一回目の人生【契約】
彼は、透明な名刺を俺に差し出してくる。
『自己紹介が遅れてすみません。私は、【来世案内人】の道崎人と申します』
「来世案内人……?何だ、それ?」
『はい。簡単に話しますと【今世】の寿命が終わり。速やかに【来世】へとご案内する為に私がいるのです』
「待ってくれ。全く、話がわからないんだけど……。俺は、死んだらすぐに生まれ変わるのか?」
『おっしゃる通りです。生まれ変わります。しかし、それは【肉体】ではなく【魂】のお話』
「どういう事だ?」
道崎さんは、タブレットのようなものを俺に見せてきて説明を始める。
『まず、柳さんが亡くなります。その魂は、いったん【徳】カウンターへ向かいます。それが、【本来】の流れです』
「本来……?」
俺の疑問に道崎さんはタブレットをスクロールする。
『本来ならば、あなたは【来世】へと進むのです。ですが、【私】がやってきた魂は【本来】進むべき来世とは別の【未来】へ進めるのです』
「それってどういう事だ?」
俺は、久しぶりに【未来】の話しにワクワクと【心】が踊り出すのを感じていた。
『ご興味が湧きましたか?』
「ああ、湧いたよ。それで、どうなるんだ?」
『柳さんには、別の【未来】すなわち、あなたは柳亮一として……。生きてきた人生に【転生】する事が出来るんです』
「それって、俺はこの人生をやり直せるって事なのか?」
『そう言えば簡単でしたね。はい。【やり直し】が出来るんです。しかし、【過去】にはいけても【未来】へは進めません。例えば、【40歳の自分の元に……】と願ったとしても。あなたが、30歳で亡くなってしまえば【そこには】行けない事だけをご理解いただけますか?』
「わかった。で、その【やり直し】ってのは一度だけなのか?」
俺の言葉に道崎さんは、タブレットを消して手の中に一瞬でしまう。
「黙ってないで、教えてくれよ」
『それについては、柳さんには前もってお話していますので……。説明は、必要ないと思っています』
「前もって……?どういう意味だよ。俺は、道崎さんから何も【説明】は受けていないよ」
『それでは、【いつか】思い出せるでしょう。それで、柳さん。【やり直したい未来】はどこですか?』
俺の前に紙とペンが置かれる。
俺は、考えながらスラスラと書く。
真っ黒な紙に真っ赤なインクだ。
『【契約成立】です。では、残りの【人生】を楽しんで下さい』
道崎さんは、柔らかく微笑んで病室から出て行った。
俺は、テーブルの上を見つめる。
本当に【やり直し】なんて出来るのだろうか?
【人生は一度きり】だから、【後悔】しないように……。
俺は、昔からそう教えられてきた。
なのに……。
【やり直し】が出来るなんて………。
そんな事が本当にあるのだろうか?
もし、あるとしたら……。
俺は、愛理を……。




