)


『投げやり』の意味は

『物事をいい加減に行うこと。成り行きにまかせること』

『物事を雑に扱ったり丁寧さが足りなかったりするような、無責任でやる気のない様子』


 らしい。どちらにも身に覚えがある。


 例えば習い事。

 友達がスイミングを習ってる、ピアノを習ってる、英会話を習ってると教えてくれれば、私は片っ端から「やりたい!」という子どもだった。


 両親は私の可能性を信じていたのか、私の意見は受け入れられた。だから、これまでいろんなものを齧った経験だけは、やたらとある。

 さっき挙げたもの以外にも、習字、ダンス、太極拳……

 けれど、どれも一年以内でやめた。特に練習が必要なピアノやダンスは半年も続かなかった。

 私は楽な方を選ぶクセがある。「できない」=「やめよう!」となるのだ。


 そして私は計画性がない。

 例えば夏休みの宿題や、中学に入学して以降の定期テストの勉強。

 何からすればいいのかわからない。だから、「あー! もう、やめやめ!」と途中放棄する。


 そんな、投げやり人生を送ってきた私が、高校に入学し、陸上部に入り、馬鹿みたいな理由で、やり投げを始めたのだ。



☆ ☆ ☆


 これまでの自分を振り返ってみて、すぐに陸上部をやめるだろうな、と思っていた。

 が、しかし、これがやめないで在籍しているのだ。入部して二年目を迎えていた。


 生活態度は相変わらず、投げやりだ。


「どーせ汗かくんだし」

 と化粧はおろか、日焼け止めすら塗らない。周りはどんどん綺麗になっていくのに……

 朝練も適当にやり、授業中は「朝練で早くから学校来てるから眠いんだよ」と、頑張ってもいない朝練のせいにしてぼんやりするか居眠りしている。

 みんなはまぁまぁ真剣に授業を受けている(ように見える)のに。


 プライベートもやはり、投げやり。

 友達は彼氏なんぞできる中、体や髪の手入れも無関心な私には、そんな色恋沙汰は皆無だ。


「わかってるよ、なーにも綺麗になる努力してないしね」


 と、部活から帰ると寝転がってお菓子を食べつつスマホを見ている。


 そんな私に親友の凛花りんかが訊いた。


「なんで由奈は陸上の中でも、やり投げを選んだの?」


 と。だから、私は正直に答えた。


「投げやりに生きてきたから、やり投げしたら、どうなるかと思って」

「え? なんか、ややこしくない? てか、笑える」

「自分でもそう思う」



☆ ☆ ☆


 私の生まれ持った投げやりな気持ちが、やり投げに向いていたのか、はたまた、やり投げの才能だけはあったのか、私は今年インターハイに出場する。

読んでいただき、ありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 物事を始めるきっかけというのは本当に色々なものがありますよね。 ラストで「おおっ」となりました。
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