牛丼
お腹が空いてきた。しかし、生憎今は持ち合わせが少なく、懐が寒い。
「……あ。牛丼屋だ」
視界に、大手の牛丼屋が映り込む。
此処最近、コンビニのおにぎりや特売のカップラーメンを買い漁る等、食費にお金を掛けない様な生活を送っていた為、牛丼屋に立ち寄るか悩む。なるべくワンコイン内で済ませたい…。
「税込みで……今時、無理か…」
腹が減っては戦は出来ぬというヤツか、お腹は限界を訴えて、ギュルルッと鳴り出す。背に腹は代えられない…。俺は、牛丼屋に立ち寄った。
「いらっしゃいませえ!!」
中に入ると、牛丼と思しき匂いが鼻孔を擽る。それに伴い、お腹は更に空き出した。自分以外、客は一人だけの店内に、やっぱり持ち合わせが少ないので帰りますぅ、といった感じで店を後にする事は、気が引ける…。
席に着いた俺はメニュー表を凝視し、なるべく安い物を探す。
安くても、腹にたまらないモノは駄目だ。ので、白米と卵を頼んでの、卵かけご飯などは、現在の空腹状態では以ての外。
此処の看板メニューである牛丼……税抜でワンコイン内だが、税込みだとそれはオーバーする為、注文するのを躊躇う。…が、此処に立ち寄る前に決めた、背に腹は代えられぬ覚悟で、思い切って注文してみた。
少ししてから、牛丼がテーブルに置かれる。流石、『一秒でも早く、アナタのお腹を満たしたい♡』がキャッチコピーの店だなぁ…と思いながら、牛肉を一切れつまみ上げると、それを口にする。
ーーうっ…美味いッ!!!!
昔、観たテレビで、作り方は企業秘密との事な、秘伝のタレで味付けされた牛肉は、久々に食べたからなのか、思った以上に美味かった。
一気に食べるのは勿体無い…ってか、最初の一口だったから、贔屓目で美味く感じたのだろう…と、今度は牛肉によって隠されていたご飯だけをひとつまみして、それを口にした。
【肉抜きのつゆだく多め】という、裏メニューがあるとかないとかの都市伝説みたいな話を聞いた事はあるが、もしあるなら一度は試してみたい。そう思うぐらいに、つゆが染み込んだご飯が美味い!!