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第二十五話.落とし所はどこどころ?

「ありえん!イカサマだ!」


小太りの男が立ち上がって叫んだ。


「はぁ?それはお前だろ」


やれやれと言った声でキツネがこたえた。


「ばかな!わしがどうやってイカサマをしたと言うんだ」

「そもそもさ、お前らグルだろうが。どうせ村に立ち寄った冒険者をカモにしてんだろ?」

「そ、そんなことないですよ」

「キツネはずる賢いんだよ。騙す相手を間違えたな」

「なんだと」


一触即発。いつ殴りかかってくるかもわからない勢いだ。じゃらじゃらと戦利品のコインをもて遊びながら、キツネは続ける。


「あーまぁ良いや。この金、半分返してやるよ。そのかわり博打に使ったカードをよこしな、悪さできないように処分するから」

「え?何、本気で言ってるのか」

「本気だよ、ほら気が変わらないうちに出しな。


キツネは金貨と銀貨、巻き上げたそれらを半分返した。かわりに先ほどまで遊んでいたカードを受け取る。彼はそれと半分になったコイン達を懐に仕舞った。


「良いんですか?」


ルシアがぼそっとマヤに耳打ちする。彼女は何事もなかったかのような落ち着いた声で返した。


「いいよ」


予定通りといった声で、すでにちょっと眠そうだ。三人は泣きそうな賭場の皆さんを残してその場を立ち去った。酒場の外に出たところでキツネが言った。


「儲かったな」

「そうですね。でも、なんでカードなんか回収したんですか」

「これ?」


そう言って、キツネは懐から先程のカードを一枚取り出した。白地に大雑把な赤い印が六つ記されているだけの簡単なものだ。


「ほら」


そう言って渡されたカードをルシアはジッと見つめてみる。特に変わったようなところはないが、お手製のもののようだ。


「何も無いですよ」


そう言って返そうとすると、突然赤い印が三つに減った。六つが三つに半分になった。


「え?」

「ほらな、これを見てイカサマだって言われるのも嫌だしさ」

「イカサマじゃないですか」

「はっはっは」


キツネが笑いながら、マヤの方を見る。


「イカサマじゃない、これは魔法」

「魔法」

「うん。制限時間だ」


魔法で赤い印を複製したのが消えたらしい。カードそのものではなく、その上のインクだけを複製したと言うことだ。そんなこともできるのか。


「まだ村で買い物もしたいし。ほらイカサマやる奴らだって思われたら村の人たちの心象が悪いだろ」

「今の時点でも十分心象は悪いと思いますよ」


そう言うと、キツネはもう一つ大きく笑った。


「まぁ向こうもイカサマしてるんだから、お互い様さ。明日は買い出しをして物資を補充しようぜ」

「はい」


兎にも角にも、軍資金の目処はたった。明日はまた樹海踏破のための物資集めだ。

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